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「デジタル産業宣言」に記されたDXに不可欠な5つの行動指針

『DXレポート2.2』で注目!「デジタル産業宣言」とは?<後半>

経済産業省が、〈既存産業の企業〉の〈デジタル産業の企業〉への変革を推進すべく策定した「デジタル産業宣言」。下の実際の画像を見てもおわかりの通り、まず目を惹くのは、模範的なDX推進企業への調査に基づいて選定されたという5つの行動指針です。

デジタル産業宣言

出典:『DXレポート2.2(概要)』(経済産業省 デジタル産業への変革に向けた研究会)

順に説明していきましょう。

【1】ビジョン駆動
過去の成功体験や柵(しがらみ)を捨て、自らが持つビジョンを目指す。

〈ビジョン駆動〉=ビジョンドリブンとは、あらゆる意思決定の場において、企業・事業のビジョン(将来のあるべき姿)に基づいて判断を下すようにすること。判断にブレがなくなるため局所最適化が防げる、現場レベルでの意思決定もスムーズになり、従業員の主体性とモチベーションの向上につながる、などのメリットがあります。

DXに関してはデータに基づく判断=〈データドリブン〉が重要、という認識が一般的ですが、ベースはあくまでビジョン。「既存のデータを何に活用するか?」と考えるのではなく、「ビジョンに即したビジネスを実現するためにはどんな風に活用したら良いか?」あるいは「他にどんなデータが必要か」と考えることが大切です。

【2】価値重視
コストではなく、創出される価値に目を向ける。

ここで言う価値とは、いわゆる〈顧客(ユーザー)価値〉を指します。顧客視点で今までにない体験を提供したり課題を解決したりできること。それがIT・デジタルを活用するDXの大きなメリットであり、企業において競争力の源泉となるからです。

ひと言で顧客価値といってもその種類は多岐にわたりますが、キモとなるのがデータによる顧客行動の可視化。例えばB to Bのカスタマーサポート業務の場合、顧客一人ひとりのサービス利用状況を把握することで、ニーズに合わせた提案をしたり、先回りして解決策を提示したりといった、能動的なコミュニケーションをとることができます。

【3】オープンマインド
より大きな価値を得るために、自社に閉じず、あらゆるプレーヤーとつながる。

すべてを内部のリソースのみでまかなう“自前主義”は日本企業の特徴でしたが、もはや時代遅れの風潮になりつつあります。現在のように技術の進展がスピーディーになり、市場の変化も激しくなってくると、一社の知見や技術力だけでは対応が困難だからです。

代わって有効なのが、プラットフォームなどの他社サービスの活用や、他社や外部の専門家、顧客らとアイデア・技術などの情報を交換しあえるエコシステムを構築すること。例えば、産官学共同やコンソーシアム(共同企業体)型のオープンイノベーションもその一つです。DX推進企業としても知られている旭化成株式会社や株式会社リコーも、外部との共創を目的とした施設を設立して新規事業創出などにつなげているようです。

参考:デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」について|旭化成株式会社、RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE Tokyo|株式会社リコー

【4】継続的な挑戦
失敗したらすぐに撤退してしまうのではなく、試行錯誤を繰り返し、挑戦し続ける。

言うまでもなく、新しい挑戦にトライ&エラーは欠かせません。DXの定番であるアジャイル開発やサービスデザインといった取り組みでも、“早く”“小さく”失敗し、何度も挑戦することが成功のポイントとされています。

とはいえ言葉で言うのは簡単ですが、もともと失敗やリスクを回避する傾向の強い日本企業において、こうしたマインド・チェンジは容易ではないはずです。そのためDXでは、挑戦を歓迎し、失敗を許容する組織文化の醸成も大切な施策の一つ。例えば富士通株式会社では、“挑戦や失敗からの学び”を評価するユニークな人事制度を採用しています。

参考:共感・信頼をベースとしたマネジメントへ、富士通が実践する新たな評価制度とは|富士通株式会社

【5】経営者中心
DXは、経営者こそが牽引してはじめて達成しうるという理解のもとに、その実現に向かって(全員で)積極貢献する。

DXは個別業務の効率化や個別部門の改革ではなく、全社的な変革を目指す取り組み。ミドル層以下のボトムアップも不可欠ですし、場合によっては小さく始めることも効果的ですが、本来は経営トップが手綱を握って全社一斉に実施して然るべきです。

経営者がコミットすべき領域も多岐にわたります。01のビジョンや戦略の策定はもちろんのこと、いわゆる“守り”の面、とりわけセキュリティ対策のためのリソース確保も重要な任務です。また、自社のITシステムの現状課題やIT・デジタル技術に関する最新動向を把握しておくことも欠かせません。

しかし実際は、コンサル会社や社内の推進組織、あるいは現場へ丸投げしている経営者が多いのも事実です。そうした状況も考慮してのことかはわかりませんが、この「デジタル産業宣言」は、経営者が署名とともに自らの信念や価値観を追記することを想定されています。そういった意味で、経営者自身の覚悟を示すこの最後の行動指針が、5つのうちで最も重要と言えるかもしれません。

以上、「デジタル企業宣言」に掲げられた、〈既存産業の企業〉が〈デジタル産業の企業〉へと変革するために必要な行動指針を紹介してきました。DXの進め方について悩んでいる方は、元となる『DXレポート2.2』と併せて、ぜひ目指すべき道標として活用してみてください。

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