調査結果から見えてきたDXの現状と課題
DXリポート2021<前半>
加速する企業のDX
新型コロナウイルス感染症拡大以降、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉はかつてないほど注目を集めています。しかしその一方で、「単なるバズワードじゃないの?」「本当に取り組む価値はあるのか?」と疑問を持っている方も、まだ多いのではないでしょうか。そこで今回は、コロナ禍以降に実施されたDXに関する調査結果をもとに、DXの現状や課題を紹介します。当然、調査によって対象企業やサンプル数は異なりますが、ざっくりとでも状況を把握するための参考にはなるはずです。
まずは企業のDX推進状況から見ていきましょう。
株式会社電通デジタル『日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)』によると、コロナ禍によるDXの取り組みへの影響については50%の企業が「加速した」と回答。また、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『第2回緊急実態調査』では、約3/4の企業がコロナ禍によってDX推進を減退させることはなく、中長期的に「加速する」という結果が出ています。
さらに株式会社アイ・ティ・アールが2020年8・9月に実施した『IT投資動向調査』によると、DXのための何らかの組織体(専任部門など)を有する企業は前年から3ポイント増の67%。と、このように、いずれの調査においても、コロナ禍を機に積極的にDXに取り組もうとする企業の姿が浮かび上がってきます。
そして気になるDXの成果はというと、先の電通デジタルの調査では48%の企業が「DXで成果が出ている」と回答しており、一般社団法人日本CTO協会の『DX動向調査レポート』(2021年4月)には「コロナ禍におけるDX投資の有無は、如実に業績の差として現れ始めている」と記載されています。恐らくその最大の要因は、外出自粛やソーシャルディスタンスの要請によって引き起こされた、消費者の購買行動におけるデジタルシフトでしょう。
しかしながら、こうしてDXに取り組み、成果を上げている企業が増えつつある一方で、必要性は認識しつつも、思うように推進できていない企業が多く存在するのも事実です。
そうした企業は一体何が問題なのでしょうか?
DXを阻む3つの課題
企業のDXを阻むもの。その代表例として、先に挙げた日本CTO協会『DX動向調査レポート』では、「顧客データの課題」「現行システムの課題」「人材育成・採用の課題」の3つが挙げられています。一つひとつ見てみましょう。
「顧客データの課題」
デジタル上に顧客との接点を設け、そこで得た情報をもとに商品の改善や新サービスの創出につなげるのがDXの王道パターン。具体的には、Webサイトやアプリ、リアル店舗とオンラインをシームレスにつなぐO2O(Online to Offline)、商品(モノ)をインターネット化するIoT(Internet of Things)などの手法が挙げられます。しかし、いまだに顧客との接点がオフラインしかなく、ビジネスに繋げられるようなデータを取得できていない企業も少なくありません。
「現行システムの課題」
DXでは、これまで一般的だったウォーターフォール開発ではなく、市場や顧客ニーズの変化に柔軟かつスピーディーに対応できるアジャイル開発が有効とされています。しかし、多くの企業で基幹システムが複雑化・ブラックボックス化しており、そのような動きに対応できない状況にあります。
「人材育成・採用の課題」
現在、企業が最も悩まされているのは、この「人」に関する課題かもしれません。先述の電通デジタルの調査でも、DXを推進する上での障壁として「デジタルやテクノロジーに関するスキルや人材の不足」がトップに挙げられていますし、経済産業省の『DXレポート』では、2025年までに日本全体でIT人材不足が約43万人まで拡大すると明記されています。
とはいえ、人材不足が話題に上るたびに、どこか釈然としない気持ちが残ってしまうのも事実です。なにせ随分と前から叫ばれていた問題です。いつまでもDXが進まない言い訳にしておいて良いのでしょうか? 絶対数が足りないといっても、企業側も獲得・育成のための努力を怠っていないでしょうか?
次回の記事で、その課題解決につながる取り組みを紹介します。