ここまで進んでいる、企業の「BPA(業務プロセス自動化)」事例
BPMからBPA(自動化)へ
〜DXで高まる「業務プロセス」の重要性〜<後半>
BPAの定番ITツールRPA
BPA(Business Process Automation)とは、前回紹介したBPMSやソフトウェアなどを組み合わせて、業務プロセスを自動化し、省力化・高速化する取り組みを指します。中でも、BPAの定番ITツールと呼べるほど広く活用されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。
RPAは、データの入力や照合、資料作成、検索、メール送信など、主にパソコンを使用する定型作業を自動化することができるソフトウェア型ロボット。通常、単体で使用すると個人業務の自動化が限界ですが(もちろんそれだけでも業務時間削減などの効果は絶大ですが)、BPMSと連携すれば、前後のプロセスを含めて自動化したり、万が一RPAがエラーを起こした際にスムーズに人に引き継ぎできるように業務フローを設計したりと、相乗的な効果をすることが可能です。
実際の企業でのBPMSとRPAの連携事例を紹介します。
BPMS×RPAによる受託業務自動化事例
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を中心に企業向けビジネスサービスを提供している大手電気メーカーのグループ企業では、DXを推進する中で、業務デジタル化のベースとしてBPMをスタートさせました。
まずは約2,500種類に及ぶ業務プロセスを可視化し、その中から自動化の効果が期待できる90の業務プロセスをBPMSに実装。併せて「案件管理システムから該当する注文書ファイルを検索・ダウンロードし、共有フォルダに保存する」といったルーティン業務全体をRPA連携させました。こうした取り組みにより、ムダ作業の削減だけでなく、受注手配のような毎月大量に発生する業務を平準化することにも実現できたということです。
BPMS×RPAによる住宅ローン業務自動化事例
メガバンクの一社である大手金融機関でもBPMSとRPAを導入。住宅ローンの新規受付における事前審査、正式審査、契約・実行までの一連の事務手続きを自動化するシステムを構築しています。
業務量とコストの削減、人的リソースの有効転換など様々な効果を発揮しており、特にRPAによる自動化によって従来1日以上必要としていた事前審査が最短2時間で完了するようになったことで、顧客メリットにもつながっているということです。
クラウド、IoT、機械学習――BPAで拡がる可能性
RPA以外では、APIを活用したクラウドシステムとの連携事例も目立ちます。例えばBPMSと電子契約(電子署名)SaaSを組み合わせれば、誤送信防止のために社内承認を受けた契約書のみ送信できるようにしたり、署名完了後、契約書データを特定ストレージに自動保存できるようにしたりと、契約前~後のプロセスを一気通貫で効率化することが可能です。
また近年は、センサーや様々なデバイスから収集したビッグデータをBPMSと連携することができるIoTプラットフォームも登場しています。品質管理業務であれば、設備にデータ収集用のセンサーを設置し、収集したデータを機械学習による異常検知に活用することで、異常が予測される際に自動で最適なプロセスを起動させるといった取り組みも実現できるようになります。
BPA・BPMS導入のポイント
ただし、初めてBPAまたはBPMSを導入する際に、いきなりこのような大掛かりな仕組みを構築することは推奨できません。定番はやはりスモールスタート。まずは基礎となるBPMの理解促進や手法習得、チーム作りなどを兼ねて小~中規模の業務に導入し、成功すれば複数の部門にまたがる業務などへと範囲を拡大していくのが最善策です。また、複数の業務から一つに絞る場合は、効果を実感しやすいという点で、できるだけ問題の多い業務から始めると良いとも言われています。
とはいえ、どれだけ便利なツールを使ったところで、BPMとBPAの要諦(ようてい)は着実にPDCAサイクルを回し続けること。それなしに恒常的に業務改善を続ける仕組みを作ることはできません。BPMもBPAも決して容易な取り組みではありませんが、現場がBPMという考え方を知り、実行することで、マネジメント能力や変革への意欲が向上したという声も見聞きします。
これだけデジタルによる変革の必要性が叫ばれていても、まだまだ従来のやり方に疑問を呈したり変更を加えたりすることに消極的な組織は少なくありません。そういった事情を鑑みても、やはりBPM・BPAはDXの有効な取り組みの一つと言えるでしょう。