大阪・関西万博で注目したい最先端IT・デジタル技術(生成AI・バーチャル技術編)
DXのヒントに!大阪・関西万博で注目したい最先端IT・デジタル技術<後半>

前半記事では、大阪・関西万博で活用されているインフラ・セキュリティ関連の技術を紹介しました。今回は、ビジネスの“攻め”の領域で注目を集める生成AIやバーチャル技術に焦点を当て、その活用事例を取り上げていきます。
注目度抜群! 「生成AI」
最先端技術が集結した大阪・関西万博。当然ながら、今注目の生成AIも活用されています。
会場内では次世代ロボットの実装や実証を進める取り組み『ロボットエクスペリエンス』が実施されており、さまざまなロボットがあちこちで動き回っています。その中で、生成AIの活用により、人間同士のようなコミュニケーションを実現しているのが、株式会社MIXI提供の自律型会話ロボット『Romi(ロミィ)』です。
会話AIロボットRomi(ロミィ)- Lacatan(ラカタン)モデル -|株式会社MIXI
『Romi』には、深層学習技術をベースに独自開発した会話を生成するAIを実装。あらかじめ登録した定型的な応答ではなく、一緒に見ている景色について話したり、あいづちを打ちながら話を聞いたりと、自然で親しみのある対話をおこなうことができます。
また、表情で喜びや驚きを表現するなど、ノンバーバルコミュニケーションが可能な点も大きな特長です。『Romi』は『迷子/ベビーセンター(東・西)』、『ジュニアSDGsキャンプ』 といった子供向けスペースに設置されており、情報案内や質問対応に加え、迷子になった子供に励ましの声を掛けたり、「いないいないばあ」遊びをしたりと、不安を和らげるためのケアも提供しています。
参照:【会話AIロボット「Romi(ロミィ)」× 大阪・関西万博】2025年日本国際博覧会「ロボットエクスペリエンス」に「Romi」を出展|株式会社MIXI
住友グループのパビリオン『住友館』では、生成AIを活用した参加型共創プロジェクト『ミライのタネ』を実施しています。
Sumitomo Pavilion 住友館_Teaser Trailer|住友館
『ミライのタネ』は、住友グループ各社の最先端技術や取組みをデータベース化し、それをもとに生成AIが人類の課題解決や豊かな未来社会の実現につながる事業アイデアを創出するプロジェクトです。パビリオンでは、同グループの技術・取り組み紹介とともに、生成AIが出力したさまざまな事業アイデアも展示されており、来場者の創造力を刺激してくれます。
また、万博期間中はWeb上に同プロジェクトの特設サイトを開設。こちらにも生成AIが活用されており、誰でもキーワードを選ぶだけで『ミライのタネ』を作り、シェアできるコンテンツが用意されています。

出典:『ミライのタネ』特設サイト|住友 EXPO2025 推進委員会
「アバター」=分身で交流も人手不足解消も
アバターとは、ユーザーの「分身」となるキャラクターやロボットのことです。オンラインゲームでは広く普及していますが、ビジネスでも接客やカスタマーサポート、リモート会議など、オンライン/オフライン問わず活用されています。
大阪・関西万博では、現実世界の万博と並行して開催されている仮想空間(メタバース)の『バーチャル万博~空飛ぶ夢洲~』にアバターを使って参加することができます。
バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~ プロモーションムービー|Expo2025 大阪・関西万博
『バーチャル万博』へは専用アプリから参加可能。会場内には夢洲会場のパビリオンやイベント施設が3DCGで忠実に再現されており、実際の会場の雰囲気が味わえます。また、バーチャル会場ならではの展示・イベントもおこなわれており、24時間世界中のどこからでも楽しむことができます。
ユーザーはアバターの外見を自分好みにコーディネート・カスタマイズでき、ボイスチャットやテキストチャット機能を通じて他の来場者とリアルタイムで交流することも可能です。
参照:バーチャル万博~バーチャル会場~|EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
現実世界の万博会場でも、アバター技術は活用されています。株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、会場内にさまざまな最先端技術を取り入れた“未来型”の『セブンイレブン』を2店舗オープン。そこで、人材不足が進む接客業務の省人化・効率化の検証を目的に、アバターロボットを用いたリモート接客を導入しています。
セブン‐イレブン✕イチロー 明日とのキャッチボール in EXPO 2025 「大阪・関西万博篇」 ①セブン-イレブンが目指すおいしいコンビニって?|セブン‐イレブン・ジャパン 公式チャンネル
アバターロボットは、従業員が店内の状況を確認しながら遠隔で操作。ボディ(本体)は縦長の円筒形で、最上部に操作者の顔が表示されるタッチディスプレイが付いているため、直接対面しているかのように来店者の質問や困りごとに対応することができます。
参照:~未来の「環境」「商品」「買い物体験」への挑戦~ 大阪・関西万博会場内に“未来型店舗” 4月13日(日)に2店舗オープン|株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
まるで人間!?な「バーチャルヒューマン」
バーチャルヒューマンは、3DCG技術やAIを活用して作り上げられた仮想のキャラクターです。アバターと同様、ビジネスでは接客やカスタマーサービスの新しい選択肢として注目を集めていますが、より実際の人間に近い外見や振る舞いを生かして、タレントやインフルエンサーのような活動を展開しているキャラクターもいます。
その代表的な例が、大阪・関西万博のスペシャルサポーターであり、開会式で司会進行役を務めた『imma(イマ)』です。
imma出演 大阪・関西開幕1年前イベント オープニング動画|Expo2025 大阪・関西万博
『imma』は2018年にデビューした日本初のバーチャルヒューマン。最先端のAI技術により、人間とリアルタイムで会話できるほか、音声から表情のアニメーションを生成し、人間そっくりの自然な表情を見せることもできます。
SNSの総フォロワー数は100万人を超え、国内外の有名ブランドの広告モデルやテレビCM出演、テレビ番組のMCなど、多彩な活動を展開。2023年には自身がプロデュースするストリートファッションブランド『Astral Body』をローンチしています。
参照:バーチャルヒューマン「imma」、大阪・関西万博 開会式に司会として登場|株式会社Aww
大阪府の400社以上の中小企業・スタートアップが出展する『大阪ヘルスケアパビリオン』では、バーチャルヒューマン『”Saya”』に活用されている『マルチモーダル対話AIエージェント“Saya”』が来場者案内業務を担当しています。

