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2024年1月15日

新ビジネスの創出も!生成AIを活用したサービス事例と導入ポイント

どう活用する?進化を続けるChatGPTと生成AI<後半>

前半記事では社内向けのChatGPT導入事例を取り上げましたが、今回は新サービスの創出や既存サービスのアップデートに生成AIを活用している企業を紹介します。

調達交渉自動化サービス創出事例

今のところ、生成AIを活用して革新的なサービスを創出している企業の多くは、やはりAI先進国アメリカを始め、海外の企業です。シリコンバレーのスタートアップ企業Pactum AI社は、購買業務における調達交渉を自動化するAI『Pactum』を開発。アメリカの小売り最大手ウォルマートが採用して話題になりました。

PactumはChatGPTと似たチャットポッド型のAIで、高度な数理モデルと認知科学に基づいて構築されており、ユーザーが予算と優先事項を伝えると、チャット上でサプライヤーの担当者と自律的に交渉のやり取りをおこないます。まだまだ人による調整が必要な部分もあるようですが、同時に2000件の交渉を進めることが可能と言われており、煩雑な購買調達業務における工数削減効果は抜群。ウォルマートは2021年の試験導入からの2年間で、68%のサプライヤーとの交渉を成立させ、平均3%のコスト削減を実現させているということです。

参考:Pactum AI社Webサイト

その他、文章生成AIだけでなく、画像生成AIも活用されています。例えば、家具・インテリア業界などで目立つのが、インテリアデザイン提案サービス。ユーザーが自分の部屋やオフィスの写真をアップロードして希望のテイストなどを入力すると、AIが画像に家具や照明、壁紙などを加えておすすめのインテリアを提案してくれるサービスです。

続いて、海外と比べるとまだまだ数は少ないものの、ユニークなサービスを創出している日本企業の事例を紹介します。

バーチャル旅行代理店サービス創出事例

AIを活用し、ユーザーの希望・条件をもとに最適な旅行先やプランをレコメンドするWebサイト『AVA Travel(アバトラベル)』。ユニークなサービスとして度々メディアでも取り上げられていましたが、同サービスを運営するAVA Intelligence株式会社は2023年7月、ChatGPTの生成AI技術と同社保有の国内旅行に関するデータを活用したWebチャット機能(β版)をリリースしました。

サービス内容は、国内旅行の旅先や観光スポット、ホテル、飲食店などについてAIキャラクターに相談できるというもの。例えば「都内からアクセスの良い、自然豊かな避暑地は?」と質問すると、キャラクターが「避暑地いいね~!」と返答し、すぐに複数の候補地を提案してくれます。ChatGPTの弱点の一つが“最新情報に弱いこと”ですが、同サービスは検索エンジンと連動し、自社データにない情報はAIがリアルタイムに情報取得することで回答の精度を向上させているということです。

参考:『AVA Travel』がChatGPTを活用しAIへ旅行相談できるWEBチャット機能(β版)をリリース|AVA Intelligence株式会社

国内企業の「画像生成AI」活用事例

現状、日本企業の画像生成AIの用途としては、商品パッケージや広告クリエイティブの制作など、主にデザイン面での活用が目立ちますが、そうした中、先述の海外企業のような提案型のサービスを展開している企業も登場しています。そのうちの一社、京都のテキストブランド『SOU・SOU』(若林株式会社)が始めたのは、ECサイト上でのバーチャル試着サービス。株式会社データグリッドが開発したAI搭載サービス『kitemiru』を活用したもので、ユーザーはスマートフォンで自分の全身写真をアップロードすると、すぐにAIが生成した商品着用イメージを確認することができます。

「試着ができない」というアパレルECの課題解決につながるサービスということもあり、ユーザーからも好反応。1カ月間実施した検証では、バーチャル試着サービスを導入した商品は、同カテゴリーの導入しなかった商品に比べて購入率(CVR)が平均15%向上したという結果が得られたということです。

参考:バーチャル試着サービス「kitemiru」の導入でアパレル商品のCVRが15%向上|株式会社データグリッド

サービス品質向上への生成AI活用事例

DX推進企業としても知られている三井住友海上火災保険株式会社は、前回紹介したAzure OpenAI ServiceのChatGPTを活用し、事故対応サービスにおける照会業務の効率化と顧客対応の品質向上に取り組んでいます。

照会業務においては、社内マニュアルや保険約款、FAQなどの情報を学習した対話型AIを構築。商品・サービスや事務処理ルールに関する社員や代理店からの問い合わせの回答をAIが生成することで効率化につなげています。

また、保険金支払いなどの顧客対応でも同様に、マニュアルや関連法令、対応ノウハウなどを学習したAIの回答を、顧客への説明・アドバイスの的確性とスピード向上に役立てているとのこと。同社はこうしたAIの役割を“仮想的なスーパーバイザーやアシスタント”(下記同社ニュースリリースより)と表現しています。

参考:対話型AIを活用した事故対応サービスの品質向上取組を開始|三井住友海上火災保険株式会社

生成AIが抱えるリスクとその対策

先ほど、国内企業の生成AI活用事例について「海外に比べるとまだまだ少ない」と述べましたが、実証実験段階のものは多く、今後はさらに革新的なサービスが増えていくのは間違いないでしょう。ただ、その一方で、生成AIは歴史の浅い技術ということもあり、企業が活用・導入する上で看過できないリスクを抱えていることも事実です。とりわけ注意すべきなのが、「セキュリティ」と「コンプライアンス」に関わるリスクです。

例えばChatGPTのような対話型AIでは、入力内容が提供元の機械学習に利用され、万が一の場合、利害関係者の個人情報や機密情報が外部へ漏洩する恐れがあると言われています。また、対話型AIの回答は「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれるほど不正確で偏ったものも多く、鵜呑みにして二次使用(SNSやブログへの転載など)すると、誤情報や偏見を広めてしまう可能性も少なくありません。画像生成AIに関しては著作権侵害のリスクが指摘されています。

当然ながら、前回と今回紹介したような企業の多くは、こうしたリスクへの対策として、機密情報を利用しない形での運用や、学習データに利用されないサービスの利用など、クローズドな環境を構築し、さらに教育プログラムやガイドラインを通して社員のリテラシー向上に取り組んでいます。

しかし、考えるまでもなく、“万能でない”のは生成AIに限った話ではありませんし、セキュアな環境構築やガイドラインの策定は、他のIT・デジタルツールを導入する際にも欠かせない取り組みです。つまり、「便利だから」と生成AIを導入したところで、データのアクセス権管理やシステム間連携といった、デジタル時代に“当たり前”とされていることすら実践できていない企業の場合、成果を上げるどころか、トラブルを招く可能性が高まるだけとも言えるのです。

今一度、自社のIT環境を見直してみること――それこそが、企業が生成AIを活用する前にまず取り組むべきこともしれません。

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