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食品企業のDXを加速させるRPA、AI-OCR

明暗分かれる食品業界でDXが切り開く未来<後半>

アナログ業務を自動化・脱属人化するITツール

コロナ禍で多くの食品企業が課題として挙げている「アナログ業務のデジタル化」。ひと口にデジタル化と言っても様々なツールがありますが、ここでは特にアナログ業務の多いバックオフィスに最適なITツールを紹介します。

FAXで届く注文書など、紙文書の処理に手間がかかっているのであれば、OCR(オプティカル・キャラクター・リーダー)と呼ばれる光学的文字認識ソフトが効果的です。スキャンするだけで文字をデジタルデータ化できるので、パソコンで手入力する必要がなくなります。調味料メーカーのオタフクソース株式会社では、受注件数の4割を占めるFAX注文書の対応に活用し、1日あたりの注文書処理枚数が3倍以上になったという事例も。同じOCRでも、AIを活用したAI-OCRなら、手書き文字のデジタルデータ化も可能です。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入すれば、入力作業や資料作成、メール送受信といったパソコンでのルーティンワークを、ソフトウェア上のロボットに置き換えて自動化することができます。

キリンホールディングス株式会社では国内9工場でRPAを導入し、年1万4000時間分のPC作業をRPAで自動化。購買業務では注文から見積もり依頼、承認までの一連の業務を自動化したほか、残業集計を分析してグラフ化する労務管理業務にもRPAを用いているということです。

さらにOCRとRPAを連携することで、相乗効果をもたらすこともできます。大手ビールメーカーでは物流部門の業務改善を実現。それまでは商品納入後にドライバーが持ち帰る紙の受領証を、システムから出力した出荷データ一覧と目視で照合する作業が必須でしたが、受領証をAI-OCRでデータ化し、出荷データとの照合作業をRPAで処理できるよう対応したことで、作業工数は従来の半分以下に減少したそうです。

DXで危機をチャンスに変える

RPAによる業務の自動化は、人手不足が深刻な食品業界において、働き方改革を推進させる効果もあります。

特にコロナ禍の現在、あらゆる企業に求められるのがリモートワーク対応。日清食品では出荷先への出荷リストの仕分けとFAX送信業務をすべてRPAで自動化し、最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月に、出荷案内業務担当者の在宅勤務化を実現しています。DXの目的はデジタル技術によって事業や働き方を根本から変革することですが、RPAとOCRはそのDXの基盤ツールにして、加速させるためのツールと言っても良いでしょう。

食品業界でこれほどアナログ志向が強いのは、参入障壁の高さゆえかもしれません。けれどもそれは過去の話。前回紹介した「フードテック」の盛り上がりに乗じて、大手家電メーカーや住宅・キッチンメーカー、IT系スタートアップ企業などの異業種が続々と新規参入しています。今後、研究開発から製造、サプライチェーンにいたるまで、DXによって多くのイノベーションが起こることは予想できますし、Amazon.comがあっという間に書店業界を席巻したように、デジタル・ディスラプション(テクノロジーによる破壊的イノベーション)によって業界勢力図が一気に塗り替えられことも十分あり得ます。

そもそもコロナ禍があろうとなかろうと、食品業界の先行きはそれほど明るいものではありませんでした。「人口減少や少子高齢化によって大幅な需要の伸長は期待しにくい状況にある」という矢野経済研究所の報告もありますし、世界最大級のコンサルファームであるデロイトトーマツによると、「このままでは日本国内の食品産業が2040年までに総体として赤字産業に陥る」というリサーチ結果もあります。

ただし見方を変えれば、業界の動きが鈍いということはチャンスでもあります。国内市場は縮小傾向でも、グローバルに目を向ければ市場規模は700兆円。そのポテンシャルを生かし、自社の未来を創っていけるかどうかは、この機にDXを推進できるかどうかに掛かっていると言っても過言ではないはずです。

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