大阪・関西万博で注目したい最先端IT・デジタル技術(インフラ・セキュリティ技術編)
DXのヒントに!大阪・関西万博で注目したい最先端IT・デジタル技術<前半>

2025年4月13日から10月13日の間、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)を舞台に『2025年日本国際博覧会(以下:大阪・関西万博)』が開催されています。本万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。会場には、未来の社会を創り支える最先端のIT・デジタル技術が集結し、数々の革新的な取り組みが披露されています。
今回の記事では、万博会場で実際に活用されている注目の技術を、具体的な事例とともに紹介します。自社でIT・デジタルによる業務変革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を検討している方は、是非参考にしてみてください。
「Beyond5G」がもたらす驚きの未来
Beyond 5Gは、現行の5G(第5世代移動通信システム)をさらに進化させた次世代の通信インフラであり、「超高速・大容量」「低遅延」「高信頼性」「多数同時接続」といった特長を備えています。2030年頃の実現が見込まれ、あらゆる産業や生活シーンに革新をもたらすと期待されています。
大阪・関西万博では、総務省が主催する『Beyond 5G ready ショーケース』が期間限定(5月26日~6月3日)で開催されています。
【Beyond 5G ready ショーケース】次世代情報通信がもたらす未来社会と最先端技術を大阪・関西万博で体験!|総務省動画チャンネル
会場にはBeyond5Gに関する映像・パネル展示に加え、Beyond5Gが実現する未来の社会や生活のイメージを、最先端技術を通じて疑似的に体験できるコンテンツを用意。例えば、触覚グローブを使って仮想空間上で遠隔地の人やAIアバターとキャッチボールできるブースや、VR(仮想現実)ゴーグルを装着して地球から月面基地のロボットを遠隔操作できるブースなどが設置されています。
未知のデータを可視化する「IoT」
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)は、センサーや通信機能を備えたモノとインターネットに接続し、相互に情報をやり取りする仕組みです。これまで活用が難しかったデータを収集・可視化・分析できるようになり、業務の効率化や新サービスの創出など、さまざまなメリットが期待できます。
象印マホービン株式会社は、一般社団法人大阪産業外食協会のパビリオン『宴~UTGE~』に、おにぎり専門店『ONIGIRI WOW!(オニギリ・ワウ!)』を出店。期間中、店舗内でIoT技術を活用した炊飯管理の実証実験を実施しています。

実証実験では、センサーが取得した複数の炊飯ジャーの稼働状況(炊飯・保温)やごはんの残量を、専用アプリでリアルタイムに可視化・管理するシステムを導入。これにより、適切な量を適切なタイミングで炊飯することが可能になり、炊き上がり直後のおいしいごはんを提供できるようになります。また将来的には、フードロスとコストの削減にも貢献することが期待されています。
参照:「IoT炊飯管理システム」や「おにぎりを半自動で製造するシステム」も導入 大阪・関西万博に出店するおにぎり専門店の店舗詳細が決定!|象印マホービン株式会社
パナソニックグループのパビリオン『ノモの国』では、来場者の熱中症対策と空間演出に使用するミスト噴射機の自動制御にIoT技術が活用されています。
1分チラ見せ パナソニックグループパビリオン「ノモの国」 体験動画|大阪・関西万博| Channel Panasonic – Official
各種センサーが取得したパビリオンの温湿度、雨量、風速などのリアルタイムデータを、複数のIoTシステムを統合するスマートビルプラットフォーム『WELCS place』(株式会社大林組)に送信。それらのデータをもとに、API(※)連携したクラウドシステムを通じてミストの噴霧量を自動制御するという仕組みです。人間の感覚ではなく、客観的なデータにもとづいてミスト噴射を最適化することにより、精度の高い熱中症対策を実現することができます。
※API:異なるアプリケーションやソフトウェアをつなぎ、データや機能のやり取りを可能にするインターフェース
参照:大阪・関西万博パナソニックグループパビリオン「ノモの国」にてゼロカーボン電力由来の水素を活用したライトアップ演出を実施|パナソニック ホールディングス株式会社
参照:大林組のスマートビルプラットフォーム「WELCS place®」、大阪・関西万博 2つのパビリオンに採用|株式会社大林組
参照:データの力で大阪・関西万博の来場者を熱中症から守る! パナソニック館におけるIoTプラットフォームを大林組と共同で実現|MODE, Inc.
取引の仕組みを変える「ブロックチェーン」
ブロックチェーン(分散型台帳)は、ネットワーク上の端末同士を直接接続し、暗号化技術を用いて複数の参加者間で取引記録を管理する技術です。改ざんが極めて難しく、透明性・信頼性の高い取引を実現できる点が大きな特長です。
大阪・関西万博では、公式ウォレット(電子財布)アプリ『EXPO2025デジタルウォレット』にブロックチェーン技術が採用されています。
EXPO2025デジタルウォレットサービスPR動画|Expo2025 大阪・関西万博
『EXPO2025デジタルウォレット』では、会場内外で使える電子マネー『ミャクぺ!』やポイントプログラム『ミャクポ!』などのサービスを提供しており、これらを通じて得られる特典にブロックチェーンを基盤とした技術が活用されています。
電子マネーやポイントの利用、デジタルスタンプラリーへの参加などによって獲得できる限定画像『ミャクーン!』に用いられているのが「NFT」(Non-Fungible Token:非代替性トークン)です。NFTはデジタルコンテンツの所有権や唯一無二性を証明できる機能を持ち、同アプリではユーザーが自分の画像をNFT化できる機能も提供しています。
もう1つが、『EXPOトークン』に活用されている「SBT(ソウル・バウンド・トークン)」です。SBTはNFTの一種で、他人への売買・譲渡ができない点が特徴です。『EXPOトークン』はイベントやキャンペーンに参加することで獲得することができ、1『EXPOトークン』 = 1円として万博会場や対応店舗での決済に利用することができます。
安全性・利便性を向上させる「顔認証システム」
顔認証システムとは、顔情報をもとに個人を識別・認証する技術です。従来のID・パスワードによる認証方式よりも“なりすまし”が難しく、ユーザー側もパスワードの記憶や入力が不要になるといったメリットがあります。
大阪・関西万博では、会場への入場管理と会場内店舗での決済に顔認証システムが導入されています。
大阪・関西万博 – 顔認証 – 決済編 [NEC公式]|NEC(日本電気株式会社)
入場時に顔認証の対象となるのは、「通期パス」または「夏パス」の利用者です。顔情報は、チケット購入時に公式サイト上でパソコンかスマートフォンのカメラを使って事前登録。入場の際は、チケットに記載されたQRコードの読み取りと併せて、ゲートに設置されたカメラで顔を撮影すると、登録された顔データと自動で照合されます。
店舗での決済は、通期・夏パスに加え、『EXPO2025デジタルウォレット』アプリが提供する電子マネー『ミャクペ!』の利用も条件となります。こちらも顔情報は事前にアプリに登録。決済時に顔認証対応レジに顔をかざすだけで、現金やカード、スマートフォンを使わず手ぶらで支払いを完了させることが可能です。
参照:国内最大級の顔認証による電子マネー決済、入場ゲートでの追加認証の導入-手ぶら決済による利便性向上、顔認証による安全・安心な万博運営を実現-|EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
次回の後半記事では、生成AIやアバター、XRなど、近年特に注目度の高い最先端技術の活用事例を紹介します。楽しみにお待ちください!