DX人材に求められる知識・スキルと育成方法
いま、DXで求められる人材とは?
~DXの要となる人材の種類と育成ポイントなどを解説~<後半>
前回、DX人材の概略と6つの職種をお伝えしました。今回は6つの職種を大きく2つに分け、そのなかでもDXを実際にリードしたり、実行したりする人材である、ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナーを中心に解説します。りません。行動分析などを通じて、アナログ的なインタビューやアンケートでは取得不可能な、言語化されないニーズ・課題を発見することもできます。
DX人材に求められる知識・スキルとは?
前回紹介した6つの職のなかのうち「アーキテクト」「データサイエンティスト/AIエンジニア」「UXデザイナー」「エンジニア/プログラマー」の4種は、「デジタル技術やデータ活用に精通した人材」に相当します。これらの職種はデジタルテクノロジーを駆使しますが、大きな意味で従来のエンジニアの延長とも言えるものです。
一方で、「ビジネスプロデューサー」「ビジネスデザイナー」は従来の企画職や営業職の延長とは言いにくい職種です。今回はこの2つの職種にフォーカスして、求められる知識・スキルついて解説します。
・ビジネスプロデューサーに求められる知識・スキル
―DXビジネスの企画・構築力
全体を俯瞰的し、投資・売上・損益などのビジネス判断・意思決定ができることに加えて、DXでは既存ビジネスと異なる考え方も必要とされます。中期的な目線やPoC投資などの感覚も求められ、デザイン思考やアジャイル手法を取り入れた大胆なビジネス企画・構築力が重要とされます。
―組織牽引力
アーキテクトやデータサイエンティンストなどさまざまな種類の職種・メンバーをまとめ、DXビジネスにチャレンジする牽引力が必要とされます。
―社会課題・ステークホルダーの把握力
社会課題やマーケットの将来動向、外部ステークホルダーを把握して、業種の垣根をこえたビジネスを構築する力が求められます。
・ビジネスデザイナーに求められる知識・スキル
―ビジネスデザイン力
デザイン思考を中心とした手法を使って、社会や顧客の課題を見つけ出し、共創・オープンイノベーション・ワークショップなどでビジネスをデザインし、DXに結びつけることが求められます。
―企画・構築力
アイデアやコンセプトを分析して組み合わせ、図解・明文化することにより、関係ステークホルダーで情報を共有してDXを企画し構築していくことが必要とされます。
―ファシリテーション力
社会や顧客の課題を明確にするデザイン思考ワークショップでは、議論を活性化し合意形成を進めるファシリテーション力が重要とされます。
DX人材を育成する3つのステップと取り組み事例
・DX人材を育成する3つのステップ
ステップ1:DXに向いている人材を見極める
DXには適性があるといわれます。過去の実績にとらわれない、新しいことにチャレンジする、幅広い視野を持つ、などが人材を見極めるポイントです。
ステップ2:DXの基本的な考え方や手法を学ぶ
DXに求められる「挑戦・変化に目を向ける、社会や顧客の課題を発見する、周囲や外部の巻き込む」などの考え方に加えて、社会や顧客の課題を見つけ出すデザイン思考などを学ぶことが必要です。
ステップ3:外部ネットワークを拡げDXを実践する
DXでは、新しい知識や技術を習得し続ける必要があります。社内外にネットワーク拡げることで、効率的に最新情報が得ることができます。また、小規模なPoCをトライ&エラーで実践することで、ノウハウを蓄積していくことが重要です。
・DX人材を育成する取り組み例
―専門組織を立ち上げDX人材を育成(ソフトバンク株式会社)
ソフトバンク株式会社では、DX専門組織として「DX本部」を新たに開設しています。この組織では、営業で活躍していた社員を中心に組織が構成され、売上やコストへの意識を持ちつつ、状況の変化に応じることができる柔軟な思考力を持つことが重要とされています。新事業の創造に必要な能力を強化する点にも力が入れられており「失敗を恐れずに挑戦を続ける姿勢」が重要視されています。
―専任CIOを任命し全社員向けにDX人材育成プログラムを推進(富士通株式会社)
富士通株式会社では、社内DXの総責任者として社外からの人材にCIOを任命しています。基本的に全社員をDXに対応できる人材として育成する方針であり、営業をビジネスプロデューサーとして教育し、デザイン思考なども取り入れたDXアプローチの研修を実施しています。
まとめ
DXというとAIやIoTなどのデジタル技術が注目され、デジタル系のエンジニアが人材の主役、と考えられがちです。一方で、デジタル技術をビジネスに結びつけるには、課題を明確にしてステークホルダーを結びつけてDXをビジネスとして進めるビジネスプロデューサーやデザイナーが重要な人材とされます。
この点からも、今後企業がどのようにDX人材を育成・活用するかは要注目でしょう。