BtoB、採用、社内教育 — 広がる「動画」活用事例
デジタル時代のビジネスに欠かせない「動画」活用法<後半>
BtoBマーケティングにおける動画活用事例(1)
一般にBtoBの商品・サービスの多くは、BtoCよりも専門性が高く、言葉による説明だけでは簡単に良さを理解してもらいにくい傾向があります。そういったことからも、実際の利用シーンを視覚的・直感的に把握しやすい動画はBtoBのマーケティングに適していると言えます。
主に商品・サービス紹介サイトやランディングページなどで活用されているのが、デモ(実演)動画です。例えば、企業のDX推進を支援している株式会社クレオでは、自社サービスであるAI型OCR『CREO-OCR』のデモ動画をYouTubeで配信。AI型OCRは一般に「従来のOCR技術にAIエンジンを組み込み、読み取り精度を大幅に向上させたOCRサービス」と説明されますが、それだけではイメージしづらいため、下のように実際の画面を見てもらいながら操作方法を紹介しています。
CREO-OCR デモンストレーション|株式会社クレオ
BtoBマーケティングにおける動画活用事例(2)
前回BtoCマーケティングの活用事例でも取り上げましたが、BtoBのマーケティングにおいてもユーザーインタビューは重要なコンテンツです。キャノングループのキャノンマーケティングジャパン株式会社でもYouTube公式チャンネルで顧客インタビュー動画を配信しており、「サービス導入前の課題」「導入の決め手」「導入後の成果」を、数字や具体的なエピソードとともに効果的に伝えています。
導入事例インタビュー:濃飛倉庫運輸株式会社【キヤノン公式】
BtoBマーケティングでは、他にもプレゼンテーションや、リアルタイムまたはオンデマンド配信のウェビナー(Webセミナー)で動画が活用されています。
採用活動における動画活用事例(1)
採用活動で動画を活用するメリットとしては、「ミスマッチや入社後ギャップを減らせる」、「(クリエイティブの質次第では)動画きっかけで興味喚起や認知拡大につながる」といったことが挙げられます。
採用動画の一般的な内容は、事業紹介、オフィス紹介(オフィスツアー)、業務紹介、社員へのインタビューや座談会など。JAL(日本航空株式会社)の採用情報サイトでは、「先輩社員の1日」として、部署ごとに1人の社員にフォーカスした動画を配信しています。空港業務に馴染みの薄い求職者にとって、入社後の働く姿をイメージしやすい動画になっています。
先輩社員の1日|JAL AIRPORT RECRUITMENT
採用活動における動画活用事例(2)
ユニークな採用動画活用で話題を集めているのが、三和交通株式会社です。首都圏でタクシー事業を展開する同社は、人材獲得を目的に、まずは若年層の認知度を向上させるべくSNS『TikTok』への動画投稿を開始。と、ここまでなら決して珍しくはありませんが、その動画の内容というのが、役職者の年配男性2人が音楽に合わせて全力で踊るという、他に例を見ないものだったのです。
【タクシー会社】TikTok総集編 No.5【公式アカウント】|三和交通チャンネル
そのギャップが大反響を呼び、「#踊るおじさん」というハッシュタグとともに動画の認知は一挙に拡大。さまざまなメディアで取り上げられ、人気ダンス&ボーカルグループ『DA PUMP(ダ・パンプ)』とコラボするようになるまでに活躍の場を広げていきます。
そして何より重要なのは、新卒採用の応募者数が増加するなど、本来の目的である人材獲得に効果が表れていること。話題性を狙ったコンテンツがしばしばネット炎上のような逆効果を招いてしまうことや、話題性とビジネスでの成果が必ずしも一致しない例が多いことなどを考えると、同社の採用動画は稀有(けう)な成功事例と言えるかもしれません。
参照:TikTokで大人気となった“踊るタクシーおじさん”誕生秘話、採用活動に効果も!|TikTok Japan【公式】
社内広報・インナーブランディングにおける動画活用事例
ここまでは顧客や求職者などを対象とした社外向けの動画を紹介してきましたが、大企業では、情報共有やコミュニケーション強化、従業員エンゲージメント向上などを目的として、社内向けに動画を活用している企業もあります。
例えば、株式会社ゆうちょ銀行では、2022年4月にWeb化した社内報に動画を掲載。ロールモデルとなる社員や各組織の紹介、経営層の声を現場に浸透させるための社長・役員からのメッセージなどの動画コンテンツを、定期的に配信しています。
他にも、3万人を超える社員が在籍する大手航空会社では、社内向け動画専用のポータルサイトを開設。ゆうちょ銀行と同じくトップや役員からのメッセージ、業務マニュアル、さらに業務への相互理解を深めるための部署をまたいだ社員対談などのコンテンツを、ライブとオンデマンド(録画)を使い分けて配信しています。動画数は1,000を超え、「いいね!」を付けられようにするなどの工夫の甲斐もあって社員からのアクセスも活発。情報共有やインナーブランディングに役立っているということです。
社内教育・人材育成における動画活用事例
社員の教育・育成にも動画は活用されています。動画には時間と場所を選ばない、何度でも見返すことができるといったメリットがありますが、とりわけ有効なのは、いわゆる勘や経験がモノをいう、マニュアル化=言語化が難しいノウハウの教育への活用です。
岡山県で自動車部品用金型を製造しているN社が抱えていた課題が、ベテラン社員の技術継承でした。その解決のために同社が導入したのは「スマートグラス」。レンズ面に文字や映像を映し出したり、レンズ越しに見ているものを写真・動画で撮影したりできる、メガネ型のAR(Augmented Reality:拡張現実)デバイスです。
スマートグラスにはさまざまな活用法がありますが、同社ではベテラン社員と若手社員がスマートグラスを装着し、それぞれの作業中の視点を動画で記録。その後、動画を見比べ、判断や作業の違いを確認するなどして、若手社員の技能習得に役立てているということです。
今回は2回にわたって目的別にさまざまな企業の動画活用事例を紹介してきました。前半記事でも述べたように、動画はデジタル時代のビジネスに欠かせないメディア。今後もさらに活用する企業が増えていくことは間違いないでしょう。