デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

ビジネスにおけるデータの重要性と企業の活用事例

DX戦略の要!データ活用の基礎知識<前半>

企業のデータ活用が進む背景

「データは21世紀の石油」「デジタル時代の産業のコメはデータ」と言われるように、近年、企業の競争力の源泉として、データの価値がますます高まっています。とりわけデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)において、データの収集・分析は戦略の要と言って良いほど重要な取り組みであり、実際に多くのDX推進企業が、データを活用して新たなビジネスモデルの創出や組織変革を実現しています。

もちろん、その背景にあるのは、生活やビジネスへのITの浸透、通信速度の劇的な進化、IoTやAIを始めとするデジタル技術の発達などにより、人や物に関して取得できるデータが爆発的に増加したことでしょう。

そしてそのような流れは、これから先も当分とどまる気配はありません。総務省のホームページで紹介されている『Cisco Visual Networking Index』(シスコシステムズ合同会社)という調査結果によると、世界中でインターネットユーザー数や一人当たりのデバイス数は増え続けており、2023年には、月間のIPトラフィック(データ流通量)が2017年の約3倍にも増加するものと予測されているほどです。

ひとくちにデータと言っても、ビジネスで活用されているデータの種類は多岐に渡ります。メールアドレスなどの顧客情報やSNS上での口コミ、ユーザーが商品購入に至るまでの行動ログ、ECにコールセンターで収集する音声データ、センサーを通して体調や環境の変化を測定できるセンシングデータ、さらに画像・動画データひとつとっても、今や通常のカメラによるものからドローンによる空撮まで、様々なタイプのデータをリアルタイムで取得することができます。

また、企業のデータ活用を後押ししている要素としては、MA(マーケティングオートメーション)に代表されるクラウドシステム、Web上の情報を自動で収集できるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、その他アクセス解析ツールやBIツールなど、容易にデータを収集・分析できる製品やサービスが登場していることも、企業のデータ活用を後押ししていると言えるでしょう。

では実際に企業はどのようにデータを活用し、どのような成果を出しているのでしょうか。続いてデータの種類・目的別に日本企業のイノベーティブなデータ活用事例を紹介します。

企業の革新的なデータ活用事例

視線データを活用した売上向上事例

清涼飲料メーカー大手のダイドードリンコ株式会社は、自動販売機に陳列する商品サンプルの並べ方に、ユーザーの視線の動きを測定するアイトラッキング技術を活用。収集したデータを分析したところ、業界の定番とされていた左上に人気商品を置く陳列方法では効果的でないことが判明。データ分析の結果に基づいて陳列を改めたところ、売上が増加したということです。

参考:情報通信白書 平成27年版|総務省

センシングデータを活用した生産性向上事例

株式会社日立製作所はコールセンターのスタッフを対象に、人の動きをデータ化するウエアラブルセンサーを使った実証実験を実施。その結果、コールセンターの受注率は、営業スキルよりも休憩時間中のスタッフの活性度(雑談の多寡など)が強く影響していることが明らかに。それまでの各自で自由に休憩時間をとるスタイルから、同年代4名のチームで休憩をとるよう変更したところ、受注率も約13%向上したそうです。

参考:コールセンターの営業業績に影響する主要因を解明|株式会社日立製作所

外部データを活用したリスク予測サービス事例

SONPOひまわり生命保険株式会社は、2020年7月、保険契約者向けに生活習慣の改善をサポートするスマホアプリ「Linkx(リンククロス)健康トライ」の提供を開始しました。アプリの特徴は、スマートフォンのカメラで読み込んだ健康診断の結果をもとに、AIが6年先までの生活習慣病のリスクを予測し、健康改善に必要なアクションをアドバイスするというもの。AIは東芝デジタルソリューションズ株式会社と共同開発し、機械学習には研究協力機関などの匿名化した大規模な健康診断データを使用。糖尿病発症のリスク予測では90%以上の精度を達成したということです。

参考:生活習慣病の予防をサポートするアプリ「リンククロス 健康トライ」の提供開始|SONPOひまわり生命保険株式会社

参考:6年先までの生活習慣病リスクを予測するAIのサービス提供を開始|東芝デジタルソリューションズ株式会社

他社とのデータ連携によるシナジー創出事例

2021年9月、株式会社メルカリと株式会社丸井グループがデータ連携の開始を発表。この連携により、丸井グループが運営する「マルイウェブチャネル」上の商品をメルペイ決済(メルカリのキャッシュレス決済サービス)で購入すると、ユーザーのメルカリアプリ内にメルカリでの推定販売価格が表示されるようになりました。商品を使い終わったらメルカリで売ってもらい、その代金で再び「マルイウェブチャネル」から商品を購入してもらうといった、相互送客の仕組み構築を目指しているということです。

参考:メルカリ、丸井が運営するEC「マルイウェブチャネル」とのデータ連携を開始|株式メルカリ

以上、4つの事例を紹介してきましたが、こうして積極的にデータ活用を進めている企業がある一方で、その前段階でつまずいたり、何から手を付けて良いのかわからなかったりする企業が多いのも実情です。そこで次回は、ビジネスにおいてデータを有効活用するためのポイントを紹介します。

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