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国内DX推進企業のブロックチェーン活用事例

暗号資産だけじゃない!ビジネスで活用が進むブロックチェーンの基礎知識<後半>

ブロックチェーンはビジネスでどのように使われているか

暗号資産(仮想通貨)にとどまらず、様々な領域で活用が進むブロックチェーン。ビジネスでは現在、おもに以下のような方法で活用されています。

‐トークン(証票)の発行

トークンとは特定の団体・個人が発行・管理する電子的な証票を指します。プロスポーツチームのファンが投票権やイベント参加権などの特典を得られるファントークンや地域通貨が代表的です。

‐取引記録や履歴の共有・保存

改ざんが困難で、時系列でデータを管理するブロックチェーンは、トレーサビリティ(追跡可能性)にも優れています。その利点を生かして、サプライチェーン管理(SCM)システム構築や医療記録の一元化などに用いられています。

‐スマートコントラクト

スマートコントラクトとは、事前に定めていた条件が整えば、第三者の介入や契約書の締結なしに自動で契約手続きや所有権の移行を執行できる仕組みを指します。

海外に比べるとまだまだ実証実験段階のものが多いものの、日本企業からも着々とブロックチェーン技術を活用したサービスが登場しつつあります。

■株式会社ふくおかファイナンシャルグループのブロックチェーン活用事例

(株)ふくおかフィナンシャルグループ傘下のiBankマーケティング株式会社は、ブロックチェーン関連技術を活用してポイント管理システムを構築。2019年から、グループ銀行の会員260万人を対象とした地域ポイントプラットフォームとして本格稼働しています。
ユーザーは様々な銀行サービスを利用することでポイント(『My Coin』)を獲得。貯まったポイントは地域特産品の他、楽天、auなど他社のポイントと交換したり、同社スマホアプリ内の貯蓄口座に預金としてキャッシュバックしたりすることが可能です。

また、2020年3月には、SOMPOひまわり生命保険株式会社と共同でスマートコントラクトを活用したキャンペーンを実施。「ユーザーがSOMPOひまわり生命保険提供の乳がんセルフチェック動画の視聴」→「『My Coin』付与」という企業横断的な一連の流れを自動化することに成功しています。

参考1:ブロックチェーン基盤を活用した地域ポイントサービスの本格稼動について|株式会社ふくおかファイナンシャルグループ

参考2:スマートコントラクト(ブロックチェーン基盤)を活用したSOMPOひまわり生命との共同企画『健康預金(けんこうよきん)』キャンペーンの実施|株式会社ふくおかファイナンシャルグループ

■積水ハウス株式会社のブロックチェーン活用事例

2020年6月、積水ハウスは賃貸住宅『シャーメゾン』の入居希望者に向けて、物件の契約手続きや各種インフラ契約、住所変更手続き、引っ越し手配などをワンストップ化するサービスの実現に取り組んでいることを発表しました。

同サービスを支えるのが、ブロックチェーンを活用した情報連繫制御技術。通常、入居希望者はサービス提供者ごとに様々な書類の提出や記入を求められますが、あらかじめPC・スマートフォン上で登録済みの本人情報を使って、各種手続きが簡素化できるようになるという仕組みです。その後の2021年5月には、大阪市の賃貸物件において、賃貸契約と水道使用開始に関する一連の手続きをワンストップで実施する実証実験を開始しています。

参考1:積水ハウス 業界の新たなスタンダード構築へ 業界初ブロックチェーンで賃貸入居の煩雑なプロセスをワンストップ化|積水ハウス株式会社

参考2:大阪市において賃貸入居に伴う手続きの効率化に向け賃貸契約と水道使用開始手続きをワンストップで実施する実証実験を開始|積水ハウス株式会社

ブロックチェーン企業が競合になる未来

■カレンシーポート(株)、(株)ベジテック、(株)三菱総合研究所のブロックチェーン活用事例

カレンシーポート株式会社、株式会社ベジテック、株式会社三菱総合研究所の3社は共同で、ブロックチェーンの優れたトレーサビリティを活用し、事業者が生産・流通履歴等の情報を入力・管理する「食品トレーサビリティプラットフォーム」を開発しています。

同プラットフォームの大きなメリットは、ブロックチェーンを介した情報共有により、従来よりも事故品の特定や回収、流通品の情報管理が容易になること。2019年1月~2月に実施した実証実験では、ブロックチェーン未活用のプラットフォームと比較して商品の回収作業に要する時間を1/3まで短縮、回収対象品の量は最大で約1/180に削減可能であるなど、スピード・精度とも大きな優位性が確認できたということです。

参考:ブロックチェーン技術を活用した実証実験で、食品回収時の大幅な効率化実現を確認|株式会社三菱総合研究所

■旭化成株式会社のブロックチェーン活用事例

旭化成はサスティナビリティ(持続可能性)への取り組みの一環として、日本IBM株式会社のブロックチェーン技術を活用し、再生プラスチックのリサイクルチェーンを可視化するプラットフォーム構築を推進しています。

2022年9月からは株式会社ファミリーマートとともに、ユーザーが使用済みペットボトルを回収BOXに投函してからリサイクル素材に加工されるまでを、スマートフォンのアプリで追跡できるサービスの実証実験を開始。リサイクルによって削減されるCO2排出相当量がアプリに表示される仕組みになっており、消費者の行動変容、再生プラスチックの利用促進に与える影響などを検証するということです。

参考:プラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」~9月26日(月)から、東京都葛飾区内のファミリーマートで実証実験開始~|旭化成株式会社

以上のように現状は大企業による大規模プロジェクトの事例が目立ちますが、海外ではドイツのスタートアップ企業が民泊(住宅宿泊)サービスにスマートコントラクトを活用し、仲介者なしで安全なサービスを提供するなど、様々な企業がビジネスでの活用を始めています。

2022年2月に発表された矢野経済研究所の調査によると、2020年度に415億2,000万円だった国内ブロックチェーン活用サービス市場規模は、2025年度には7,247億6,000万円に達する見込み。今後は日本でも、IoTやAIとの連携、2021年にデジタルアートなどコンテンツ分野で話題になった代替性トークン(NFT)の導入などが進み、さらに多様な活用事例が増えていくことでしょう。

もちろん、ブロックチェーンの技術としての発展段階はまだまだ黎明期ということもあり、スケーラビリティ(一定時間当たりの処理性能など)を始めとして、技術面・法律面で課題はいくつも存在します。しかし、インターネットが普及してからAmazonのようなデジタルディスラプターが登場するまでのスピードを考えると、ブロックチェーンによって一挙にビジネスの仕組みを変える企業が現れるのは時間の問題かもしれませんし、その企業が自社の直接的な競合にならないとも限りません。そしてそのための最善の対策は、現状維持ではなく「変革=トランスフォーメーション」であるはずです。

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