DXで実現する「デジタル産業」の具体像
DXレポート2.1 ~DXレポート2では語られなかった「デジタル産業」の具体像~<後半>
「デジタル産業」の具体的な姿と方向性
ここでは「デジタル産業」の具体的な姿と方向性とその例について解説します。
「既存産業」のユーザー企業とベンダー企業が、前述の課題やジレンマを乗り越えて目指す「デジタル産業」について解説します。DXレポート2.1の目玉はこの「デジタル産業」の具体像です。この「デジタル産業」が「既存産業」と大きく異なる点は、「既存産業」が規模に応じてヒエラルキー型で繋がるのに対して、データを中心に業界内でフラットに繋がる点です。
そして、「デジタル産業」を構成する企業は以下の4つの類型に分類できます。
① 企業の変革を共に推進するパートナー
新たなビジネスモデルやDXの実践により得られた知見や技術を顧客と共有する。
〈例:コンサルティング事業者〉
経営トップのマインドチェンジなど企業の変革を推進し、企業組織の意識改革・再編などを総合的にサポートする。
② DXに必要な技術を提供するパートナー
DXに関する最先端のIT 技術を有するスキルの高いエンジニアの供給や、DXの専門家としてさまざまな技術を組合せて提案を行う。
〈例:SI事業者〉
内製化を進める企業へアジャイル開発技術・DX人材育成・組織変革提案などの支援を行う。
③ 共通プラットフォームの提供主体
中小企業を含めた業界ごとの共通プラットフォームのサービス化やエコシステムの提供を行う。
〈例:プラットフォーム事業者〉
業界毎や課題毎に共通のプラットフォームを構築し、エコシステムの形成支援などを行う。
④ 新ビジネス・サービスの提供主体
IT を強みとし、新しいビジネス・サービスの提供を通して社会への新たな価値提供を行う。
〈例:大手小売り事業者〉
サービスのIT開発はすべて内製で行い、EC・コンテンツ事業などをテクノロジー起点で常に事業変革させる。また、DXのために開発したデジタルソリューションなどを他社へ提供する。
変革に向けた施策
最後に、今まで述べてきた変革を成し遂げるための施策について解説します。
これらDXレポート2.1が示した進むべき変革に対して、経済産業省は以下2つの大きな施策の方向性を打ち出しています。
■デジタル産業指標
前述の企業類型に向けて変革するためには、企業類型の目指すべき姿やそれぞれの特徴を明確に示す必要があります。また、企業類型ごとに企業が自社の成熟度を評価することができるデジタル産業指標(仮)を策定し、それを目指して進めるように公表します。
■DX成功パターン
現在、公表されているDX事例の多くは、取組みのレベルが変革のどの段階にあるのかが分かりにくいと言われています。そのため、企業がDXを進めるためにはDXの全体像やゴールに向けた道筋としてどのようなパターンがあるかを示す必要があります。
目指すべき「デジタル産業」の姿に向けて、そこに至る企業変革の成功パターンを明確化し、これらの施策をDXレポートの一環として提供します。
現在、日本における企業のDXやデジタル化は、欧米、特に米国の超大手IT企業と言われるGAFAなどを代表とする企業に後塵を拝していると言えるでしょう。かつて2000年代以前は半導体を中心とした日本のITは世界を牽引するほどの力がありました。ところが現在では、特にソフトウェアを中心とするITでは、クラウド基盤などを中心に大きく遅れをとっていると言わざるを得ません。
今後、これらDXレポート2.1が主張する将来へ進むことができるか否かはこれからです。経済産業省が提唱するDXレポートシリーズとそれに関する施策は、今後の日本企業の変革の重要なカギになると言えます。ぜひ、前述した具体的な施策の掲載が予定されているDXレポート2.1の続編に注目しましょう。