<Flutter攻略への道・開発基盤の構築>第4回 部内ポータル構想
デベロッパーズ・インサイト「最新技術の実践レポート」
部内ポータルアプリの機能開発
第1回から3回までは、次世代モバイルアプリの開発基盤構築プロジェクトとして、Flutterをつかった開発基盤の構築についてご紹介してきました。第4回では、より最適な開発環境とするために、部内の情報共有ポータルアプリとしての機能開発について触れたいと思います。
背景
私たちの開発部はWebアプリケーションやスマートフォンアプリの受託開発を行っておりますが、テレワークが基本となった現在では、メンバー同士のコミュニケーションに不足を感じることがあります。そこで、これまでに構築してきたモバイルアプリ開発基盤上に開発メンバー同士の情報共有ポータルとしての機能を開発します。テレワーク主体の働き方を支援するために実際にどんなコミュニケーションツールにすることを目指しているのか、設計思想をご紹介します。
設計思想
部内ポータルアプリとして重要なことは、リモート環境でも一体感を保ちながら業務を進められるようにすることです。そのため、組織情報の管理、グループ機能、チャット、スケジュール管理、Push通知など、多様な機能を組み合わせる必要があります。そこで、共通基盤の機能を活用するものと、共通基盤上のアプリケーション機能として開発するものを組み合わせて、部内ポータルアプリを開発していくことにしました。
イメージ:開発基盤とアプリケーション機能の関係(第2回より転用)
<重視したポイント>
・ノウハウの共有(目的:常に知見を共有する)
・リソース管理 (目的:他プロジェクトも含めたリソースを把握する)
・簡便な機能追加(目的:素早い機能追加やカスタマイズに備える)
これらの3つのポイントをおさえることで、単に開発作業に対するユーザー体験向上だけでなく、継続的なメンテナンス・機能追加要望への柔軟な対応や、複数プロジェクトに対して最適なリソース配分を可能にするといった、全体の生産性向上にも配慮します。
では実際に、どんな機能を具体的に検討しているのか、ご紹介していきます。
主要な10機能
さまざまな機能を盛り込み「効率的な開発」と「ユーザー体験の向上」を実現するため、中でも特に重視した機能が主に次の10項目です。
1. 組織情報の管理
ポータルで部内の組織情報をグループ分けして管理できるようにします。具体的には、毎年変わる組織コードへの対応や部署名の変更、従業員の退職など、組織の変化に柔軟に対応するためです。また、組織コードをメーリングリストと連携させ、メールの送信先を簡単に確認できる仕組みも想定しています。
2. シングルサインオン(SSO)による認証
当社ではGoogleWorkspaceを使用しているため、それに対応したシングルサインオン(SSO)機能の導入を検討しています。これにより、ユーザーは一度のログインで部内の複数のサービスにアクセスでき、認証の手間を省けるようにします。
3. グループ機能
プロジェクトや組織内の活動チームなど、任意の単位でグループを作成できる機能を検討しています。各グループはお知らせの通知やチャット作成時に、メンバーを一括で選択し、通知漏れの防止や情報共有の効率化を図れるようにします。わたしたちの開発部でもそうですが、特に、複数のプロジェクトにまたがる場合、このグループ機能がとても有効になります。
4. チャット機能
コミュニケーションを促進するために、独自のチャット機能も検討しています。他のチャットツールと連携しながら、独自チャットルームを作成することで、特定のプロジェクトやチームに特化したやり取りを可能にします。スレッド化によってチャットの見通しの改善やPush通知を活用して、重要なメッセージの見逃しを防ぐ効果を期待しています。
5. スケジュール管理と連携
Googleカレンダーと連携し、スケジュールの作成・編集、メンバーのスケジュールの閲覧設定を行えるようにします。特に、リマインド機能によって予定の参加漏れを防ぐだけでなく、候補日を集計して日程を調整する機能も盛り込むことで、スケジュール管理の効率化を目指しています。これにより、チーム全体の予定調整をスムーズにし、生産性向上につなげることを期待しています。
6. Push通知機能
部内の情報共有を確実に行うため、Push通知機能の導入を検討しています。例えば、タスクの期限が近づいた際に通知を送ることで、タスクの実施漏れを防ぐためです。また、管理側からのお知らせ通知を行うことで、全体への重要な情報共有をより確実に行えるようにしたいと考えています。
7. タスク管理機能
部内のプロジェクトを円滑に進行するために、タスク管理機能の導入も計画しています。各プロジェクトやグループごとにタスクを作成し、担当者を割り当てることで、進捗状況を一目で把握できるようにすることを目指しています。また、タスクの優先度設定や期限管理を通じて、メンバーの作業が効率的に進むよう支援します。さらに、タスク完了を関係者に知らせるようにすることで、プロジェクト全体のスムーズな流れを保つことが狙いです。
8. 資産管理機能
テレワークが主体となる中で、部内ポータルアプリでも社給のPCや備品の管理も重要になります。そこで、この開発メンバー用の情報共有ポータルでも各自のPCの保管場所や資産管理番号を検索・管理できる機能を追加する予定です。これにより、資産の追跡や管理が容易になりますので、特にリモート環境で物理的な資産を管理する際にも役に立ちます。
9. フィードバック機能
部内からの様々な意見や提案を積極的に取り入れるために、フィードバック機能の実装も検討しています。ポータルを通じて、各メンバーが自由に改善提案を投稿できる仕組みを構築し、プロジェクトの改善や新機能のアイデアを集約できるようにします。
10. データ分析とレポート機能
ポータルの利用状況やプロジェクトの進捗を可視化するために、データ分析とレポート機能を盛り込む予定です。各機能の利用状況を分析し、どの機能が活用されているか、どのプロジェクトが順調に進んでいるかなどをダッシュボードで確認できるようにします。この機能により、管理者は部内の現状を把握し、必要な改善措置を講じることが容易にできるようにします。
次回は、ライブラリ選定やクラウド環境といった切り口で、次世代モバイルアプリ開発基盤の「開発の構成」についてご紹介していきます。