なぜDXにデザイン思考なのか?
DXと「デザイン思考」 ~DXに必要とされる「デザイン思考」とは?~<前半>
デザイン思考とは
デザイン思考とは、デザインで使われる考え方や手法を活用して、「ビジネスでの課題解決を図るための思考法」です。なかでも、最も重要なポイントは、人間を中心とした思考を行うことです。
一般的にデザインというと、アートや見栄えのデザインなどをイメージしがちですが、ビジネスにおけるデザイン思考は、ユーザーの潜在ニーズを正確に捉えて、今までになかった新しい価値の提供によって問題解決を図ることを指します。今までの手法では、よりよいサービスを提供するためには、どんなツールやシステムが必要かなど、手段に主眼をおいて議論されることがほとんどでした。一方で、デザイン思考ではサービスの先にいる人間であるユーザーを中心に考えます。ユーザーの置かれた状況を分析して、本当の欲求を見出し、本質的な課題を見つけます。デザイン思考は、ユーザーの課題や要望に応じたサービスを生み出すことで、社会にイノベーションを起こし新しい価値を創造する手法です。
もともとデザイン思考は、米国のスタンフォード大学で研究され始めた手法です。同大学の「d.school」はデザイン思考を学ぶプログラムとして世界的に有名です。 スタンフォード大学はシリコンバレーに位置し、これまで数多くの起業家を輩出してきました。シリコンバレーには、Google、Apple、Facebookなど、ビックテックと言われる世界に名だたる大企業あります。これらの企業がDXにより大きなイノベーションを起こし、世界の大きなプレイヤーになることができたのは、ビジネスのベースにデザイン思考をしっかりと行っているからと言われています。
では、なぜこのデザイン思考がDXに向いているのでしょうか、むしろ現在ではDXを進めるためには必須ともされています。次の章でより具体的に見ていきましょう。
DXにデザイン思考が必要な理由
・VUCAの時代
現在はVUCA(ブーカ)の時代と、よく言われます。VUCAとは「Volatility(変動性・不安定さ)」「Uncertainty(不確実性・不確定さ)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性・不明確さ)」の頭文字をとったものです。 VUCAは、もともとは1990年代後半のアメリカで生まれた軍事用語です。東西冷戦の1対1ではなく、混沌とした不明確な軍事状態を表すことに使われ始めました。 これら単語のとおりVUCAの時代とは「不安定で不確実性が高く複雑かつあいまいな」時代という意味です。
VUCAは主にビジネス上で使われます。現在では、デジタルテクノロジーの進化は早く、さまざまな技術が次々に出現し、ITとして多くのビジネスで使われています。ITが浸透することで、ビジネスの変化スピードも早まり不確定さが増し、現代ではビジネスの予測が困難になってきました。
・OODAによるビジネスの進め方
VUCAの時代に使われるのが、今までのPDCAではなくOODA(ウーダ)と言われるビジネスの進め方です。OODAとは、「Observe (観察)」「Orient (情勢への適応)」「Decide(意思決定)」「Act (実行)」の頭文字をとったものです。実際、OODAはシリコンバレーをはじめとした、勢いのある会社が取り入れています。このVUCAのなか、OODAで進めるのに適しているのがデザイン思考とされます。 PDCAでは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(確認)」「Act(改善)」をしっかりと回すことで、ビジネスを着実に成長させることができました、しかしVUCAの現代ではこの手法が合わなくなってきているのです。 DXのDはとても進化が速いデジタルテクノロジーです。これとXであるトランフォーメーションであるビジネス変革を共に成功させるためには、デザイン思考を取り入れた手法が適していると考えられています。
今回、デザイン思考の概要や、なぜDXを進めるために適しているのか、などについてお伝えしました。次回はデザイン思考のDXに対する具体的な適用手法(ご参考:デザイン思考5つのステップ)などについて解説します。