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新事業創出&事業改善の新たなアプローチ「サービスデザイン」

DXで注目を集める「サービスデザイン」とは?<前半>

サービスデザインの“サービス”とは

ビジネス、とりわけDXの領域において、サービスデザインへの注目が高まっています。例えば、2022年12月に経済産業省とIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表した『デジタルスキル標準 ver.1』。その中でもサービスデザインを主導する「サービスデザイナー」が、各種エンジニアやデータ戦略関係の職種などと並んで、DX推進に求められる15のロール(役割)の一つに挙げられていました。

サービスデザインとは、その名の通り、サービスをデザイン(構想・設計)するための手法や取り組みのことです。ただし、この“サービス”は、いわゆる接客のような、特定のタッチポイント(顧客接点)で提供するサービスを指す訳ではありません。また、売り物の形態が無形(コト)であるか有形(モノ)であるかも問いません。

サービスデザインにおいては、あらゆるタッチポイントがデザインの対象となります。つまり、広告などによる商品・サービスの認知に始まり、購入検討、利活用、アフターフォロー、そして最終的に廃棄や解約に至る「一連の顧客体験」がサービスデザインの“サービス”に該当するという訳です。

このように長期的かつ広範囲にわたる接点を対象とする理由は、顧客にこれまでにない革新的な価値を提供し続けるため。サービスデザインは、市場に商品・サービスが溢れ、機能やスペックだけでは差別化が難しくなった時代の、新たな新規事業創出および既存事業改善の手法として期待されているのです。

もともと欧米を中心に発展し、アメリカのアップルやコカ・コーラといった世界的な企業も導入していると言われていますが、日本では一部の大企業やスタートアップ企業の取り組みが目立つものの、まだまだ一般的に認知されているとは言い難い状況です。とはいえ、政府CIOのWebサイトで紹介されているように行政機関のサービス創出や改善においても活用が進んでおり、今後はDXの普及とともに民間企業へも広がっていくことが予想されます。

続いて、サービスデザインの特徴についてより詳しく見ていきましょう。

サービスデザイン3つの方法論

他にないサービスデザインの特徴はいくつかもありますが、『我が国におけるサービスデザインの効果的な導⼊及び実践の在り⽅に関する調査研究報告書[詳細版]』(経済産業省)という資料では、「サービスデザインの定義」という形で下記3つの方法論が紹介されています。

  • 1. 顧客中⼼の方法論
  • 2. 共創する方法論
  • 3. ホリスティック(包括的)な⽅法論

1. 顧客中⼼の方法論

一連の顧客体験を対象とするサービスデザインにおいて、顧客(ユーザー)中心の視点は欠かせません。実際にその体験に価値を見出す、あるいは価値の有無を判断するのは、企業ではなく顧客だからです。

そのためには、企業は確証バイアス(仮説や先入観を肯定する情報を集めてしまう人の傾向)を排し、あらゆるプロセスで「顧客は何に価値を見出すか」という発想を起点にした取り組みが求められます。

2. 共創する方法論

サービスデザインでは開発プロセスにおいて顧客(想定ユーザー)に参与してもらうことが推奨されています。具体的なアプローチについては次回記事で解説しますが、その目的は“顧客にとって”価値のあるサービスを提供するためです。

また、開発だけではなく、優れたサービスを“継続的に”提供し続けていくためには、パートナー企業などのステークホルダーを顧客・サービスへの“共感”を起点として巻き込んでいくことも大切な取り組みです。

3. ホリスティック(包括的)な⽅法論

あらゆるタッチポイントで価値を提供するためには、顧客視点“だけ”では不十分です。サービスデザインでは常にサービスを包括的(全的)に捉える視点とアプローチが求められます。

一般にサービスデザインにおいては、サービスは「ステージ(舞台)」に例えられ、ユーザーとの直接的な接点を「フロントステージ」、ユーザーからは直接見ることのできないバックエンドやオペレーションを「バックステージ」と呼びます。このバックステージの効果・効率を含め、サービスに関わるすべての従業員の体験(モチベーションや働きやすさ)を向上させることも、顧客体験の維持・進化には欠かせない重要な要素です。

次回の後半記事では、サービスデザインの具体的な進め方と、実際の国内企業の導入事例を紹介します。

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