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エッジAIの活用事例と未来展望

エッジAIとは?
~進化する分散型AIとその事例とこれから~<後半>

前回は、エッジAIの基礎理解とメリット・導入効果などについて解説しました。今回は、エッジAIの事例や課題、今後期待される技術革新などについて解説します。

エッジAIの実践事例

エッジAIはすでにさまざまな分野で活用され始めています。以下に代表的な事例を紹介します。

【交通インフラ】自動運転車・スマート交通管制(トヨタ・Waymo)

自動運転開発を進めるWaymoやトヨタでは、車両自体にエッジAIを搭載し、周囲の環境認識や走行判断をリアルタイムで行っています。これにより、通信断や遅延に左右されない安全な自律走行性能能力が高まっています。

【医療分野】ウェアラブルデバイスによる健康管理(Apple Watch)

Apple Watchは、装着者の心拍数や心電図をリアルタイムにモニタリングする機能を備えています。AIモデルを端末内で動作させることで、異常が発生した際には即座にユーザーへ通知する仕組みを実現しています。

【製造業】工場の設備故障予測(ファナック)

工作機械大手のファナックでは、工場内の機械にエッジAIを搭載し、リアルタイムでセンサー情報を解析することで、設備異常の兆候を事前に検知しています。これによりダウンタイムを削減し、生産効率の向上を図っています。

【小売・物流】無人レジ・自律配送ロボット(Amazon Go)

Amazon Goは、店舗内に設置したカメラとセンサーを活用し、エッジAIにより顧客の動きを即時に把握しています。これにより、レジを通らずに買い物が完了する「Just Walk Out」体験を提供しています。

エッジAIの課題と今後の進化

エッジAIには大きな可能性がある一方で、いくつかの課題もあります。

現在の課題

<ハードウェア性能の限界>

小型デバイスに搭載できる演算リソースには制限があり、複雑なAIモデルを処理するのが難しいケースもあります。これに対して、省電力で高性能なNPUの開発が進められています。

<モデル更新・管理の難しさ>

エッジデバイス上のAIモデルは、更新・改良が容易ではありません。特にセキュリティパッチ適用や精度向上のための頻繁な更新が求められる分野では課題となります。

<セキュリティリスク>

端末そのものが物理的に攻撃されるリスクや、モデル盗難・改ざんといった新たな脅威も指摘されています。エッジ固有のセキュリティ設計が求められます。

<エッジとクラウドの最適な連携設計>

エッジとクラウドのどちらで処理するかを最適化するアーキテクチャ設計も難易度が高いです。用途や運用方針に応じた柔軟な構成が求められます。

期待される技術革新

今後、エッジAIはテクノロジーの進化と社会ニーズの変化により、さらに幅広く進展していくと考えられます。

<低消費電力・高性能なNPU(AI専用チップ)の普及>

これまでエッジデバイスには性能・電力面で制約がありましたが、次世代NPU(Neural Processing Unit)の開発が進んでいます。今後、高精度な画像認識や自然言語処理を、スマートフォンやIoT機器単体で実現できるようになる可能性が高いです。

<オンデバイス学習の本格展開>

従来はAIモデルの学習はクラウド側で行われていましたが、今後はエッジデバイス自身が小規模な学習・適応を行う「オンデバイス学習」が普及すると見られています。これにより、個々のユーザーや環境に合わせたパーソナライズがリアルタイムで可能になります。

<6Gとの融合でハイブリッド型進化>

今後想定される超高速・超低遅延通信を可能にする6G、さらにその先に想定される7Gなど時代では、エッジとクラウドが緊密に連携するハイブリッド型のデータ処理が主流になると考えられます。リアルタイム性が求められる部分はエッジ、膨大なデータ分析や最適化はクラウドという使い分けが一層洗練されるでしょう。

まとめ

エッジAIは、リアルタイム性、セキュリティ、コスト効率という現代の課題を解決するだけでなく、今後のDXや社会全体の課題解決にも大きく貢献する技術です。 クラウドとエッジの役割分担を適切に設計し、現場と中央の最適な連携を図ることが、これからのビジネス成功のカギを握るといえるでしょう。

今後、エッジAIは、製造、医療、交通、都市インフラなど多様な分野に広がり、私たちの生活をより安全・快適・効率的なものへと進化させる存在になっていくはずです。

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