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なぜ今DXレポート2.1なのか?

DXレポート2.1 ~DXレポート2では語られなかった「デジタル産業」の具体像~<前半>

DXレポートとDXレポート2のおさらい

今から約3年前の2018年9月にDXレポートが経済産業省によって発表されました。その約2年後にDXレポート2、そして今回DXレポート2.1が相次いで発表されています。まず、DXレポート2.1に入る前にDXレポートとDXレポート2について振り返ってみましょう。

■DXレポート(2018年9月7日)

DXレポートはDXという言葉がまだ一般的ではなかった2018年に、将来にわたりIT人材の不足が起こる可能性が高いという危機を伝えました。特に強調されたのが「2025年の壁」です。このまま何も手を打たずに進むと2025年には極端なIT人材の不足に陥ることになり、多くのITシステムが危機を迎えるという内容でした。
そして、「2025年の崖」を乗り越えるためには、塩漬けになったレガシーシステムを刷新し、これらのシステムメンテナンスにとられている多くのIT人材を解放し、新しいシステムの再構築に充てるべきとのことでした。そしてデジタル技術にシフトすることにより企業はDXを進めることが可能になり、本当の競争力を得ることができる、と伝えました。

■DXレポート2(2020年12月28日)

DXレポート2は同じく経済産業省から中間とりまとめという形で発表されました。社会は2020年3月頃より始まったコロナ渦による大きな影響を受け、特に人と人とのコミュニケーションは今までに類を見ないほどの限られたものになりました。コロナ渦によるこういった状況を打破するために、ITを活用したさまざまな新しいコミュニケーション方法などビジネスには多くの変化が見られました。
これを受けて、遅々として進まなかったDXが進みだした状況、DXを進めるための企業の経営・戦略の方向性、などについて述べられています。その中でも企業の経営・戦略の方向性については、企業が取り組むべき具体的なアクションや短期的・中期的な対応について詳細に述べられています。そして今後の政府政策の方向性や、将来のIT産業として「デジタル産業」などが示されました。

ユーザー企業とベンダー企業の現状と変革の必要性

DXレポート2では、将来のあるべき姿として「デジタル産業」が描かれ、ユーザー企業とベンダー企業の2軸構造が前提に語られていました。ただ、この前提である2軸の企業について理解しないと「デジタル産業」の具体像は出てきません。
そこで、DXレポート2.1(2021年8月31日)では「デジタル産業」の具体像となっているユーザー企業とベンダー企業の課題やジレンマについて詳しく述べられており、ここではそれを解説します。

■ユーザー企業とベンダー企業の課題

「既存産業」の業界構造では、ユーザー企業は委託による「コストの削減」を追求し、ベンダー企業は安定した受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」で利益を追求していて、両者は一見バランスが取れているように見えます。
しかし、安定しているがために、両者ともにデジタル化やDXを成し遂げる能力を持つことができずに、競争を勝ち抜いていくことが困難な「低位安定」の関係に固定されてしまっていると言えます。このことが両者にとってDXが進まない、大きな課題となっています。

■ユーザー企業とベンダー企業のジレンマ

ユーザー企業とベンダー企業が共通に抱えるのが下記2つのジレンマです。

・危機感のジレンマ(危機感が薄い)
→目先の業績が好調のため変革に対する危機感がない
→危機感が高まったときはすでに変革に必要な投資体力を失っている

・人材育成のジレンマ(人材を育成するといなくなる)
→技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには古い技術となっている
→DXの人材は不足しているため、育成した新技術に対応できる優秀な人材は引き抜かれてしまう

これらに加えてベンダー企業では以下のジレンマを抱えています。

・ビジネスのジレンマ(DXを進めると、自分たちのビジネスが減る)
→受託型ビジネスを現業とするベンダー企業が、ユーザー企業のデジタル変革の支援を行うと、ユーザ・企業はIT力を付け、徐々に受託型ビジネスは減り最終的には自分たちが不要になってしまう

今回、過去のDXレポートの流れと、ユーザー企業とベンダー企業の課題とジレンマについてお伝えしました。次回は、今後これらの課題などを乗り越えて実現すべき新しい「デジタル産業」の具体像や、それに向けての施策などについてお伝えしていきます。

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