DXで注目を集める「ロボット」最新事情
知っているようで知らない!? ビジネスにおける「ロボット」活用<前半>
ロボットを取り巻く環境変化
一定以上の年代の方なら、いまだに“ロボット”と聞くと、真っ先に『鉄腕アトム』や『ドラえもん』、『アラレちゃん』などの、漫画のキャラクターを連想する方が多いかもしれません。また、比較的若い世代でも、現実で使われているロボットといえば、世間で話題になった『Pepper(ペッパーくん)』や大手レストランチェーンの猫型配膳ロボット『BellaBot(ベラボット)』くらいしか思い浮かばない方も少なくないでしょう。しかしながら、こうしたブームとは別に、今やロボットは着実にビジネスでの活用が広がっています。
当然ながらその背景にあるのは、社会問題でもある労働力不足です。と同時に、新型コロナウイルス禍以降の“省人化”や“非接触化(遠隔)”へのニーズの高まり、さらにAI(人工知能)などの発達により、ロボット自体の性能が向上し、従来とは比べものにならないほど活躍の場が増えていることも一因と言えるでしょう。
様々な調査会社のレポートを見ても、ロボット市場は世界的に拡大を続けているようです。ロボットには大きく分けて、工場などで人間の代わりに働く「産業用ロボット」と、主にサービス業で使われる「サービスロボット」の2種類がありますが、近年はいずれも高い成長率を示しており、今後も規模拡大が予測されています。
また言うまでもなく、DXにおいてもロボットはICTやAI、ビッグデータなどと並ぶ重要な技術です。ロボットを活用したデジタル変革を意味する「RX(ロボット/ロボティクス・トランスフォーメーション)」という言葉もメディアで度々目にするようになりましたが、既に多くの企業が先進的な取り組みを推進しています。今回はそんな、ビジネスにおける様々なロボットの事例を紹介します。
製造業での“人の技術・感覚を再現する”ロボット事例
工場で使われるロボット=「決められた作業を正確かつスピーディに繰り返す機械」というのは過去の話。現在では従来のロボットでは難しいとされていた、“熟練者”レベルの技能や感覚を要する作業を代行できるロボットも登場しています。
川崎重工業株式会社が開発した、技能伝承ロボットシステム『Successor(サクセサー)』もその一つです。同製品の特徴は、実作業を繰り返す中でAIが学習してゆく「OJL(On the Job Learning)」という機能が実装されていること。従来のロボットのように、人と同じ動作をさせるためにプログラミングをする必要がありません。
『Successor』では、作業者が繰り返す遠隔操縦装置の操作データをAIが自ら学習。微妙なさじ加減の必要なバラつきの多い作業も含めて、徐々に再現=自動化できる領域を増やしていきます。作業者はイレギュラー対応など補助的な役割で済むため、かなりの省人化が期待できます。
農業での“自動で走行路を決める”ロボット事例
人手不足だけではなく、後継者不足も深刻化している農業。そうした問題を解決すべく、近年はAgriculture(農業)とTechnology(技術)を組み合わせた“AgriTech(アグリテック)”という言葉も生まれ、ドローンを含めて様々な形でロボットの導入が進んでいます。
株式会社クボタは、2017年に有人監視下において無人自動運転作業を実現するロボトラクターの販売を開始しました。人間の監視が必要ではあるものの、GPS(全地球測位システム)を活用しており、道路や目印のない圃場(田や畑)でもロボット自ら位置情報を取得して走行ルートを決定することができます。
他にもレーザー光を使って離れた場所にある物体の形状や距離を測定する技術や、超音波の反射を利用して距離を測定する技術など、人や障害物を検知する機能も装備。同社は2023年6月にも、世界初となる無人自動運転で穀物の刈り取りや脱穀をおこなうコンバインのデモ走行を実施しており、そこでは熟練者と同等レベルの刈り取り作業の自動化を実現しています。
ビジネスでのロボット活用事例はまだまだこんなものではありません。後半記事では、ビジネス用ロボットの常識を覆すようなユニークな事例も併せて紹介します。