デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

学校DXの遅れが招いた子供たちの教育格差

今、学校DXで解決すべき2つの課題とは?<前半>

教育現場の現実

ウィズ・コロナ、あるいはアフター・コロナ時代のニューノーマル(新常態)として、企業では当たり前の取り組みになりつつあるデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)。しかし、教育現場ではまだまだこれから、というのが実情です。

そもそもDX以前にデジタル化すら進んでいない有り様で、日本の学校教育におけるICT(情報通信技術)利用率はOECD加盟国中最下位。当然、今回のコロナ禍でのオンライン授業への移行もスムーズというわけにはいかず、文部科学省の調査によると、最初に全国的な緊急事態宣言が発出された2020年4月16日時点で、教員と生徒がコミュニケーションできる同時双方向型のオンライン授業に取り組むと回答した自治体は、わずか5%だったそうです。

思い返せば、文部科学省が「1人1台の情報端末による学習」と「超高速の校内無線LAN環境構築」を掲げた『教育の情報化ビジョン(骨子)』を発表したのは2010年のこと。にもかかわらず、それから約10年間、学校教育のデジタル化はほとんど進んでいなかったと言わざるを得ないような状況なのです。

もちろんその背景には、部外者の想像も及ばない複雑な事情が存在するのでしょう。しかし何より問題なのは、こうした大人たちの怠慢のしわ寄せを誰よりも受けるのが、生徒である子供たちということではないでしょうか。

事実、現場では学習の遅れが深刻化しています。オンライン授業の環境が整わず、2か月以上に渡って授業ができなかった学校もあるそうです。学校間・地域間のデジタル格差も浮き彫りになっています。そしてそのデジタル格差は、そのまま教育格差となって生徒たちの将来に影響を及ぼしかねません。

こうした事態を重く見たのか、文部科学省は生徒に1人1台の端末を整備する『GIGAスクール構想』の実現を急いでいますが、2021年3月までという達成見込みについては厳しいという見方が大勢です。

とはいえ、何もかもが絶望的というわけではありません。数こそ少ないものの、コロナ禍以前からITツールを活用し、自主的にデジタル化やDXを推進している学校も存在するからです。

先進的なデジタル化・DX推進事例

例えばVR(仮想現実)。愛知県のある公立小学校では体育の跳び箱の授業にVRゴーグルを導入し、事前に生徒に跳び箱を跳ぶ感触を体感してもらうことで、恐怖心や苦手意識の克服を図っています。

他には理科の実験や美術鑑賞、防災訓練での活用も進んでいます。リアルに近い体験に基づいた学習を行えることがVRのメリットですが、言葉や写真だけで説明するよりも理解が深まりますし、生徒のモチベーションを上げる効果も期待できます。まだまだ事例こそ少ないものの、今後5G(第5世代移動通信システム)の拡大にともない、その活用領域は増えていくはずです。

もちろん活用されているのはVRだけではありません。学校教育に関するテクノロジーはEducation(教育)とTechnology(技術)を組み合わせて「EdTech(エドテック)」と呼ばれ、様々なツールやプラットフォームが登場しています。ここでは特に種類の豊富なアプリをいくつか紹介しましょう。

モバイル連絡帳アプリ

保育園や小学校、特別支援学校で使われている連絡帳の機能を備えたスマホアプリです。通常の紙(ノート)の連絡帳にないメリットはリアルタイム性。遅刻や欠席、災害発生時の休校情報などが電話連絡なしに共有できます。押印の手間も不要です。

黒板アプリ

アプリをダウンロードした端末(スマホ、タブレット、PC)とプロジェクターを使って、黒板に教材の画像や動画を映し出すことができます。授業の幅が広がり、生徒たちの学習意欲を高める効果も期待できます。

いじめ相談アプリ

SNSの普及によって学校でのいじめが陰湿化していると言われている中、多くの子供たちが親や教師に相談できず一人で苦しんでいます。そうした問題を解決するため、匿名で報告・相談ができるチャット形式のアプリを導入する学校や自治体が増えています。

こうしたツールによる部分的なデジタル化ではなく、全学的にDXを推進しているのが近畿大学です。2021年1月には「近大DX」というキャッチコピーを掲げた全面広告を新聞に掲載していたので、ご覧になった方もいるでしょう。Amazonでの教科書販売、Visaプリペイド付き学生証、キャンパス内キャッシュレス化など、数々の日本初となる試みに取り組んできた同学。2021年度からは、キャンパス内に動画コンテンツ収録スタジオを設置し、一部の授業をオンデマンド化することを発表しています。

以上は主に生徒向けのツール・施策ですが、デジタル化・DXの効果はそれだけにとどまりません。コロナ禍による学習の遅れと並んで現在の教育現場におけるもう一つの深刻な課題、教員・職員の働き方改革を強力に推進できるITツールもあります。次回をお楽しみにお待ちください。

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