コロナ渦による観光産業の状況
観光産業におけるDXの推進<前半>
コロナ渦前までの好調なインバウンドの状況とコロナ後
昨年からのコロナ渦で、世の中の動向が変わってしまったのは周知の事実です。人々の行動様式の変化にともないさまざまな産業が打撃を受けています。その中でも最も大きな打撃を受けているのが宿泊業などを含む観光産業です。
■コロナ渦以前のインバウンド増による活況だった日本の観光産業
2016年3月政府は「観光先進国」への新たな国づくりに向けて「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。その中で、世界が訪れたくなる日本を官民一体となって目指し、2020年には4,000万人、2030年には 6,000万人を目標とすることが謳われています。
実際にはそれ以前からの、安倍政権によるビザ緩和などの大胆な改革政策により、訪日外国人旅行者数は2012年には836万人だったものが2015年には1,974万人に既に増加しており、コロナ渦直前の2019年には3,188万人と、翌年の目標4,000万人の直前となるなど、インバウンドは順調の伸びを示し観光産業は活況でした。
ところがコロナ渦により、2020年は412万人と目標の10分の1という大変な状況に陥ってしまいました。
また、観光産業の持ち直しのために急遽実施されたGoToトラベル施策もコロナが収束せずに中止に追い込まれました。現在も観光産業は非常に厳しい状況が続いており、ワクチンの摂取が進み始めているとは言え、未だ回復にはほど遠い状況となっています。
■デジタル技術の導入や観光DXの検討
このような状況の中、デジタル技術の導入やDXなど新しいコンセプトも必要になり、急速に観光のデジタル化やDXの検討が進みつつあります。例えば、ホテルや旅館などの宿泊業ではタブレットを活用したサービスを導入するケースが増えています。タブレットを各宿泊室に置き、情報提供サービスの質を高めるとともに、顧客の要望をタブレットで受け付けることにより効率化を図っています。同時に、データの蓄積により顧客の分析もできるようになるため、今後のDXも睨みながら、まずはデジタル化から導入が進み始めていると言えます。
観光産業支援のための政府の観光DX補助金の活用が重要
このような状況下で、政府は観光産業の状況に危機感を募らせ、さまざまな施策を打ち始めています。GoToキャンペーンもその一つであり、これまでインバウンド需要に投資していた観光業が壊滅する可能性もあるため、なんとか観光産業の浮揚を図っています。同時に、観光DXを進め観光産業の変革を支援しようとしています。
■政府補助金の活用による観光DXの推進
政府からはさまざまな観光DXに関する補助金が公募され始めています。ここでは観光庁の“DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出“の公募内容を見てみましょう。
・事業イメージ1:観光空間の変革
オンライン空間上でのツアーを通じて観光地の情報収集や消費の機会等を提供する内容であり、いわゆるVRなどのデジタル技術の導入によりバーチャル観光などを進める事業です。
・事業イメージ2:観光体験の変革
観光サービスの変革による体験価値の向上や観光消費額増加を実現する事業内容であり、観光客のスマホ位置情報を活用し位置に応じた観光情報を提供することにより、体験サービスの付加価値を増やし、また近くの店舗のクーポン発行などにより消費も活性化させる、という事業です。
・事業イメージ3:地域観光の変革
観光サービスの変革により地域観光における観光消費額増加や収益向上を実現する内容で、顔認証などの生体認証を使い、手ぶら観光で支払いなどを利便化したり、AI導入によりリアルタイムで価格を変動させたりして、収益性を高めるという事業です。
このように、政府は観光産業の変革を進めるために観光DX関連の補助金事業を公募しています。コロナ渦により傷んだ観光産業を復活させるためには、このような補助金をDXの推進に活用することが重要でしょう。
今回、コロナ渦による観光産業の状況と政府の補助金の活用の重要性などをお伝えしました。
次回は、観光DXに向けて、これから活用されると考えられる最新技術や、実際に補助金事業を活用して観光DXに向けて取り組もうとしている事例についてお伝えしていきます。