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事例・課題・展望

Digital Experience Monitoring(DEM)
~ユーザー体験を可視化する新たな監視軸~

前半では、DEM の基本概念、構成要素、導入のメリットなどについて整理しました。今回は、国内外の導入事例や、導入時の課題、今後の技術トレンド・展望などについて解説します。

国内外の導入例

DEMのユースケースは多様ですが、代表的なものを以下に紹介します。

SaaSプラットフォーム企業

サブスク型サービスにおいて、利用ユーザーの操作遅延・API応答遅延を把握し、障害発生前にアラートを発出。結果、サポート問い合わせ件数を 30%削減した例があります。

ECサイト運営会社

購入フロー段階での遅延や障害を可視化し、最適化した結果、コンバージョン率が改善。価格変動やプロモーション適用タイミングでのカート離脱も抑制できています。

金融機関/銀行系IT部門

オンラインバンキングやモバイルアプリの操作体験をDEMでモニタリングし、数秒級の遅延を検知 → 根本原因が外部API遅延であることを把握し改善した例があります。

グローバル企業(クラウド系)

世界各拠点のモニタリングを実施し、地域間ネットワーク遅延やクラウドプロバイダの地域特性可視化、グローバルでのユーザー体験の均質化を目指しています。

導入時の課題とその克服策

DEMの導入に際しては、前回留意点を述べましたが、いくつか克服すべきハードルがあります。

モニタリングによるオーバーヘッドとその対策

モニタリングの頻度によりシステムに逆に追加負荷を与える可能性があります。モニタリングの軽量化、サンプリング、非同期収集設計などが有効です。

ノイズと誤検知アラートの精度向上

異常と通常変動の境界を見極めるのは難しく、アラート監視によるオーバーヘッドを引き起こすことがあります。アラートのしきい値のチューニング、アラート抑制ロジックなどの継続改善が必要です。

プライバシー・セキュリティに対する情報保護

ユーザー操作ログには個人情報が含まれる可能性があるため、データ匿名化・マスキング・アクセス制御・用途限定保存を設計する必要があります。

組織文化と部門間連携

開発、運用、UX部門の壁を越え、異常発見から改善サイクルを回す文化づくりが鍵です。改善リード体制や サービスレベル定義の一致、レビュー会設などの組織連携が求められます。

初期導入コストとROI

最初から全面的に導入するとコストも上がるため、ツール導入コストや運用コストを正しく見積もり、最初は主要なユースケースに限定してスモールスタートし段階的に適用を拡大する戦略が有効です。

今後のトレンド・展望

DEMを巡る技術・市場動向を、今後の展開として予測します。現状のマーケットがまだこれからのところもあるため、想定となります。

AI/機械学習による予測検知

AIによって異常予兆を早期に察知し、未然対応できる予測型モニタリングが主流化する見込みです。

エッジ・IoT 対応の強化

モバイル端末、エッジアプリ、IoTデバイスの進化によりさらに体験の可視化が可能となり重要となるでしょう。

エクスペリエンスインテリジェンス

ユーザーの体験データを可視化し、ビジネス意思決定に活用する「エクスペリエンスインテリジェンス化」が進むでしょう。

DXM(Digital Experience Management)としての融合

監視から最適化・運用までが融合し、体験全体のマネジメントとしての実装が進む可能性があります。

まとめ

DEMはもはや「監視」の枠を超え、技術レベルとユーザー体験を融合させる事業インフラとなるでしょう。導入を成功させるには、技術力だけでなく、組織体制、文化、継続改善の仕組みを同時に整えることが不可欠です。初期段階では主要なサービス・トランザクションに絞って導入し、成果が確認できたら拡張していくアプローチが現実的です。

企業は、DEMを戦略的に取り入れることで、ユーザー体験の質を評価・改善し、信頼性と競争力を高めることができます。これからのデジタル体験時代において、DEM は欠かせない要素になっていくと言えるでしょう。

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