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RPAによる営業部門の変革事例

デジタル化・DX時代に営業部門はどう変わるべきか?<後半>

顧客が営業マンに求めるものとは?

顧客はいま、営業に何を求めているのでしょうか?

あくまで一例ですが、Hubspot社の「日本の営業に関する意識・実態調査2021」を見てみると、「どのような営業担当者が、買い手にとって誠意のある営業担当者だと思うか」という問いに対して、「社内でも気づいていない課題を発見し、解決策を提案してくれる」(38.4%)「本当の業務改善につながるなら他社サービスも含めて提案してくれる」(33.7%)「自社のアピールより顧客の課題ヒアリングを重視している」(30.4%)といった回答が上位に挙がっています。

「課題発見と解決策の提供」といえば当たり前のように思えますが、ポイントは「社内でも気づいていない」「本当の業務改善につながる」「課題ヒアリングを重視」あたりでしょう。つまり、ありきたりの課題に対して、ありきたりの商品・サービスで、ありきたりの解決を図ろうとするような提案は求めていないということです。

あるエンタープライズ営業のトップセールスマンは、「営業はクリエイティブな仕事である」と明言しています。営業は課題解決のためのソリューションをクリエイションし、顧客はそのソリューションの可能性にお金を払うというわけです。クリエイションと言っても形あるものとは限りません。営業が提供すべきは商品ではなく価値である、という言葉もある通り、顧客が求めているのは業務改善や売上アップなどの結果であって、サービスやソリューション自体ではないからです。予算や社内体制を度外視して言えば、そのための手段が最新のデジタルツールであろうが、ワークショップであろうが、新規事業であろうが構わないのです。

とはいえ、これまで手元の商品を何の工夫もなしに売ろうとしていた営業部門が、このようなクリエイティブな組織に生まれ変わるのは容易ではありません。なにより顧客ヒアリングや企画立案、マインドチェンジなどで、相当な時間の確保=働き方改革が必要です。ではどうすれば良いのでしょうか?

2020年に発売された『営業はいらない』(三戸政和・SB新書)という本によると、日本の営業マンは業務時間の54%を書類作成や会議などのルーティンワークに費やしているそうです。まずは、こうした時間を削減することが先決でしょう。そして、そのために有効なのがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というITツールです。

ルーティンワークの自動化が営業部門を変える

RPAは、資料作成やメール送信、Web検索など、パソコンを使ったルーティンワークをソフトウェア型ロボットに置き換え、自動化できるツールです。前回紹介したSFA/CRMに比べて導入も簡単で、短期間で効果を出しやすいのが特徴です。

他社の営業部門では、次のような業務の自動化にRPAが活用されています。

〈1〉情報収集の自動化

RPAのスクレイビング機能を活用すれば、ロボットが企業ホームページやビジネス・ニュースサイト等を巡回し、自社製品・サービスのニーズにマッチした企業をピックアップしてくれます。Excel上でのリスト作成も自動化できるので、法人営業に必須のアタックリスト作成に時間をかける必要がなくなります。

〈2〉営業レポートなど資料作成の自動化

あらかじめフォーマットを作成しておけば、RPAが必要なデータを基幹システムなどから取得し、売上実績や見込み金額を算出して営業レポートを作成してくれます。データ分析や企画立案にかかる時間の削減にもつながります。

〈3〉社内承認フローの自動化

見積書などの社内承認プロセスもRPAで一気に自動化できます。営業担当者は書類(必要であれば承認依頼書も)を指定フォルダに格納するだけ。その後の承認者への通知・送付から担当者への押印済み書類の返送まで、すべてロボットが代替してくれます。

〈4〉顧客リスト管理の自動化

ホームページから問い合わせのあった企業のリスト登録はもちろん、受注データや販売データなど複数のデータベースで管理している情報も自動で一元管理できるようになります。また、RPAを前回紹介したSFAツールと連携すれば、RPAで自動取得した見込み顧客データもそのままSFAに取り込めます。この連携によって、全社で1カ月1,000時間もの業務時間削減を実現した企業もあります。

前回説明したように、営業という職種はコロナ禍以前から大きな変革期を迎えています。今後の更なるデジタル化は不可避とは言え、それが及ぼす影響やその他の変化はまだまだ未知数です。

しかし、ただ一つだけ確かなことがあります。それは、御用聞き的意識の営業担当者はこれまで以上に厳しい立場に立たされるということです。

逆に言えば、冒頭で触れたようなクリエイティブな営業担当者や営業部門は、この先ビジネスの潮流がいかように変化しようとも、その価値が下がることは考えにくいということです。営業担当者、マネージャー、経営者は、そのために何を為すべきか、今こそ考えるべき時かもしれません。

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