デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

ついに食品業界で始まった「脱アナログ」の動き

明暗分かれる食品業界でDXが切り開く未来<前半>

コロナ禍が変えた〈食〉のかたち

人間が生きていくために必要不可欠な〈食〉。今、その〈食〉を取り巻く状況が大きく変化しています。

要因はもちろん新型コロナウイルスの感染拡大です。総務省の家計調査によると、コロナ禍で大幅に支出が増えたのが、弁当や総菜、冷凍食品などの「中食」と、素材を購入して家で調理する「内食」。いわゆる「巣ごもり消費」は〈食〉においても顕著で、「あたかも外食」「フレックステレワ食」なるトレンドワードまで誕生しました。

2020年4月〜5月の全国的な緊急事態宣言が解かれた後、一旦は飲食店に客足が戻る兆しはみられたものの、秋口から年末にかけての第三派襲来、そして年明けには二回目の緊急事態宣言もあり、しばらくはこの傾向が続くことが予想されます。

こうした状況を背景に食品業界で好調なのが、ネットスーパーを含む食品ECです。矢野経済研究所によれば、2020年度の国内食品通販市場は前年度比5.2%増。初めて4兆円を突破する見込みで、外出自粛の影響で不振が続く飲食店や業務用市場向け食品会社などの新規参入も目立っています。

食品業界は保守的な企業が多いせいかアナログ志向が強く、いまだ80%の食品メーカーが紙ベースで業務を行っているとも言われています。ECに関しても、他業界に比べるとあまり積極的ではありませんでした。しかし、このコロナ禍がいつ収束するのかは誰にもわかりませんし、仮に近い将来、完全に収束したとしても、一度デジタルの利便性を知った消費者が以前の消費スタイルに戻る保証はどこにもありません。

そう、それがECであれ別の形であれ、食品企業にとって今こそ「脱アナログ」すべきタイミングなのです。事実、すでに先進的な企業では、デジタル技術による事業および働き方改革、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(以下:DX)」が続々と始まっています。

海外・日本で盛り上がる「フードテック」

例えば冷凍食品メーカーの株式会社ニチレイでは、2020年11月にAIを活用したスマートフォンアプリ『conomeal kitchen(このみるきっちん)』を発表。ユーザーの食嗜好をベースに、その日の気分や食シーンなどに合わせて最適な献立・レシピを提案するサービスを開始しています。

デジタル化の大きな特徴が、ユーザーの属性や行動・購買履歴などのデータに基づき、一人ひとりに最適化=パーソナライズしたサービスを提供できること。ブランドロイヤリティの醸成につながりますし、取得したデータを新商品開発や併売促進に生かせるメリットもあります。パーソナライズされたレコメンド機能といえばAmazon.comのサイトが有名ですが、アパレルなど他業種のECでも活用されています。

同様の手法でコロナ禍でも業績好調なのが、おやつの宅配サービスをおこなっている株式会社スナックミーです。AIでユーザーの嗜好を分析し、毎月異なるおやつをお届け。1回目の緊急事態宣言のタイミングでは、「宅飲み」需要の拡大に合わせておつまみの宅配サービスをローンチして話題を呼びました。

こうした食品業界のDXは欧米では「フードテック」とも呼ばれ、2015年頃から注目を集めています。2016年に日本上陸した、アメリカのフードデリバリーサービスUberEATS(ウーバーイーツ)もそのひとつ。国内でも、海苔の生産技術を応用して生鮮野菜を加工食品化し、消費期限やサイズ、傷などによる食品ロスの削減に取り組む株式会社アイルなどが知られていますし。味の素株式会社のような大手企業も、工場のリモート設備管理サービスを開発するなど積極的に取り組んでいます。

ただしDXのメリットは、こうした「攻め」の側面だけに限りません。例えばコロナ禍で多くの食品企業が課題として挙げている「アナログ業務のデジタル化」。こうした会社の基盤に関わる問題もDXで解決できるのです。次回紹介いたします。

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