Artificial Emotional Intelligence “Saya”
『マルチモーダル対話AIエージェント“Saya”』は、バーチャルヒューマン『“Saya”』を実際の人間のように自然に制御する機能や、画像AI、音声AI、大規模言語モデル(LLM)を活用したAI対話システム。カメラやマイクを通じて相手の表情や声のトーンを解析し、共感的に応答することが可能です。
案内業務では8つの展示内容の案内に加え、来場者との対話内容をもとに最適な展示を個別に紹介。それぞれのブースへの送客と活性化にも貢献しています。
新しいユーザー体験を提供する「XR」
XR(Cross Reality/Extended Reality)は、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)など、現実世界と仮想世界を融合させる技術の総称です。ビジネスでは製品の設計・試作シミュレーションから集客イベント、マーケティング向けのコンテンツまで、幅広い分野で活用されています。
アニメーション監督の河森正治氏がプロデュースするシグネチャーパビリオン『いのちめぐる冒険』では、XRを活用した『超時空シアター「499秒 わたしの合体」』が展示されています。
超時空シアター「499秒 わたしの合体」MRと一体感とVRの没入感をEXPO 2025 大阪・関西万博で|河森正治チャンネル Shoji Kawamori Channel
参加者はヘッドマウントディスプレイを装着し、宇宙スケールの食物連鎖の旅を体感。圧倒的な没入感を生みだすMR/VR技術と立体音響によって、現実と仮想を行き来するまったく新しい映像体験が実現されています。
参照:超時空シアター「499秒 わたしの合体」|SHOJI KAWAMORI | 河森正治 Official Web Site
一般社団法人日本ガス協会のパビリオン『ガスパビリオン おばけワンダーランド』でも、XRを活用したアトラクションが提供されています。
【EXPO2025】「ガスパビリオン おばけワンダーランド」予告編②|日本ガス協会_The Japan Gas Association
専用のXRゴーグルを装着すると、参加者は“おばけ”に変身。敵のおばけを倒したり、空から降ってくるお菓子を手に入れたりと、ストーリー仕立てのアトラクションを通して、一人ひとりの意識や行動の変化が未来を変えることを学ぶことができます。
また、同パビリオン周辺では、ARを活用した『ウェルカムXR』という演出も実施されています。専用アプリを起動してスマートフォンを空中にかざすと、おばけのARキャラクターがまるで実在しているかのように画面上に出現。空中に浮かんだり飛び回ったりして楽しませてくれます。
参照:ガスパビリオン おばけワンダーランド|一般社団法人日本ガス協会
参照:「ガスパビリオン おばけワンダーランド」アトラクション概要および催事予定等について|一般社団法人日本ガス協会
※参考(記事に記載なし)
万博で感動体験、河森正治氏や菅野よう子氏らが示したXRの可能性(日経クロステック)
まとめ
大阪・関西万博では、今回紹介した事例以外にも、人やモノの動きを含む空間情報を遠隔地にリアルタイムで伝送・再現する「3D空間伝送」など、まだまだたくさんの革新的なIT・デジタル技術が活用されています。
今回の万博をきっかけに、日本企業のDXが一気に加速する可能性は十分にあります。従来のビジネスや業務のやり方からなかなか抜け出せずにいる企業の方も、実際に現地で最先端の取り組みに触れてみることで、自社の変革につながるヒントやアイデアが見つかるかもしれません。