スマートシティの状況
都市のDX化「スマートシティ」<後半>
海外での先進事例
ここではデジタル技術を駆使して実現した、海外での「スマートシティ」の先進事例を紹介します。
■エストニアの電子国家
東ヨーロッパのエストニアは、近年デジタル化政策を推し進め、DXを活用した最先端事例とも言われる「電子国家」として有名です。エストニアは人口130万人の小国にも関わらず、近隣の大国ロシアやヨーロッパの国々に囲まれたてきたという歴史的な経緯があります。そのため、万が一領土がなくなったとしてもデジタル世界の中で国家を存続させるという趣旨で電子政府を作ったと言われています。
具体的には「e-government」と呼ばれる国民データベースにより、国民はICチップ付きIDカードによって、役所でのさまざまな手続きはもちろんのこと、このデータベースに連動した「e-Residency」サービスにより選挙や電子裁判の手続きなどもすべて電子手続きで完結できます。医療における診療データなども病院間で連携されており、これに警察などのデータベースも連携するなど、あらゆるデータが連携し、様々な行政機関の効率化と、国民の利便性が実現されつつあります。
これらのシステムはハッカーなどから守るために、改ざんに強いブロックチェーン技術をベースとして作られています。
■バルセロナの都市OS
スペインのバルセロナ市は、2000年代中盤から世界に先駆けいち早くセンサーなどを導入した交通や都市環境などの都市マネジメントにのりだしました。それに使用したのが都市OSと言われる、あたかも都市全体を管理し、OS(オペレーションシステム)のように動作する、現在のスマートシティでも導入が進むデジタル技術です。
この都市OSでは、車による騒音や大気汚染の状態、駐車場の状況、ゴミ収集車が収集するゴミ箱の状態など、10種類以上のさまざまな都市の状態をセンサーでリアルタイムに監視しています。例えば、ゴミ箱には温度計センサーがあり、各ゴミ箱の状態によって、収集すべきゴミ収集車のルートを計算し最も効率的なゴミ収集を行います。
日本での取り組み例
最後に、日本でも補助金などを活用した、スマートシティの取り組みが始まろうとしており、その例を2つ紹介します。
■福島県会津若松市
会津若松市では、「スマートシティ会津若松」というコンセプトのもと、大きく以下の3つの視点でデジタル技術の活用やDXでスマートシティを推進しています。
1. 地域経済の活性化会津若松市では、「スマートシティ会津若松」というコンセプトのもと、大きく以下の3つの視点でデジタル技術の活用やDXでスマートシティを推進しています。
2. 安心して快適に生活できるまちづくり地域の情報の入手方法や各種証明書の手続きのデジタル化により、サービス間のデータの連携を進め、生活の利便性を改善・効率化し、市民がより快適に生活できる環境づくりを進めていきます。
3. 「まちの見える化」の実現スマートメーターを用いた都市全体のエネルギーマネジメントや、住民情報等を地図上に表示するGIS(地理情報システム)を空き家対策やバス路線の最適化に役立てるなど、「まちの見える化」に取り組んでいます。さらに、市が持つデータ情報基盤「DATA for CITIZEN(データフォーシチズン)」を構築し市が持つデータをオープンにすることにより、地域の活性化に寄与することを目指します。
■静岡県裾野市
静岡県裾野市ではトヨタ工場跡地にトヨタが開発する未来都市「ウーブン・シティ」と言われる「スマートシティ」の建設が予定されています。
特に道路が、高速自動運転モビリティ用の専用道路、低速自動運転車両と歩行者の共用道路、歩行者専用道路、などに分かれており、車両の移動は自動運転を前提としていることなどが特徴です。
ここでは、2021年2月から既に開発が始まっており、ロボット・AI・自動運転・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中で導入・検証出来るように都市を作ることが予定されています。
このように、人口減少や高齢化社会などのさまざまな社会課課題を解決するために「スマートシティ」は構想されてきました。さらに現在では、コロナ渦によるデジタル技術の導入が加速する中、国をあげて「スマートシティ」は今まさに進もうとしています。今後「スマートシティ」は都市に関するDXとして注目すべきでしょう。