DXにおいてKPIやPDCAよりも効果的な指標とは?
必見!こんな企業はDXに失敗する~DX導入前に知っておくべきNGポイント3選~<後半>
NGポイント② 社内にDX人材がいない
前回から引き続き2つ目のNGポイントは、実際にDXを推進する人材がいない、あるいは不足していることです。とりわけ非IT企業においては深刻な問題ですが、ビジネスにおけるあらゆる施策と同様、DXも適した人材なしに成功はありえません。
とはいえ、単にITやデジタル技術に精通した人材を集めるのもNGです。DXは経営戦略に直結する施策。たとえITの経験が豊富でも、保守や運用など「守り」のスキルだけでは活躍が期待できないからです(もちろんセキュリティ自体が重要であることは言うまでもありません)。
DX人材に必要とされるスキルは大きく二つあります。IoTやAI、ビッグデータ分析、ソーシャル、モバイルなどの最先端テクノロジーに関するスキルと、プロジェクトマネジメント力や企画力といったマーケティングにも関わるビジネススキルです。後者については、開発を内製化できない場合は外部とのコミュニケーションスキルも必須でしょう。
ただし、業種や企業規模にもよりますが、これらのスキルを完璧に備えた人材を社内でゼロから育成するのは現実的ではありません。IT企業ならスペシャリストを集めたチームで対応するか、それ以外なら外部から登用するのが妥当でしょう。
実際、2019年にヤフー前会長をCDO(最高デジタル責任者)に任命した東京都を始め、DXに関するノウハウが乏しい地方自治体では外部人材の登用が進んでいます。もしくは、DXを推進するために最低限必要な知見――目的を達成するためにはどんな技術が必要で、どのようなパートナーと組めばよいか――を持っているジェネラリストを採用するか育成し、協力会社と共同で進めるのも一策です。
また、採用や育成だけでなく、一度確保した人材の流出を防ぐことも重要です。社内でのDX人材のマネジメント方法については「DXタレントマネジメントに必要な従業員体験(EX)について考える」の記事を参照してください。
NGポイント③ 最初から全面的にDXを始めようとする
繰り返し申し上げている通り、DXは企業に根底からの変革を促すものです。しかし、それはあくまで最終的な姿であって、最初からすべてのシステムを変える必要はありません。常識的に考えて、基幹システムを刷新して安定稼働させるためには数年は必要ですし、特に中小企業においては、小さく初めて段階的にアプローチするのが一般的だからです。
その「DXはじめの一歩」としておすすめなのが、RPAやAI-OCR、BPMツールなどの業務自動化ツールの導入です。簡単に説明すると、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は資料作成や検索といったパソコンでの定型作業を自動化するツールで、AI-OCR(オプティカル・キャラクター・リーダー)は請求書やFAXなど紙文書の文字を読み取ってデジタルデータ化するツールです。
BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)ツールは業務改善のためのソフトウェア。「業務を見える化」して課題を洗い出したり、同じ企業でも拠点によってプロセスの異なる業務を標準化して改善に結び付けることができます。何よりDXを推進する上で、複雑化・ブラックボックス化した業務を集約・標準化するのは基礎中の基礎。そういう意味でも、DXに必須のITツールの一つと言えるでしょう。
それぞれ個別に導入しても効果的ですが、3つのソリューションを連携させることで相乗効果を生むことができます。例えば経理の請求処理業務の場合、それまで人の手で行っていた請求内容のデータ化、システム入力、突合作業をほぼ自動化でき、業務に関わる承認フローも見える化・標準化することが可能です。
もちろん、こうしたスモールスタートにおいても、最初からすべてが上手く進むとは限りません。トライ&エラーは必要です。ちなみにDXを推進している企業では、目標管理指標として一般的なKPI(重要業績評価指標)ではなくOKR(目標と主要な結果)、意思決定サイクルとしてPDCAではなくOODAを採用しているところもあります。
OKRは全体目標から逆算して設定する指標で、企業やチームと個人の目標にズレが生じないのが特徴。OODAは「観察」「情勢(状況)判断」「決定」「行動」の略で、「決定」というフェーズが入っていることからもわかるように、PDCAよりも主体性が求められます。この2つの例からも、DX成功には、現場レベルにおいても「自分事化」が不可欠であることがわかるかと思います。
以上、2回に渡り3つのNG例を紹介してきました。DX成功にはある程度の時間が必要です。しかしその成果は計り知れません。今回の記事を参考にして、ぜひ根気よく取り組んでください。