DX基礎用語集Vol.1 ~後編:技術・システム関連~
知らなきゃマズイ!? DX基礎用語集Vol.1<後半>
後編はDXで活用されることの多い技術やシステムに関する用語を紹介します。専門的な言葉も極力わかりやすく説明していますので、エンジニア以外の方も是非参考にしてください。
SoE
“System of Engagement”の略語です。ビジネスでは「つながり」や「信頼関係」といった意味で使われる“Engagement”という言葉が入っていることからも分かるように、主に顧客との関係構築や顧客体験価値(CX)の向上を目的としたシステムを指します。
具体的には、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)ツールやチャットボット、LINEのようなコミュニケーションアプリ、レコメンテーションエンジンなど。他にも『Airbnb』(民泊)や『Uber』(配車)のような、シェアリングエコノミーサービスを支えるシステムなどが含まれます。
顧客ニーズの変化に対応するため、開発・運用ともにスピード感が求められるのが特徴。数週間で開発し、リリース後に高頻度で改良していくアジャイルな手法が一般的です。SoEに対し、既存の業務・事業の効率化を目的としたシステムはSoR(Systems of Record)と呼ばれます。
ビジュアルIVR
ビジュアルIVRは、IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)に視覚的な機能を加えたシステムです。主に顧客からの電話での問い合わせに対し、メニューや選択肢、解決策、FAQなどをスマホの画面上に表示し、分かりやすく最適なソリューションへと導くことを目的に活用されています。
分かりやすさだけでなく、通常のカスタマーサポートにありがちな「待たされる」「音声ガイダンスが長い」といった不満を解消できるのもポイント。企業視点では、オペレーターの負担を減らせることや、電話からWebやアプリへの誘導が期待できる点も大きなメリットと言えるでしょう。
現在はFAQやチャットボットなどへの誘導が一般的なようですが、中には某大手保険会社のように、オペレーターが説明の際にユーザーのスマホ画面上に資料を表示させたり、申込フォームにサインを入力できたりするような機能を実装している事例もあります。
ITIL4
ITIL®は、イギリスの政府機関がまとめたITサービスマネジメントのフレームワーク(成功事例)集。社内外のユーザーニーズを満たすITサービスを効果的かつ継続的に提供する仕組みが記されており、世界中の企業で活用されています。
現在、そのITIL®の最新バージョンが2019年にリリースされたITIL4です。それまでなかったアジャイル開発やDevOps(開発担当と運用担当が緊密に連携して進める開発手法)などの要素が追加され、まさにDXに対応したIT運用のノウハウが詰め込まれた内容となっています。
ITIL®は難解な説明が多いため、実際に活用する際はITIL®に準拠したITサービスマネジメント(ITSM)ツールを導入するのが一般的です。導入する際のポイントはこちらの記事で解説しています。
ITSMツールによるノンコア業務効率化・自動化のススメ(SmartStage)
※ITIL®はAXELOS Limitedの登録商標です
コンテナ
いわゆる「仮想化技術」の1つです。仮想化とは、運用の効率化やコスト削減などを目的に、アプリの実行環境をOS上に仮想的に構築する技術のこと。仮想化マシンを使用する従来の仮想化技術の違いとしては、下図のようにそれぞれがOSを動かさなければならない仮想化マシンに対し、コンテナは1つのOSで稼働する点が挙げられます。
こうした特徴などにより、コンテナには次のようなメリットがあります。
- ・アプリを少ないリソースで動作できる
- ・アプリをスピーディーに起動できる
- ・異なるシステム間でもアプリの実行環境を移動しやすい
つまり、DXで求められるアプリケーション開発・リリースの高速化・高頻度化を実現する技術ということ。アメリカ企業に比べると、まだまだ日本では活用している企業は少ないようですが、DXを居力に推進する上で必須の基盤技術であることは間違いありません。
サイバーフィジカルシステム(CPS)
文字通り、現実(フィジカル)空間と仮想(サイバー)空間を高度に融合させるシステムのこと。現実空間で収集したビッグデータをコンピュータ上に構築した仮想空間に取り込み、分析やシミュレーションを実行した後、現実世界にフィードバックして新たな価値提供や課題解決を図るのが一連の流れです。
フィジカルデータの収集にはIoTを始めとするセンシング技術、サイバー空間での分析・シミュレーションにはAIやAR(拡張現実)といったテクノロジーを活用。以前記事でも紹介した、仮想空間に現実世界を再現するデジタルツインも不可欠な技術のひとつです。
現在、国が主導する超スマート社会『Societi5.0』において実装が計画されていますが、ビジネスでも導入は進んでいます。とりわけ目立つのが製造業での活用で、仮想空間に再現した工場での試作(モデリング)や、多品種少量生産のための生産ラインの最適化(人員・生産計画)などに利用されています。