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ITレジリエンスの現場とこれからの展望

ITレジリエンスとは?
~その重要性と今後の展望~<後半>

ITレジリエンスの実践事例

まずはITレジリエンスを強化した各分野の事例を紹介します。

① 金融機関における災害対応

ある大手銀行では、大規模地震やサイバー攻撃に備えて、複数のデータセンターを分散配置し、バックアップ体制を強化しました。また、クラウドベースの金融システムを導入し、リモート環境でも安全なより強固な金融取引を可能にしました。

② 製造業におけるサプライチェーンの保護

グローバルに展開する製造業では、サプライチェーン全体をクラウドで一元管理し、リアルタイムの異常検知システムを導入しました。これにより、サイバー攻撃や自然災害、設備故障などの脅威による異常を早期に察知し、物流の遅延や生産ラインの停止といったリスクを未然または早期に防ぐことが可能となりました。

③ 医療機関における電子カルテの保護

病院や医療機関では、ランサムウェア攻撃が大きな脅威となっています。ある医療機関では、患者データを暗号化し、クラウドバックアップとオフラインストレージを組み合わせた多層防御策を導入することで、攻撃を受けても迅速にデータ・システムを復旧できる体制を整えました。

ITレジリエンスの導入・強化の課題

ITレジリエンスを強化する際の主な障壁

ITレジリエンスの確立には、主に以下の3つの課題が存在します。

【1】コストの課題

クラウドバックアップや異常検知システムの導入には継続的な投資が必要ですが、限られたIT予算の中で優先順位を決めることが難しく、特に中小企業にとって大きな課題となります。

【2】人材不足

ITレジリエンスを推進するための専門知識を持つエンジニアが不足しており、適切な人材の確保が難しい状況があります。

【3】経営層の理解不足

ITレジリエンスはどちらかというと守りのIT投資でもあり、短期的なROIが見えにくいため、投資が優先されにくく、経営層の理解を深めることが必要です。

各課題を克服するための具体的なアプローチ

【1】段階的な導入戦略

たとえば、まずはクラウドバックアップや基本的なセキュリティ対策を導入し、次にゼロトラストや異常検知システムを追加するなど、段階的に進めることで負担を軽減できます。

【2】クラウドベンダーや専門企業の活用

社内で対応が難しい場合、クラウドサービスベンダーやセキュリティ専門企業など連携し、外部のリソースを活用することで迅速な導入が可能になるでしょう。

【3】社内の意識改革

定期的なセキュリティ研修やインシデント対応訓練を実施し、経営層や従業員の理解・意識を高めることが重要です。

【4】KPI設定と評価

「システムダウンタイムの削減」「インシデント対応時間の短縮」などのKPIを設定し、定期的に評価することで、対応が可視化され社内の同意を得やすくなり、継続的な改善を図ることができると考えられます。

ITレジリエンスの今後の展望

今後、ITレジリエンスの重要性はさらに高まると考えられます。特に、以下のような技術やトレンドが注目されています。

AI主導のセキュリティと自動復旧システム

今後、AIがシステムの異常を検知し、自動的に問題を修復する機能が発展していくと予測されます。たとえば、予防的なセキュリティ対策として、AIが攻撃側のパターンを学習し、リアルタイムで防御を強化する技術などが進化していくと想定されます。

サイバーリスク保険の普及

企業がITレジリエンスを高めるだけでなく、サイバーリスクを適切に管理するための保険が重要になっています。そのため、保険会社と連携し、リスク評価や対応策を事前に計画する企業が増加していくと考えられます。

量子コンピュータと次世代暗号技術

近い将来に、量子コンピュータの発展により、超高速な演算技術により従来の暗号技術が解読され無効化される可能性があるため、対量子暗号解読の開発が検討されています。

レジリエンス・アズ・ア・サービス(RaaS)の登場

ITレジリエンスの強化を専門に提供する「レジリエンス・アズ・ア・サービス(RaaS)」の市場が拡大すると予測されています。

まとめ

ITレジリエンスは、企業の成長と持続可能性を支える重要な要素です。サイバー攻撃や災害への対策として、事業継続計画(BCP)、ゼロトラストセキュリティ、AIによる異常検知、クラウドバックアップなどを組み合わせ、より強固なITインフラを構築することが求められます。
今後の技術進化とともに、ITレジリエンスの概念はますます重要になり、企業の競争力を左右する要因となるでしょう。

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