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AI実利用時代での「対策」と「事例」

AI実利用時代での「留意すべきリスク」「今後の課題」とその対策・事例
~AI社会の未来を守る~<後半>

前回は、AI実利用時代での「留意すべきリスク」「今後の課題」について解説しました。今回は、その対策を技術と法的・規制的対策に分けて解説し、最後に最新事例について紹介します。

技術的対策

データの取り扱いとプライバシー保護

AIを運用するためには膨大なデータが必要ですが、その中には個人情報や機密情報が含まれることが多いため、データ管理の厳格化が求められます。

<データの暗号化>

今でも行われている通信中や保存時でのデータの暗号化を徹底し、不正アクセスや漏洩を防止する。

<匿名化>

個人情報を匿名化または仮名化することで、特定の個人を識別できないようにする。

<アクセス制御>

データにアクセスできる権限を厳格に管理し、必要最低限の人のみがデータを扱えるようにする。

生成AIのハルシネーション抑制

生成AIがハルシネーションを生成するリスクを軽減するための以下のような対策が必要です。

<ファクトチェック機能の実装>

AIが生成した内容が正しいかどうかを、データベースや外部情報源と照らし合わせて確認する仕組みを導入する。

<モデルの監査と再学習>

定期的にAIモデルを監査し、誤情報が多い場合には追加学習やモデルの修正を行う。

<出力内容の信頼度表示>

生成されたコンテンツに対し、信頼度スコアを付与し、ユーザーが結果を判断しやすくする。

ディープフェイクの検出と防止

ディープフェイクの悪用を防ぐために、高精度な検出技術の導入が不可欠です。

<AIベースの検出システム>

偽造映像や音声を識別するためのAI技術を活用し、微妙な違いや不自然な動きを検出する。

<デジタル透かし技術>

正規のコンテンツにデジタル透かしなどを埋め込み、改ざんされた場合に識別できるようにする。

法的・規制的対策

<プライバシー保護とデータ利用の規制整備>

AIが扱うデータの範囲や利用方法について、法的な枠組みを整備し、プライバシー侵害を防ぎます。

<GDPR(EU一般データ保護規則)対応>

データ収集や利用に関する透明性や個人の同意取得、データ削除の権利を保証する。

<データ保護法の強化>

各国で個人情報保護法を整備し、データ漏洩時の罰則強化や企業の責任を明確化する。

<AIの責任と倫理に関する枠組みの整備>

AIが関与する意思決定や生成物に対する責任を明確にし、倫理的な利用を推進します。

<AI利用ガイドライン>

企業や業界ごとにAIの利用に関するガイドラインを策定し、公平性や透明性を担保する。

<AIの責任所在の明確化>

AIが事故や問題を引き起こした際、開発者、運用者、利用者の責任範囲を明確にする法制度を整える。

最新の事例

OpenAI:ファクトチェック機能の強化

OpenAI社は、生成AIモデルであるChatGPTのハルシネーションを抑制するため、モデルのトレーニングデータの品質向上や、出力内容のファクトチェック機能を強化しています。

富士通:ディープフェイク対策

富士通は、2024年10月、国内の主要な学術機関や企業と連携し、世界初の偽情報対策プラットフォームの構築を開始しました。 この取り組みは、生成AIや合成コンテンツによる偽情報の流通が社会問題化する中、ディープフェイクを含む偽情報の検知から根拠収集、分析、評価までを統合的に行うことを目指しています。

日本政府:AI事業者ガイドラインの策定

2024年4月、経済産業省と総務省は「AI事業者ガイドライン」を策定しました。このガイドラインは、AI開発者、提供者、利用者が留意すべきポイントをまとめ、国内企業に共通のAI倫理を浸透させることを目指しています。

欧州連合(EU):AI規則の導入

EUは2024年に「EU AI規則」を発効し、違反企業に対して全世界売上高の一定割合の制裁金を課す仕組みを整えました。この規則はEU域内で活動する企業だけでなく、海外企業にも適用されます。

まとめ

AIの実利用時代において、私たちは技術的な利便性とともに新たな課題にも向き合わなければなりません。ハルシネーション、ディープフェイクの悪用、プライバシー侵害、AIの責任と倫理などのリスクは、AIの広がりとともに増大しています。

しかし、国内外での具体的な取り組みや対策は着実に進んでおり、安全で信頼できるAI活用の基盤が徐々に築かれつつあります。AIを管理・抑制するばかりではなく、AIを監視するAIの開発や一定のルールを設定し、世界共通で順守するといったことで、AIの利活用をさらに進めることができるようになると、AI社会の未来はさらに明るくなるといってよいでしょう。

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