構造化データと非構造化データの活用事例
構造化データと非構造化データ
~メリット・デメリット・事例について~<後半>
前回は、構造化データと非構造化データの概要とメリット・デメリットについて解説しました。今回は、それぞれの活用事例について紹介します。
構造化データの活用事例
構造化データは、前回述べた通り、通常、行と列で構成され、データが特定の形式やフィールドに整理・配置されているデータです。以下に、実際の構造化データの活用事例を紹介します。
ビジネスインテリジェンス(BI)
企業は構造化データを用いて、売上・財務・顧客などのデータを分析して経営に繋がるビジネスインテリジェンスを得ます。これにより、マーケットトレンドの分析、意思決定のサポート、戦略決定の最適化が可能となります。
顧客管理(CRM)
企業は通常、顧客情報を管理します。構造化データを利用して顧客に関する、購買履歴・連絡先情報・サポート履歴などが管理され、マーケティングや顧客サポートを管理・改善します。
販売管理
販売管理では、商品・サービスの注文・在庫・支払い情報データなどをベースに、注文の追跡、在庫管理、売上予測など行われます。これには構造化データが活用されます。
生産・サプライチェーン管理
製造業では、製品の生産データ、品質管理データ、サプライチェーンの構造化データを分析し、生産効率の向上やリードタイムの短縮を行います。
人事管理と人材分析
企業は構造化データを使用して、人事情報、給与データ、教育・研修受講データなどを管理し、人材戦略や人事計画を効果的に策定し、経営に役立てます。
これらの例は、構造化データが企業の根幹をなす基幹業務で活用され、業務プロセスの最適化や経営判断などに貢献していることを示しています。また、構造化されたさまざまなデータによる定量的かつ正確な分析は企業にとって重要な資産となります。
非構造化データの活用事例
非構造化データは、特に新しい技術である、画像・動画認識、機械学習、自然言語処理、などを活用して分析することで、有益な情報を引き出すことが可能です。以下に、非構造化データの活用事例をいくつか挙げてみます。
画像認識と分類
・医療分野では、X線画像から異常を検知するシステムが開発されています。医師が見落しかねないX線の繊細な画像からも、機械学習を使った画像認識技術を使うと、正確に病理を発見でき、早期の病気の対応や治療計画の立案が可能になります。
・製造業においては、製品の画像から欠陥・不良部分を検出し、自動的に品質を管理するシステムが利用されています。
動画解析
・セキュリティ分野では、監視カメラの映像を解析して異常な動きや不審者を自動的に検知するシステムが活用されはじめています。これにより、自動かつ早期のリスクヘッジが可能になります。
・マーケティング分野では、購買者の行動を、動画解析を通じて把握・分析し、スーパーの棚の配置を変えたりして、マーケティング効果を発揮します。
SNS分析
SNSのコメントやレビュー、カスタマーサービスのチャットログなどのテキストデータを分析して、ユーザーの感情や意見を把握することができます。これにより、企業は製品やサービスの評判を把握し、フィードバックに基づいて改善策を検討します。これらのテキストデータは非構造化データですが、マイニングなどの技術を使って分析します。
自然言語処理を用いた情報抽出
自然言語処理は、非構造化データである大量のテキストデータからキーワードやトピックを抽出し、情報検索やトレンド分析を可能にします。
・法律分野では、契約書や法的文書の中から特定の条件や重要な条文を、機械学習を用いて抽出し、リーガルリサーチを効率化しています。
・メディアやニュースサイトでは、大量の記事からトピックの抽出や傾向の分析を行い、最新のトピックを提供するために活用されています。
これらの事例は、非構造化データの活用が様々な分野で進んでいることを示しており、非構造化データの価値が向上しているといえます。
まとめ
近年、機械学習や画像・音声処理を得意とするディープラーニング技術の進化にともない、非構造化データの活用が劇的に進んできました。また、一昨年ころから出現した生成AIはさらに大規模な非構造化データを学習することにより、今までになかったようなコンピューターと人との自然な会話を生み出しています。今後、非構造データの活用には要注目です。