文書管理の“アップデート”が必要な理由
「保管」から「運用」へ――DX時代の「動的」な文書管理とは?<前半>
企業の根幹を支える文書管理
紙、電子を問わず、企業活動に文書(ドキュメント)はつきもの。各種帳票を始め、契約書、報告書、マニュアル、図面……などなど、日々あらゆる業務で何らかの文書が発生します。その文書を「適切」に管理することは、決して派手さはないものの、企業の根幹を支える重要な取り組みと言っても過言ではないでしょう。
文書管理をおこなう具体的なメリットとしては、大きく次の3つが挙げられます。
(1)生産性向上
コクヨ株式会社が2018年に発表した調査結果によると、一般的なビジネスパーソンが書類(紙)を探す時間は1日平均約20分。年換算すると約80時間になり、意外とバカになりません。文書管理で検索性を向上させることで、こうした時間や労力を削減し、より本業に注力できるようになります。
(2)顧客満足度向上
顧客と直接やり取りする業務の場合、必要な資料を必要なタイミングでスムーズに参照できる仕組みを構築すれば、応対品質と顧客満足度の向上につながります。
(3)セキュリティ・コンプライアンス強化
文書の利用者や保管場所を明確化・可視化することで、情報漏えいなどのセキュリティリスクを低減することができます。また、文書によっては法律で保存期間を定められているもの(法定保存文書)もあり、適切な管理が欠かせません。
保管・保存は「管理」ではない
とはいえ、中には「自社でも文書管理をおこなっているが、いまいち効果やメリットを実感できない」という方もいるでしょう。その場合、理由として考えられるのが、文書管理に対する誤解です。
とりわけ多いのが、実際の取り組みが文書「管理」ではなく、「保管」または「保存」レベルというケースです。どれも同じような意味の言葉に思えるかもしれませんが、あくまで保管・保存は管理の一側面に過ぎません。
例えば近年は、DXの普及も後押しして、多くの企業で紙文書の電子化が進んでいますが、これも単にPDF化してファイルサーバーに格納するだけなら、管理ではなく保管・保存です。
そもそもファイルサーバーは統制が利きづらいため、同じ文書が複数存在していたり、どれが最新バージョン(版)なのかわかりづらかったりと、カオス化しやすい傾向があります。その結果、必要な文書がなかなか見つからなかったり、誤って旧バージョンの資料を参照してしまったり、異動や退職の際の引継ぎが非効率になったり……といった問題が発生しやすくなってしまうのです。
ファイルサーバーはカオス化しやすい
もし、自社で同じような課題を抱えているなら、早急に「DX時代の文書管理」に相応しい取り組みにアップデートする必要があります。
文書ライフサイクルを
では、DX時代の文書管理にはどのような取り組みが求められるのでしょうか? 当然ベースとして、紙文書を減らす、電子化する、といった「ペーパーレス化」の取り組みは必須です。とはいえ上述の通り、それだけでは「管理」とは言えません。
実はビジネス文書には製品と同じくライフサイクルがあり、一般的には「活用」「保管」「保存」「廃棄」の4つの段階に分類されています。
「保管」と「保存」はほぼ同じ意味合いで、前者は頻繁に使用する文書に、後者はあまり使用しない文書に使われる言葉です。場合によっては、「活用」を「発生(文書の作成や受領)」と「処理(文書の承認・締結・周知など)」に分けるケースもあります。
そして、現在のスピード重視のビジネス環境で求められるのが、各文書のライフサイクルを適切に管理してそれぞれの段階を効率化する「動的な文書管理」なのです。どちらかと言うと、「管理」よりも「運用」に近いアプローチと言えますが、具体的には次のような仕組みを構築することが該当します。
・必要な時にスムーズに最新バージョンの資料を取り出せる
・文書が更新された際、関係者に自動で通知される
・保存期限の近付いた文書を簡単に把握できる など
法対応の効率化も必須
DX時代の文書管理では、電子文書の保存に関する法律への適切かつ効率的な対応も必須です。例えば、2024年1月から施行された改正電子帳簿保存法では、国税庁により国税関係の帳簿・書類(見積書、請求書、発注書、納品書、送り状、契約書など)の電子取引データについて電子保存が義務付けられましたが、その際の要件として以下の2つが定められています。
・真実性の確保
タイプスタンプの付与など、改ざん防止のための措置をおこなうこと
・可視性の確保
「日付・金額・取引先」で検索可能にするなど、必要な文書をすぐに取り出される状態にしておくこと
参照:電子取引データの保存方法をご確認ください【令和6年1月以降用】(令和5年7月)(PDF/722KB)|国税庁
また、従来は紙での保管が義務付けられていた法定保存文書の電子的な保管を認めるe-文書法(電子文書法)では、文書の種類(管轄する省庁)によって若干異なるものの、電子化する際の要件として以下の4つが定められています。
・見読性
PC画面上または出力した際に、明瞭な状態で閲覧できるようにすること
・完全性
保存期間中の改ざんや毀損、焼失を抑止する措置が取られていること
・機密性
許可した人物以外はアクセスできない状態にしておくこと
・検索性
必要に応じてすぐに文書を活用できるようしておくこと
このように、DX時代の文書管理にはさまざまな取り組みが求められます。次回の後半記事では、それらを実現するための最適な方法を紹介します。