デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

失敗を恐れない組織へ!DX推進企業の「カルチャー」醸成・変革事例

DXに必須! 「企業文化(カルチャー)」の醸成・変革に有効な取り組みとは?

DX推進に欠かせない企業文化(以下:カルチャー)。前半記事に引き続き、今回も国内DX推進企業のカルチャー醸成・変革のための取り組み事例を紹介します。

「社内イベント」を活用したカルチャー醸成・変革事例(1)

DX推進企業では、従業員のDXへの理解促進やナレッジ共有、またはカルチャーを“体感”する機会として、社内イベントを活用するケースが多く見られます。

JFEホールディングス株式会社のグループ企業であるJFEエンジニアリング株式会社では、デジタル知識の習得及び組織風土の醸成、社員のマインド変革のきっかけを生む場として、2021年度から毎年1回、社内イベント『DX day!!』を開催しています。

2024年度は、2日間にわたって本社とオンラインのハイブリッド形式で開催。各部門のDX取り組み事例の共有、社外技術やサービスの体験展示、外部DX有識者による講演、生成AIなど注目技術の業務活用に関するセミナーなど、多彩なプログラムを用意されました。

DX取り組み事例の共有では、VR・MRを活用した安全教育・検査員教育システム、360°カメラを活用した現場巡視業務のスマート化、ローコードツールによる業務効率化といった取り組みが紹介され、担当者による実演や体験を通じて、参加者が自部門への展開を具体的にイメージすることを後押しする内容となっています。

参照:DX推進イベント「DX Day!! 2024」を開催|JFEエンジニアリング株式会社

「社内イベント」を活用したカルチャー醸成・変革事例(2)

ユニークな社内イベントを開催しているのが、大手オフィス家具メーカーの株式会社オカムラです。同社では、DXリテラシーの高い従業員を育成することで、現場からDXアイデアが湧き上がる文化を醸成することを目的とした『DXラーニングプラットフォーム』という取り組みを実施。さまざまなプロジェクトや社内イベントを実施しています。

例えば、DX推進に欠かせない部門横断的な“共創”を学び、体験するためのワークショップ型勉強会・交流会もそのひとつ。中でも特徴的なのが、2024年4月に開催された『真剣しゃべり場「若害vs老害」編 ~覆面討論!世代間ギャップの本音に迫る~』という討論形式のイベントです。

肩書きにとらわれず本音で語り合えるよう、メタバース空間を活用し、参加者は匿名(ニックネーム)かつアバターで参加。「飲み会」や「マネージャーのあり方」などについて、異なる視点をぶつけ合うことで、世代を超えた相互理解や、新たな気づきの創出につながる場となっています。

参照:オカムラ 社内DXイベントレポート「真剣しゃべり場『若害vs老害』編」|株式会社オカムラ

参照:事業部横断のつながりが活きる!社内勉強会「オフィス事業×物流システム事業 共創の日」|株式会社オカムラ

「越境」を活用したカルチャー醸成・変革事例

DXをスムーズに進めるためには、業務部門とIT(DX)部門の緊密な連携や協働が欠かせません。そのためのアプローチとして効果的なのが、部署の垣根を越えて学び・協働の機会を提供する「社内越境」の取り組みです。

テクノロジーを活用した不動産テックを展開している株式会社GAテクノロジーズでは、企業文化において「リアルとテックの融合」を徹底的に浸透させるために、現場と開発部門の相互理解を深める取り組みを推進しています。

具体的には、システムやサービスを開発するエンジニアが短期間だけ不動産実務を体験する仕組みを整備。現場でのリアルな体験がサービス開発に活かされるという好循環が生まれています。また、営業部門と開発部門の座席を工夫し、日々の業務の中で発生する小さな課題や改善点を見つけやすくするという環境づくりにも取り組んでいます。

参照:DX銘柄2021|経済産業省、株式会社東京証券取引所

こうした事例とは反対に、事業部門の社員が一定期間DX部門に異動し、座学と実践を通じてDXスキルを習得する制度を設けている企業もあります。また最近では、ITベンチャーやスタートアップなどへの“社外越境”を支援する仕組みを取り入れる企業も増えており、越境のスタイルは多様化しています。

「社内公募制度」を活用したカルチャー醸成・変革事例

従業員の“変革マインド”を醸成し、挑戦を歓迎するカルチャーを定着させるうえで効果的なのが、社内公募制度や社内コンテストです。

MaaSの取り組みを始め、DX推進企業としても注目を集めている東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、2018年9月、社内公募制の新事業創造プログラム『ON1000(オンセン)』を始動しました。

