ITシステム運用保守のDXが必要な理由
ITシステム運用保守のDX
~「ゼロタッチオペレーション」「AIOps」「NoOps」~<前半>
なぜ今システム運用保守のDXなのか
理由
今、運用部門がやるべきことは、DX推進・攻めのIT・2025年の崖対策
経済産業省が公開したDXレポートで「2025年の崖」がいわれているように、日本では企業のデジタル活用が課題視されています。企業がこのまま、老朽化・ブラックボックス化したシステムの運用保守に多くの費用を使い続け、DXを実現できずにいると日本の経済損失は年間あたり最大12兆円にものぼるという試算が出ています。
これは日本経済全体の試算ではありますが、このままでは各企業のデジタル競争力が失われていく、ということに他なりません。
課題
【課題1】主な費用が運用保守という現状
DXレポートによると、IT関連費用の8割が既存システムの運用保守となっています。従って、「既存システムの運用保守へかける費用が高い現状」の脱却が求められます。運用保守の費用比率を下げ、DXによる攻めのITに投資することで効率も上がって新たなリソース投入もでき、2025年の崖の対応もできることでしょう。
しかし、運用保守にかけるコスト・工数の高さが問題視されているのは、今に始まった話ではなく、過去からさまざまな企業がメインフレームのオープン化や仮想化・クラウドの活用で、運用保守のコスト・工数削減を図ってきています。
それでもまだ既存システムの運用保守コストが高いことに変わりはなく、このような傾向は、過去10年以上継続して、多くの企業の足かせとなっており、運用部門には次なる一手が求められています。
ITシステム全体の予算の9割以上を運用保守に費やしている企業は実に全体の3分の1以上ともいわれ、この現状を改善し、運用保守コストを低減させDXなどの新規投資に予算を配分していくことは多くの企業にとって最重要な課題といってもよいでしょう。
【課題2】業務の属人化
多くの企業でシステム運用保守の業務が属人化していることも課題です。長年、同一のシステムを、メンテナンスを繰り返しながら利用している企業は多いです。このような場合、システムの運用保守には、システム自体に対する深い理解が必要で、属人的になっていることがあります。AシステムはAさんに聞かないと分からない、BシステムはBさんでないと詳細は把握できない、といったように、長年そのシステムに携わっているメンバーがいないと運用保守ができなくなっている状況も起きています。
中小企業にとっても、システム運用保守の属人化は大きな課題といえるでしょう。情報システム担当者が1名ないし数名という企業も多く、退職などにより業務が回らなくなるような事態も起きてしまいます。
運用保守業務の属人性を排除し、スキル・ノウハウを継承することは企業の継続性という観点でも重要な課題です。
運用保守のDX推進により余剰を生み出す
このような課題を解決するためにも、システム運用保守のDXを進めることが重要です。DXではシステム運用保守を改善し、予算面でも人的リソース面でも余剰を生み出していくことを目指すべきです。そしてこの余剰を、ビジネスにおける新規投資へと回していく流れを作る必要があります。
まさに今、システム運用保守を改善するためのさまざまな施策を実施していくことが、システム運用部門に求められています。一方で、多くの企業においては、既存ビジネスの継続のために多額のIT予算が使われ、新規投資に回す余力を失っているというジレンマに落ちいっているともいえます。
しかし、このような状況だからこそ、AIなども活用しながら運用保守のDXを進めることで効率化・コスト削減・属人化の排除などを進め、余剰を生み出すことは、現場の負荷軽減・企業戦略のどちらの面からも重要です。
今回は、なぜシステム運用保守のDXが今必要なのか、さらに主な課題や、余剰を生み出すことが重要ということについて解説しました。次回は、このシステム運用保守のDXを具体的に進めるための代表的な新たな手法について紹介していきます。