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DX企業から自治体まで!BtoCの「ファン作り」事例

IT・デジタルを活用した、企業・自治体の「ファン作り」事例<後半>

ユーザー交流プラットフォームを活用したファン作り事例(株式会社カインズ)

ホームセンター業界最大手の株式会社カインズは、デジタルによってこれまでにない購買体験を次々と創出し、売上を伸ばしている小売DXの先進企業。同社のファン作りのプラットフォームとなっているのが『Cainz DIY Square』というファンコミュニティサイトです。

『Cainz DIY Square』の特徴を一言で言うと、DIYを楽しむ人たちのコミュニケーションの場。会員登録したユーザーはオリジナルのDIY作品の写真や作り方を自由に投稿でき、他のユーザーは「いいね」やコメント投稿などのリアクションをおこなえます。

他にも、ユーザー同士で気軽にトークしたり、DIYに関する疑問や悩みを同社社員から選ばれたユーザーサポート役(DIYキャプテン)に相談したりすることも可能です。店舗で開催されるワークショップのお知らせなど、オフライン交流への導線も設けられています。 

なお、サイト内のアクションやワークショップへの参加に応じてポイントが付与されるものの、会員ランクとそれに合わせた特典に反映されるのみで、商品購入には使用できません。サイト上で投稿数やリアクションの数を見るだけでも交流の活発さが伝わってきますが、こうした極力宣伝を排した仕組み作りも、コミュニティ活性化と顧客ロイヤリティ向上に欠かせない姿勢と言えるでしょう。

参照:デジタル戦略|株式会社カインズ
参照:DIYコミュニティ「Cainz DIY Square」が本格的にスタート|株式会社カインズ

アンバサダーマーケティングによるファン作り事例(株式会社ワークマン)

作業服・作業用品販売の専門店を全国にフランチャイズ展開する株式会社ワークマン。同社は徹底したデータ経営をおこなうDX推進企業、また熱狂的なファンを多く持つ企業としても知られています。

そんな同社のファン作り施策が「アンバサダーマーケティング」。アンバサダーとは観光大使などに使われる「大使」を意味し、コアなファンが企業に代わってSNSなどで製品・サービスについて情報発信することで、新たなファンを増やす手法を指します。ただし、同社の場合、最初から戦略的に始めた訳ではありませんでした。

きっかけは、あるキャンプ愛好家の女性ブロガーが同社の溶接工用作業着を「焚き火用のアウトドアウェアに最適」とブログに投稿したところ、完売したことでした。それを知った同社がコンタクトを取り、アンバサダー第1号に任命。共同開発した女性・キャンプファン向けのリメイク商品が大ヒットしたり、情報発信によりSNSで『#ワークマン女子』というハッシュタグが広まったりするなどして、一気にファンがていったのです。

アンバサダーマーケティングの効果を実感した同社は、その後SNSやYouTubeから自社製品のヘビーユーザーをスカウトする取り組みを開始。2023年5月時点で公式アンバサダーは約50名までに増えており、それぞれ活動範囲は異なるものの、無償で商品の共同開発やSNS・YouTubeでの情報発信などに取り組んでいます。アンバサダーとの開発製品はヒット率が高く、現在は全PB品の1/3を占めているということです。

参照:【上場企業初!!】 カリスマインフルエンサーがワークマンの社外取締役に就任 YouTuber/ブロガー「サリーさん」は当社初のアンバサダーで#ワークマン女子店の生みの親|株式会社ワークマン
参照:WORKMAN公式アンバサダーのご案内|株式会社ワークマン

スマートフォンアプリを軸にしたファン作り事例(カルビー株式会社)

2019年にDX推進委員会を立ち上げ、本格的にDXをスタートさせたカルビー株式会社は、ファン作りにおいても積極的にデジタルを活用しています。その中核となっているのが、2020年9月にリリースしたスマートフォンアプリ『カルビー ルビープログラム』です。

『ルビープログラム』の内容は、ユーザーが商品のパッケージを捨てる際に、ゴミ嵩(かさ)を減らせる折り方で畳(たた)み、その画像をアプリでスキャンするとポイントが付与されるというもの。貯めたポイントは、商品キャンペーンや「じゃがいも収穫体験」などのイベント参加、環境保全活動の寄付などに使用できます。

アプリはオフライン交流への窓口にもなっており、2023年9月にはアプリ上で参加者を募ってファンミーティングを開催。リニューアル商品の先行試食や、同社公式X(旧Twitter)アカウント上で投稿する商品PR文を考えるグループワークなどでファンとの交流を深めています。

メーカーということもあり、これまで不特定多数向けのマーケティングが中心だった同社にとって、このようなアプリの開発は未知への挑戦だったそうですが、今や顧客一人ひとりと直接つながるプラットフォームとしてファン作りに欠かせない存在になっているようです。

参照:「つながるDX」~DXは目的ではない。課題解決の手段である~|THE CALBEE
参照:お客様をリアルに感じたい。カルビー初のスマートフォンアプリ開発の裏側|THE CALBEE
参照:『ポテトチップス のりしお ファンミーティング』を開催(カルビー株式会社)

デジタル通貨を活用したファン作り事例(岐阜県飛騨市)

ファン作りが必要なのは民間企業だけではありません。人口減少が進む中、関係人口(移住・観光目的ではなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々)の増加を目的にファン作りを推進している地方自治体も増えています。そのうちの一つ、岐阜県飛騨市はデジタル技術を活用した様々な取り組みで注目を集めています。

2017年に立ち上げた『飛騨市ファンクラブ』というファンコミュニティでは、会員にプリペイド型電子マネー『楽天Edy』機能付きの会員証を発行。飛騨市を訪れた際に市内の宿泊施設や飲食店で割引や特典を受けられる他、カードを使って買い物をすると、利用額の0.1%が「企業版ふるさと納税」として飛騨市に寄付される仕組みを構築しました。

2024年3月には、飛騨地域限定の電子地域通貨『さるぼぼコイン』を活用し、同市を訪れた方がアプリからふるさと納税をすると、すぐに現地での支払いに使えるポイントが付与されるという新たな取り組みをスタート。ちなみに『さるぼぼコイン』は、ファンクラブ会員が地域の困りごと解決の手伝いに参加できる『ヒダスケ!』というイベントの参加報酬としても利用されています。

他にもメールやSNSでの情報発信、クラウドファンディングによる資金調達など、地域外の方に向けた取り組みを継続。その結果、2024年1月時点でファンクラブ会員は1.3万人を突破(飛騨市の人口は約2.2万人)。ふるさと納税も2018年以降右肩上がりで増加しており、2023年度は寄附受入金額20.3億円、寄附申込件数13万件と、いずれも過去最高を更新しています。

参照:47都道府県民による「飛騨市ファンクラブ」、6年で会員数1万人へ。ベンチャー市役所が挑む、関係人口増加への道|岐阜県飛騨市
参照:「さるぼぼコイン」を活用した「飛騨市旅先ふるさと納税」がスタート|飛騨市

以上、2回にわたって「IT・デジタルを活用した、企業・自治体のファン作り事例」を紹介してきました。ファン作りとは、端的に言うと製品や会社を「好きになってもらう」こと。そのためには時間も手間も掛かります。とはいえ、DXと同様、今後長期的な競争優位性を確保するためには避けて通れない課題であり、実際に取り組む企業も今以上に増えていくはずです。

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