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経営改革促進

2023年12月4日

“顧客志向”のDXでV字回復した企業事例

DXでV字回復を実現!危機を乗り越えた企業の取り組みとは?<前半>

今回はDXによってV字回復を達成した企業の事例を紹介します。既にDXに取り組んでいる企業の方から現在導入を検討している方、また自社の売上が伸びずに悩んでいる方まで、ヒントになる取り組みが盛り沢山。是非、2024年の飛躍にお役立てください!

“データドリブン”による顧客志向でデジタルディスラプターに対抗

まずはDX先進国のアメリカから、デジタルディスラプター参入がもたらした深刻な危機から見事なV字回復を果たした企業の事例を紹介します。

●新たな脅威の登場

Best Buy(ベストバイ)社は、ミネソタ州ミネアポリスに本社を置く世界最大の家電量販店。しかし、2000年代中頃からネット通販企業との競争激化により経営状態が悪化し、2012年にはついにAmazonに売上を抜かれてしまいます。そんな中、新CEOに就任したのが、それまでもいくつかの企業で経営立て直しの経験を持つヒューバート・ジョリー氏でした。

同社の再建に向けてジョリー氏は、顧客に寄り添う企業への変革を目的に〝リニュー・ブルー(Renew Blue)〟という計画を策定します。その代表的な取り組みが、実店舗にオンラインサイトで購入した商品の受け取り窓口や商品倉庫など、販売以外の役割を担わせたこと。同社はアメリカ全土に店舗展開しており、オンラインサイトで売れた商品を配送センターからではなく購入者の近隣店舗から発送できるようにすることで、Amazonよりも早く届けられるようになったのです。

●顧客を知るための徹底したデータ管理

また同社は当時、「来店は商品の現物チェックのため、購入はより安いネット通販で」という“ショールーミング”と呼ばれる消費者の行動に悩まされていましたが、同社は商品価格を競合ネット通販の価格に合わせ、もし他でもっと安く売られていれば差額を返金するという顧客志向のサービスで対応しました。

こうしたサービスを創出し、徹底的にやり抜くためにジョリー氏が取り組んだのがDX、より具体的に言えば、デジタルによる「データドリブン経営」でした。顧客の行動・ニーズを細大漏らさぬよう、顧客管理には自社のあらゆるシステムから顧客情報を統合できるプラットフォームを運用。オフライン/オンラインともにタッチポイント(顧客接点)におけるデータはすべて蓄積し、既存顧客/潜在顧客を問わず、顧客一人ひとりのプロファイルを単一IDで管理する仕組みを構築したのです。

●テクノロジーは“顧客のため”に使う

このように精緻に管理された顧客データを活用することで、同社はビジネスのあらゆるシーンで顧客志向のきめ細やかなアプローチを実現していきます。例えばメールマーケティングでは、AI(人口知能)を活用し、1万2000通りにセグメントされた顧客層それぞれに対して「どのような内容のメールをどのようなタイミングで受け取るとストレスを感じないか」分析。そして4000万種類もの販促メールの中から、最適なメールを最適なタイミングで送信していました。

また、オンラインで購入した商品を店舗に受け取りに来た顧客に向けて、自宅に帰ったタイミングで梱包の解き方からセットアップまでを解説するメールを届けるなど、商品購入後の体験向上にも活用していたことも知られています。顧客ニーズに応えるためにテクノロジーを使う——デジタルディスラプターの勢いと脅威が増す中、こうした考えを組織で徹底的に共有・実践することで、ジョリー氏はCEO在任7年間でベストバイを利益3倍、株価9倍に伸ばすまで復活させたのです。

参考:V字回復の家電量販店Best Buy:リアル店舗の顧客体験管理でディスラプションを超える|Adobe Experience Cloud Blog

参考:『THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)―「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ』(紀伊国屋書店)

DXで“売り切り型”ビジネスからの脱却を目指す

続いては、同じく顧客志向のDXでV字回復を達成した国内企業の事例を紹介します。

●業界最大手企業が陥った危機

「お仏壇のはせがわ」や「おててのしわとしわを合わせて、しあわせ」というCMコピーでもお馴染みの株式会社はせがわ。言わずと知れた仏壇販売の最大手企業ですが、近年、仏壇離れの加速化や新型コロナウイルスによる来店客の減少などにより、赤字に転落する危機を迎えてしまいます。そこで同社が取り組んだのが、「“売り切り型”から脱却」「手を合わせる機会の創造」というテーマ策定と、それらを実現するための“カジュアル化”と“DX”でした。

カジュアル化の一例が、多様化する生活者の価値観やライフスタイルに合わせた商品展開。例えば家具メーカーとのコラボにより生まれた『リビング仏壇』は、仏壇のイメージを覆す、洋風のインテリアにも溶け込むデザインが好評を博しています。最近では若年層向けに、好きなアイドルやキャラクターのグッズなどを飾って愛と祈りを捧げることができる『推し壇』の販売を開始して話題になりました。

●商品購入後も顧客に必要とされる企業に

DXにおいて重点的に取り組みを始めたのが、いわゆるCRM(顧客関係管理)。商品販売後も顧客との継続的な関係を構築し、一度切りではなくリピート利用してもらうことでLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すための施策です。まさに先述の2つのテーマを実現するために欠かせないアプローチと言っていいでしょう。

2022年6月にリリースしたスマートフォンアプリも、そのCRM施策の一つです。割引やクーポンのような特典以外にも、故人の命日を登録すると供養に役立つ情報が法事のタイミングに合わせて届くなど、顧客が仏壇購入後に必要なコンテンツを提供しているのがポイント。他にも供養に関する悩みをスタッフに相談できる機能もあり、リピートだけでなく口コミ促進効果も期待できる充実した内容となっています。

●デジタルによって拡がる可能性

実際にアプリの集客は好調で、リリースからわずか10カ月で6万人超の会員を獲得。それまでの電話やDM中心の顧客コミュニケーションから見事にデジタルシフトを実現しています。CRM自体が中・長期的な施策のため現状の売上へのインパクトは不明ですが、ほとんどコストを掛けずにタイムリーにメッセージを送れるようになったこと、相談内容やコンテンツに対する反応から顧客のニーズを知れるようになったことは、アプリ導入による大きなメリットと言えます。

もちろん、CRM以外でもデジタル活用は進んでいます。例えば店舗ではAIチャットポッドを活用した来店予約受け付けシステムを導入。事前に来店日時や検討品目などを知らせてもらうことで、以前よりスムーズな商品提案を実現しています。こうしたデジタル変革はまだまだスタートしたばかりとはいえ、2023年3月の決算では過去最高時に迫る勢いで売上を伸ばしV字回復を達成。今後も同社の動きから目が離せません。

参考:2023年3月決算説明会|株式会社はせがわ

参考:推しの為の祭壇『推し壇』を販売開始!~手を合わせる生活文化を若い世代へ~|株式会社はせがわ

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