DXで再注目の「BPM」。その理由とは?
BPMからBPA(自動化)へ
〜DXで高まる「業務プロセス」の重要性〜<前半>
BPMのおさらい
DXと聞くと、「今までのやり方を捨てて最新の手法やアプローチに刷新しなければならない」と思い込んでいる方がいるかもしれませんが、必ずしもそういう訳ではありません。それどころか、DXが普及する以前から多くの企業に定着していた定番手法が、改めてその価値を見直され、再脚光を浴びている例もあります。今回のテーマであるBPMも、その一つと言えるでしょう。
その理由を探る前に、まずはご存じない方のため、またはおさらいを兼ねて、BPMの基礎的な知識について説明します。
BPM(Business Process Management:ビジネス・プロセス・マネジメント)とは
BPMは、ビジネスにおける業務改善手法・方法論の一つです。登場したのは2000年代の初め頃。以来、それまで主流だったBPR(Business Process Re-engineering:業務改革)などに代わる手法として、日本企業でも盛んに活用されるようになりました。
では、BPRとBPMの違いは何でしょうか? どちらも“プロセス指向”という点では同じですが、BPRが顧客への価値提供プロセスを重視し、リストラや事業再編のような大規模な改革を伴うケースがあるのに対し、BPMは業務プロセス=業務の進め方や連携に着目し、その標準化と改善を進めることで全体最適化ならびに業績向上を目指します。また、BPRのようなトップダウン型ではなく、一般に現場主導のボトムアップか、ミドル層主導のミドル・アップダウン型で取り組む点もBPMの特徴の一つです。
BPMの対象となる業務は多岐にわたります。傾向としては、いわゆる定型業務・定常業務との親和性が高いとも言われていますが、それでも営業・販売から購買・調達、生産、会計、人事、さらに情報システム部門のITシステム運用管理や法務部門の契約管理など、企業活動の様々な領域で活用されています。
“継続的な改善”がBPMのキモ
そもそもBPMは、企業が加速度的に変化を続けるビジネス環境に対応していくための有効手段として注目を集めた手法です。つまり、BPMによる改善には継続性が求められるということ。そしてそのために不可欠な取り組みが、PDCAサイクルによる改善です。細かい部分は企業によって異なりますが、一般的には以下のようなステップで取り組みます。
【Plan】…業務プロセスの可視化・分析・設計
まず、「As-Is(現在の状態)」の問題点を検出・分析するために、下のような業務フロー図を描いて業務プロセスを可視化します。フロー図には、それぞれの業務担当者や作業手順(メール送信の有無や誰々に承認の印鑑をもらうなども)、業務同士のつながりなどを詳細に記します。
業務フロー図をもとにチームで問題点(ムダな工程やリソース、脱属人化できる業務など)を洗い出し、それらを解決するための「To-Be(理想の状態)」の業務フローを描いていきます。ポイントとしては、部分最適に陥らないように企業戦略と整合性のとれたプロセスを組むこと、出来る限りそれぞれの業務に定量的な目標(KPI)を設けることが挙げられます。
【Do】…実行
Planで設計した業務プロセスをチームで共有し、実行・運用します。
【Check】…分析・見直し
定期的に改善効果や新たな問題発生の有無をチェックします。チェック項目としては「所要時間」「待ち時間」「掛かった人数」「コスト」などが挙げられます。
【Action】…改善 評価・改善 行動変容
Checkで検出した課題を改善するために新たな業務プロセスを設計します。
BPMがDXにもたらすメリット
このようなPDCAサイクルとともに、BPMを効果的に進めるために欠かせないのが「BPMS(Business Process Management System/ Suite)」と呼ばれるプラットフォームです。
画像は『BIZ PLATFORM』(株式会社クレオ)より
BPMSには様々な種類がありますが、多くのBPMSに共通して実装しているのは次のような機能です。
・モデリング機能
GUI(グラフィカルユーザインタフェース)上でドラック&ドロップ操作するだけで、プログラミング知識がなくても業務プロセスモデル(業務フロー図)を作成できる機能です。プロセスの変更・組み替えにも柔軟に対応できます。
・モニタリング機能
各プロセスの進捗状況が画面表示されるため、業務が滞りなく進んでいるか、誰が何の業務をしているか、目標は達成されているかといったことを、リアルタイムで把握・共有することができます。遅れ気味の案件へのタイムリーな対応も可能です。
・シミュレーション機能
取得したデータに基づいて最適なプロセス改善案を提案したり、変更した業務プロセスの成果を分析・予測したりする機能が実装されたBPMSも登場しています。
他にも課題発見に使えるレポート機能など、業務プロセスおよびPDCAサイクルをスムーズに推進するために有効な機能が備わっており、例えば購買・調達業務で、それまで約1週間要していた発注申請業務が1日で完了するようになったという事例もめずらしくありません。
BPMが再注目されている理由
以上、BPMの概要を説明してきましたが、冒頭で述べた通りBPMが登場したのは10年以上も前のこと。その後多くの企業で活用されてきたとはいえ、なぜ今再び多くの注目を集めているのでしょうか。
もちろん、今紹介したBPMSの進化もその要因の一つですが、やはり「DXにおいての取り組みが有効である」という認識が広まってきたことが大きいと言えるでしょう。
例えば、従来のアナログ中心の業務プロセスをデジタル化する際には、事前に業務標準化の取り組みが不可欠です。また、基幹システムをクラウド環境へ移行する場合は、人とアプリケーションやテクノロジーが混在することのない最適なビジネスプロセスを常に維持していく必要があります。“SIベンダーからの脱却=内製化力の強化”を図ることができるという点でも、現場やミドル層主導で取り組むBPMは魅力的です。
特に現在のDXにおいては、次世代のBPMとして“ビジネスプロセスの自動化”を意味するBPA(Business Process Automation)というアプローチが注目を集めています。次回の後半記事で企業の取り組み事例を含めて紹介します。
以上、BPMの概要を説明してきましたが、冒頭で述べた通りBPMが登場したのは10年以上も前のこと。その後多くの企業で活用されてきたとはいえ、なぜ今再び多くの注目を集めているのでしょうか。
もちろん、今紹介したBPMSの進化もその要因の一つですが、やはり「DXにおいての取り組みが有効である」という認識が広まってきたことが大きいと言えるでしょう。
例えば、従来のアナログ中心の業務プロセスをデジタル化する際には、事前に業務標準化の取り組みが不可欠です。また、基幹システムをクラウド環境へ移行する場合は、人とアプリケーションやテクノロジーが混在することのない最適なビジネスプロセスを常に維持していく必要があります。“SIベンダーからの脱却=内製化力の強化”を図ることができるという点でも、現場やミドル層主導で取り組むBPMは魅力的です。
特に現在のDXにおいては、次世代のBPMとして“ビジネスプロセスの自動化”を意味するBPA(Business Process Automation)というアプローチが注目を集めています。次回の後半記事で企業の取り組み事例を含めて紹介します。