デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

「アナログ=時代遅れ」という誤解——デジタル至上主義に潜む落とし穴

デジタル時代だからこそ効く!アナログ・オフライン活用施策

デジタル至上主義の弊害とは

現代のビジネスにおいて、デジタル技術は欠かせない存在です。業務の効率化や省人化、コスト削減、さらには新たな商品・サービスの創出など、その恩恵は計り知れません。

しかし一方で、近年の「すべてをデジタルに置き換えることが最適解」とする風潮、いわば「デジタル至上主義」には疑問を抱かざるを得ません。デジタルは決して万能ではなく、すべてのビジネス課題を解決できる訳ではないからです。

この点は、デジタル活用が前提となるデジタルトランスフォーメーション(DX)においても同様です。DXの目的は、業務プロセスや組織、ビジネスモデルそのものを変革すること。にもかかわらず、「デジタル至上主義」に陥り、手段であるデジタルツールの導入が目的化してしまうと、現場の混乱や業務の複雑化、または「PoC(検証)疲れ」や「シャドーIT」といった、本末転倒な事態を招いてしまう恐れがあります。

とりわけ「デジタル至上主義」がもたらす弊害は、これまで有効活用されてきた“アナログ”や“オフライン(リアル)”の手法さえも、一律に「時代遅れ」「前時代の遺物」という印象を与えてしまうことです。しかし実際には、ビジネスの重要な領域において、まだまだ“アナログ”や“オフライン”の方が優位性を発揮する場面は数多く残っているのです。

デジタルネイティブも注目するアナログの価値

アナログやオフラインには、デジタルでは代替できない独自の強みがあります。中でも特筆すべきは、顧客やユーザーが実際に手に取ったり目で確かめたりできること、つまり五感に直接訴えかけられる点です。この強みをビジネスに活用することで、次のような効果が期待できます。

・記憶や印象に残りやすい
・細かな質感やニュアンスが伝わりやすい
・希少性や特別感を演出しやすい

こうした強みにより、特に顧客との長期的な関係構築やブランド価値の訴求といった、「感情」「信頼」「体験価値」が鍵となる場面では、デジタルよりもアナログ・オフラインの方が圧倒的な優位性を発揮するケースが多く見られます。

ビジネス以外でも、「デジタル疲れ」や「デジタルデトックス」といった言葉が一般化するなど、アナログ・オフラインの価値を見直す動きが広がっています。また、“デジタルネイティブ”世代の一部で、フィルムカメラやアナログレコードが「エモい」(emotional)として人気を集めているのも注目すべき現象です。レトロ趣味の側面もあるとはいえ、これもアナログが持つ感情価値の高さを示す例と言えるでしょう。

では、こうしたアナログ・オフラインの強みや価値を、実際のビジネスにどのように活かしていけば良いのでしょうか。続いて、具体的な事例を交えながら紹介していきます。

今すぐ取り入れられるアナログ・オフライン施策

アナログ・オフライン施策の中でも、比較的導入しやすく、かつ高い効果が期待できる手法のひとつが「手書きメッセージ」です。デジタルフォントでは表現しにくい“想い”や“温かみ”を伝えるのに適しており、顧客との関係性を深める上で大きな効果を発揮します。

代表的な例が、スターバックスの店舗で店員がドリンクカップに手書きのメッセージを添える取り組みです。ちょっとした一言が顧客に特別感をもたらし、ブランドへの好感度を高めています。

他にも、国内外でセレクトショップ『BEAMS』を展開し、DX推進企業としても知られる株式会社ビームスでは、ECサイトで商品を購入した顧客に感謝を伝えるため、全国のスタッフが手書きしたメッセージカードを商品に同梱するプロジェクトを実施しています。

参照:ビームス、自社ECサイトを利用するお客様へ、約7万枚のスタッフ手書きメッセージカードと動画で感謝を伝える、“「ありがとう」プロジェクト”を11月3日(水)からスタート|株式会社ビームス

手書きメッセージ以外では、以前『顧客が顧客を呼ぶ!? BtoB企業の「ファン作り」事例』という記事でも紹介したオフラインイベントが、顧客との関係構築やブランド体験の提供に効果的です。商品体験会や交流会、セミナー、ワークショップなどが定番ですが、中にはユニークなイベントを企画・開催している企業もあります。

例えば、神奈川・東京・埼玉でタクシー・ハイヤー事業を展開している三和交通株式会社では、夏季限定で横浜や東京の心霊スポットをタクシードライバーが案内する『心霊スポット巡礼ツアー』を開催。参加は抽選制で、倍率が62倍にものぼる人気イベントとなっています。

参照:今年も”あの夜”がやってくる「三和交通タクシーで行く、心霊スポット巡礼ツアー2025」情報解禁&抽選申し込み受付開始!|三和交通株式会社

次回の後半記事でも引き続き、アナログ・オフラインの強みを活かせる施策を実際の企業事例を交えて紹介します。

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