今年はコレ!2025年のDXトレンド&注目キーワード〈後編〉
【新年特別企画】2025年のDXトレンド&注目キーワード
いよいよ後編。今回も2025年のDXトレンドと注目キーワードを4つ紹介します!
〈5〉リテールメディア
リテールメディアは、小売(リテール)企業が自社メディアをメーカーやブランド企業に広告媒体(枠)として提供するサービス及びビジネスモデルです。一般的にECサイトやスマホアプリ、店舗のデジタルサイネージなどが使われており、広告主は小売企業が保有する顧客データを活用して広告やクーポンを配信することができます。
リテールメディアの全体像(イメージ)
広告主にとってリテールメディアのメリットは、競合ユーザーを含めた膨大な消費者に向けて高精度の広告配信をおこなえること。小売企業が有するECデータや店舗ID-POSデータなど、顧客IDが紐づいた購買データを活用できるので、セグメントごとや1人ひとりに最適化した配信も可能です。かたやプラットフォーマーである小売企業側には、広告収入という新たな収入源を確保できるというメリットがあります。
アメリカではデジタル広告の「第三の波」と呼ばれるほど注目を集めており、中でも小売世界最大手のウォルマートが成功事例として有名です。日本でも家電量販大手の株式会社ヤマダホールディングスやコンビニ大手の株式会社セブン-イレブン・ジャパンの取り組みが広く知られています。
〈6〉AGI
まだ開発途上ながら、生成AIに続く次世代AIとして注目を集めているのがAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)です。
AGIはいわゆる「強いAI」に分類されており、既にビジネスで実装が進んでいる「弱いAI」のような特定用途(チャットや画像認識など)に特化したAIと違い、さまざまな分野の業務を人間と同等かそれ以上に処理することができると言われています。
AGIのもう1つ大きな特徴が、自己学習能力を持ち、AI自身で進化していくことが可能なこと。実現時期については専門家の間でも意見が分かれているものの、早ければ2027年あるいは2029年とも言われています。AIに関しては倫理面を含めたさまざまな課題が山積みですが、実現すれば生成AI以上のインパクトをビジネス及び社会に与えることは間違いないでしょう。
〈7〉SX
SXは「Sustainability Transformation」の略称です。提唱者である経済産業省のWebサイトでは、「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取組」と定義されています。
よりわかりやすく、「社会と企業のサステナビリティ(持続可能性)の両立を目指す取り組み」と言い換えても良いでしょう。気候変動を始めさまざまなサステナビリティ課題が顕在化し、企業に社会的責任や社会課題解決が強く求められるようになった現在、価値向上及び存続のための避けて通れない課題として注目を集めています。
SXの具体的な取り組みとしては、環境性能の高い商品開発、カーボンニュートラル、サプライチェーンの透明化、スマートファクトリーの導入などが挙げられますが、基盤となるのはDX。経済産業省と東京証券取引所が選定した『SX銘柄2024』でも名だたるDX推進企業が選出されており、デジタルやデータを活用した経営・事業変革の取り組みが評価されています。
〈8〉2025年の崖
ご存じの通り、経済産業省が『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』で提唱し、DXの必要性が広まるきっかけともなったキーワードです。2025年に多くの企業が基幹系システムの老朽化・複雑化やIT人材不足などの危機に直面し、日本経済に大きな損失が生じるとする問題を指します。
同レポートの発表は2018年。それから7年が経ち、ついに今年、その2025年を迎えたという訳です。とはいえ、「まだまだ先のことだから」と後回しにして、まだ何も手を付けていない企業も少なくないのが実情でしょう。
唯一の救いと言えるのが、多くの企業が基幹システムとして利用している『SAP ERP 6.0』(ECC 6.0)の標準保守期限が2027年まで延期され、2年の猶予が生まれたこと。ただし、システムに関するプロジェクトはなかなかスムーズに進まないため、楽観視はできません。
そこで次回、2月の記事で、改めて「2025年の崖」から落ちないために必要な取り組みを紹介します。自社の状況に少しでも不安を抱えている方は是非チェックしてください。
以上で「2025年のDXトレンド&注目キーワード」の紹介は終わりです。何か気になる技術やトピックはありましたでしょうか? 今年も『DX-labo』ではDXに役立つ情報をわかりやすくお伝えしてまいります。また、これまでもさまざまなテーマを取り上げていますので、ぜひ過去の記事もご覧ください。
それでは本年も『DX-labo』をどうぞよろしくお願いいたします!