Google I/O 2025が告げる“AI統合”の未来
Google I/O 2025で始まるAI戦争の新章

GPT一強の時代は終わるのか?
2022年末に登場したChatGPTは、LLM(大規模言語モデル)の一般ユーザーへの普及を決定づけました。2024年5月に登場した軽量かつ高速なGPT-4o(オムニ)は、自然言語処理における品質と汎用性の面で群を抜いており、「生成AIといえばChatGPT」といわれるほどの地位を築いてきました。
この間、ChatGPTは単なるチャットボットの枠を超え、文章生成、コーディング、学習補助、マーケティング活用、法律文書の要約など、ビジネス領域に深く浸透しました。2023〜2024年は「GPTが仕事の仕方を変える」時代だったといっても過言ではありません。
さらに2025年6月には、最新モデル「GPT-5」が発表されました。GPT-5は、より高い論理的推論力と、長期文脈保持能力、タスク適応力に優れ、業務文書の作成・分析や複雑な意思決定支援など、企業内利用を意識した設計がなされています。特に、「知識更新の柔軟性」と「複数の目的に合わせたプロンプト理解力」が大きく向上しており、「本格的な業務用AIアシスタント」としての完成度をさらに高めています。
一方で、2025年に入り風向きが変わり始めています。ユーザーがAIに求めるのは、「より便利に、日常に溶け込む体験」へと進化しているのです。
AIを使うたびに「チャット画面を開く」動作が面倒と感じる人が増え、AIが自動的にサポートしてくれる「アシスト体験」へのニーズが顕在化しています。こうした中で、ブラウザやOSに統合されたAIが、自然なユーザー体験の提供という新たな競争軸を作りつつあります。
Google I/O 2025が描く未来
2025年5月、Googleは開発者向けカンファレンス「Google I/O」で、AIの次なるフェーズを象徴する数々の発表を行いました。その中心にあったのが、「Gemini 1.5 Ultra」です。
この最新モデルは、従来のトークン制限を大幅に超える長文対応、マルチモーダル(テキスト・音声・画像・動画)処理、長期記憶の保持といった機能を備え、ユーザーとの対話を「継続的な支援」に進化させました。特筆すべきは、AIが一度のセッションで数十万トークンを記憶し、文脈を維持したままアシストを継続できる点です。
さらにGoogleは、GeminiをGmail、Google Docs、スプレッドシート、スライド、Meetなどに深く統合し、「AIがアプリに常駐する」環境を実現しました。たとえば、メールのドラフト提案や会議資料の自動生成、ビデオ会議中のリアルタイム議事録作成など、業務の随所にAIが「影の同僚」として関わる設計が特徴です。
また、Android OSとChromeブラウザにもGeminiが統合され、スマホ操作中に検索、翻訳、メモ提案、音声ガイドなどを自動で補助してくれる機能も実装されました。ユーザーは特別な操作をすることなく、OSの中に「気が利くAI」を感じられるようになります。
アプリに統合されるAI・AIネイティブブラウザ
Googleの最大の武器は、GmailやDocs、Maps、YouTubeといった圧倒的なユーザー基盤を持つアプリ群との連携力です。Geminiは、ユーザーの「いつもの作業」や「日常のフロー」に違和感なく入り込み、作業の文脈に応じて必要な支援を提供します。
これは「ユーザーの意識を邪魔しないAI体験」であり、既存アプリの中で自然にAIの価値を享受させるアプローチです。企業にとっても、すでに利用しているGoogle WorkspaceにAI機能が追加されるだけであり、導入の心理的・運用的なハードルが低い点も強みといえます。
一方で、ユーザーの中には「もっと軽快に使えるAIが欲しい」「自分の好みに最適化された環境がほしい」という声もあります。Googleの戦略は大規模組織には理にかなっていますが、個人ユーザーやスタートアップ、一部のクリエイター層には、より自由度の高いAI体験を求める動きが出てきています。
その声に応えるかのように、近年注目を集めているのが「AIネイティブブラウザ」です。
今回はGPT一強の時代は終わるのか、Google I/O 2025が描く未来、アプリに統合されるAI・AIネイティブブラウザについて解説しました。次回は、Comet、Genspark、DiaといったAIブラウザの台頭などについて詳しく見ていきましょう。