デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

「守りのDX」で「企業文化を変革」する

ビジネスモデルの変革だけがDXの目的ではない<後半>

アナログ文化を脱するための4つのアクション

経済産業省の『DXレポート2 中間取りまとめ』では、コロナ禍の現在、レガシーな企業文化(業務・慣習)を変革するためのファーストステップとして、直ちにITツール・サービスを活用した以下4つのアクションに取り組むべきと述べられています。

■業務プロセスのオンライン化

●テレワークシステムによる執務環境のリモートワーク対応
●オンライン会議システムによる社内外とのコミュニケーションのオンライン化

■業務プロセスのデジタル化

●OCR製品を用いた紙書類の電子化
●クラウドストレージを用いたペーパレス化
●営業活動のデジタル化
●各種SaaSを用いた業務のデジタル化
●RPAを用いた定型業務の自動化
●オンラインバンキングツールの導入

■従業員の安全・健康のデジタル化

●活動量計等を用いた現場作業員の安全・健康管理
●人流の可視化による安心・安全かつ効率的な労働環境の整備
●パルス調査ツールを用いた従業員の不調・異常の早期発見

■顧客接点のデジタル化

●電子商取引プラットフォームによるECサイトの開設
●チャットボットなどによる電話応対業務の自動化・オンライン化

出典:経済産業省『DXレポート2 中間取りまとめ』

簡単にそれぞれのITツールについて説明しておきましょう。OCR(オプティカル・キャラクター・リーダー)は、スキャンするだけで紙資料やFAXの文字をデジタルデータ化できる光学的文字認識ソフトウェア。SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)はインターネットを介して主に業務効率化のためのソフトウェアを提供するサービスで、営業・人事・勤怠管理など様々な分野で活用されています。特に、テレビCMでも目にする『Salesforce(セールスフォース)』が有名です。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)はデータ入力や資料作成、検索など、パソコンを使った業務を自動化できるITツール。主にバックオフィスの業務時間削減を目的に活用されています。チャットボットは、ホームページやECサイト上でテキストまたは音声で顧客対応できる自動応答システムです。

ITツールを放置させないための有効な取り組み

ただし、これら4つのアクションを成功させるためには、以上のようなITツール・サービスを導入する「だけ」では不十分です。実際に、せっかく便利なITツールを導入しても、十分に活用されないまま放置されている例は枚挙にいとまがありません。つまり、「何を」導入するかと同じく重要なのが、「どのように」導入するかということ。そこで参考になるのが、大手日用品・トイレタリー用品メーカーである、サンスター株式会社のDXの進め方です。

サンスターが本格的にDXに取り組み始めたのは2019年1月から。決して早いスタートとは言えませんが、既存のITの改善程度ではこれから先の競争に勝ち残れない、という危機感が理由だったそうです。前回紹介したセブン&アイ・ホールディングス、荏原製作所と同様に、“攻めのDX”と分けて“守りのDX”を推進。電子ワークフローの導入や社内インフラの改革などの取り組みが功を奏し、2020年4月に緊急事態宣言が発令された際は、間接部門の100%近くがすぐにテレワーク体制に移行できたそうです。

そんな同社が、ITツールやシステムを無理なく業務に取り入れてもらうために実施したのが、社内のカルチャーやマインドを変えていくことでした。といっても、よくあるように、いきなり全社員に変化を求めたのではありません。まずは社内のアーリーアダプター(流行に敏感で新商品や新サービスを早期に受け入れる層)に働きかけ、そこからアーリーマジョリティ(アーリーアダプターに追随する層)へと広げていくという、いわば、マーケティング理論として有名な「イノベーター理論」のようなやり方をとったということです。

参考
“攻めのDX”でマーケティングを革新、“守りのDX”で業務プロセスを革新~サンスター株式会社~|関西DX推進プラットフォーム事業

もちろん、以上紹介した手法や事例はあくまで一例であり、絶対的な正解という訳ではありません。しかし、ビジネス環境の変化が激しい現代においては、企業文化もアップデートを怠ると固定観念と変わらなくなり、ビジネス変革の足かせになってしまうのは前回も述べた通りです。“守りのDX”とは、いわば“企業文化を変革”すること。業務や慣習に柔軟性・俊敏性を付与することです。2022年、DXの最初の一歩として、“守りのDX”で“企業文化の変革”に取り組んでみるのも良いかもしれません。

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