SFプロトタイピングによるマイナンバー未来予想(後編)
マイナンバーの未来予想
~SFプロトタイピングによる20年後のマイナンバー~<後半>
前回は、マイナンバー制度の現状とマイナンバーの未来(前編)を、SFプロトタイピング手法を使って年代ごとに描いてみました。今回は、引き続きマイナンバーの未来(後編)を同様の手法で描いた内容を解説します。
今回は、前回の2030年頃2035年頃に続き2040年頃2050年頃の未来をSFプロトタイピング手法により描いてみます。
2040年頃:ブロックチェーン技術によるデータ管理の進化
2040年頃には、マイナンバーはブロックチェーン技術と統合され、個人情報の管理や取引履歴がガラス張り化され、改ざん不可能なシステムに進化します。ブロックチェーン技術により、マイナンバーに関連するすべてのデータ(住民台帳、納税履歴など)に加えて医療記録、教育履歴、職務経歴なども、分散型のデジタル台帳上で管理され、データの安全性が確保されるようになります。
ブロックチェーン技術は、個人情報が第三者によって無断でアクセスされたり、データが改ざんされたりするリスクを排除します。データへのアクセスや変更の履歴はすべてブロックチェーン上に記録され、透明性が確保されるため、個人のデータがどのように利用されているかを把握できる仕組みが整います。
住民台帳や納税履歴はもちろんのこと、たとえば医療機関でも、患者のデータが異なる病院間で瞬時に共有され、適切な医療サービスを迅速に提供することが可能になります。また、職務履歴を使う、人材採用などのプロセスでは、応募者が提出した学歴や職歴がブロックチェーン上で自動的に検証され、提出した職歴データの信憑性も確認できます。
2050年頃:スマートシティとマイナンバー
2050年頃には、スマートシティ(都市のデジタル基盤)の中でマイナンバーが重要な役割を果たす未来が見えてきます。スマートシティでは、都市全体が都市のOSやIoTセンサー、AIなどに接続され、すべてのインフラやサービスが最適化されたデジタル空間となります。ここではマイナンバーは、スマートシティのさまざまなサービスへのアクセスキーとして機能します。
スマートシティでは、住民情報に加えて、医療、教育、公共交通機関、エネルギー供給など、あらゆる分野でマイナンバーを通じて住民のデータが活用され、個々のニーズに応じた最適なサービスが提供されます。たとえば、緊急時の安否確認や避難誘導、エネルギー消費の管理、通勤ルートの最適化など、マイナンバーと連携した新しいシステムにより、都市生活が効率化されます。
このスマートシティの実現により、都市は一層便利に住みやすい街になるでしょう。都市計画やエネルギー管理など、従来の手作業や官僚的なプロセスが大幅に効率化され、中長期的に都市が成長するとともに、住民は安心してより豊かな生活を送ることができるようになります。
利便性とプライバシーのバランス
未来のマイナンバーが進化する中で、最大の課題となるのは「利便性とプライバシーのバランス」です。マイナンバーが広範囲にわたるデータを扱うことで、個人の行動や生活が監視されているのではないか?という懸念も生まれます。
市民の個人情報が広く利用される一方で、その情報の利用がどのように管理されるかが重要な課題となります。透明性を確保しつつ、個人のデータが悪用されないような法律や制度、システムが求められます。また、個人が自分のデータに対する管理権限を保持し、情報の利用や共有に関して自ら意思決定でき、悪用されない仕組みが必要です。
利便性の向上とプライバシーの保護という二律背反の問題は、今後も重要な議論となり、マイナンバー制度の未来への進化においては大きなテーマとして残るでしょう。
まとめ
マイナンバーは、未来社会においてデジタル化の進展に伴い、より重要な役割を担うことが期待されます。完全デジタル化、生体認証、ブロックチェーン、スマートシティといった技術との融合により、私たちの生活はより便利で効率的なものとなり恩恵をもたらします。プライバシーやデータ管理の課題をしっかりと克服していけば、ここで描いた未来もより身近になっていくといってよいでしょう。