目的は、イノベーションを起こし続けることで時代の変化に柔軟に適応できる企業グループとなること。「既存事業の延⻑線上でない“⾮連続”な事業」をテーマに、JR東⽇本グループ全社員約7.5万⼈から新事業のアイデアを募集したところ、累計で4,600件の提案が集まり、ベビーカーレンタルサービス『ベビカル』など、7 件の新規サービスが立ち上がっています。

2024年度にはプログラムをリニューアル。より社会課題の解決や社会への価値提供を重視し、スケールの大きな新規事業の立ち上げを加速するため、新会社設立や上場を前提とした事業化、さらに起案者がストックオプションなどの形で新会社の株式を所有できる制度の整備など、社員の挑戦意欲を引き出す仕組みへと進化しています。

参照:「DX銘柄2021」に選定されました|東日本旅客鉄道株式会社

参照:新事業創造プログラム「ON1000(オンセン)」を始動します! 〜JR東⽇本グループ約7.5万⼈全社員を対象としたアイデア募集型プログラム〜|東日本旅客鉄道株式会社

参照:新事業創造プログラム「ON1000」は新たなステージへ! ~JR東日本グループから社会に大きな価値をもたらす新規事業創出を目指します~|東日本旅客鉄道株式会社

「社内コンテスト」を活用したカルチャー醸成・変革事例

DX先進企業として知られるソフトバンク株式会社は、2023年5月より、ソフトバンクグループ全体で『生成AI活用コンテスト』を継続的に開催しています。

内容は、グループ各社の社員が生成AIを用いた新たなビジネスプランや社会課題の解決策を提案するというもの。特筆すべきはそのスケールで、毎回の優勝賞金は1,000万円、累計提案数は19万件にのぼります(賞金額・提案数ともに2024年12月時点)。

提案は多角的な観点からアイデアの実現性や持続可能性が審査され、優秀と認められたアイデアは、事業化や社内導入に向けた後押しを受けられる仕組みとなっています。

参照:世界で最もAIを活用する企業グループへ――ソフトバンクグループの“生成AIコンテスト”|ソフトバンクグループ株式会社

「デジタルの民主化」を通じたカルチャー醸成・変革事例

DX推進において特に傑出した取り組み継続している企業として、2025年に『DXプラチナ企業2025-2027』に選定された株式会社LIXIL。その先進的な取り組みのひとつと言えるのが、「デジタルの民主化」を通じたカルチャー変革です。

同社は、よりアジャイルで起業家精神にあふれた企業文化を目指し、2021年よりノーコードでアプリ開発ができるツールを日本国内の全従業員を対象に導入。プログラミングなどの専門知識のない従業員がシチズンデベロッパー(市民開発者)として、独自の業務ツールを開発できる環境を整備しました。

特筆すべきは、現場への浸透のさせ方です。まず全役員がアプリ開発ツールの研修を受け、実際にアプリを開発。その成果を社内コミュニケーションツールで全従業員に共有することで、挑戦を促す空気を組織全体に広げていきました。

その結果、1年間で従業員によって開発されたアプリは2万件を超え、そのうち約860のアプリが正式な管理ツールとして現場の業務改善に導入。中には、現場ならではの知恵を活かした、デジタル部門が驚くような画期的なアプリも登場するなど、着実に従業員の自発性やチャレンジマインドを高めています。

参照:LIXIL、「DXプラチナ企業」に初選定|株式会社LIXIL

参照:「デジタルの民主化」従業員が自ら考え、行動する、新しい企業文化|株式会社LIXIL

参照:DX銘柄2024|経済産業省、株式会社東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構

カルチャーは抽象的で目に見えないものかもしれませんが、今回紹介した企業のように、KPIの設定や社内イベントの実施、デジタルの民主化の推進といった取り組みを重ねることで、着実に醸成・変革していくことが可能です。

なお、今回の記事では触れられませんでしたが、こうした取り組みを推進する上で何より推進力となるのが、経営トップの“本気のコミットメント”です。経営者や役員自身がカルチャーの重要性を認識し、継続的に社内へ発信し続ける姿勢が欠かせません。

新たなカルチャーへの変革は一朝一夕に実現するものではありません。だからこそ、なるべく早期に着手することが肝要です。今回の記事が、DX実現につながる自社変革のきっかけとなれば幸いです。

share
  • AI-OCRエンジンを採用、RPA連携による完全自動化のOCRサービス「CREO-OCR」
  • BizRobo!を月額6万円から利用可能、従量課金RPAサービス「CREO-RPA」
  • サービスデスク
  • プロセス管理
  • クラウドシフト
  • 人事給与
  • ハイブリッド購買
  • 情シス
  • 社労士
  • 会計士
  • Method
  • DXセミナー

記載された商品名・製品名は各社の登録商品または商標です。