ここまで進んでいる!DX先進企業のビジネス変革
DXで顧客にWow!な体験を提供する<前半>
DXはチマチマしたものではない
今やビジネスに関するメディアで、デジタルトランスフォーメーション(以下:DX)という言葉を目にしない日はないと言っても過言ではありません。にもかかわらず、まだまだDXについて正しく理解できていない人は多いようです。
特に目立つのが、「ITツールの導入=DX」という勘違い。最近、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のような営業・マーケティング向けシステムのテレビCMも増えてきましたが、ああいったツールを導入することがDXであると思っているとすれば大間違いです。
DXとは、VUCA(ブーカ)と呼ばれる先行き不透明な現代において、企業の競争力を確保するために、デジタル技術を用いてビジネスや組織を変革すること。ITツールで個別業務の効率を改善するというような、チマチマしたレベルの話ではありません。
さらに言うと、DXにおけるビジネス変革とは、デジタル時代に相応しいビジネス、つまり「顧客体験重視のビジネス」への変革を意味します。実際にDX先進企業では、既にそうした取り組みが様々な形でおこなわれています。
.例えば、世界最大の家具メーカーであるイケアが、2017年にスタートさせたアプリ「IKEA Place」。AR(拡張現実)技術を活用したアプリで、ユーザーはスマートフォンのカメラで自室を映しながら、画面上に実寸大のバーチャル家具を置いて、サイズやデザインが合うか確認することができます。アプリのユニークさもさることながら、家具選びの際につきものの手間やストレスを軽減させてくれるという点で、まさに顧客体験を変えるサービスと言えるでしょう。その後、シチズン(腕時計のバーチャル試着)やグッチ(靴・スニーカーのバーチャル試着)なども同様のサービスを開始しています。
DXで顧客体験はこう変わる
ARと言えば、Amazonが2021年4月にロンドンで開業したヘアサロンも話題を呼んでいます。サロンの目玉のひとつがARを活用した鏡。どのヘアカラーを使えばどのような仕上がりになるのか、鏡に映してシミュレーションすることができます。
こちらも体験としての面白さはもちろんのこと、顧客は自分が納得したカラーで施術してもらえる。企業側はヘアケア関連商品の情報提供や商品購入を促すことができ、双方にメリットがあることもポイントと言えるでしょう。同サロンについてAmazonは現状テクノロジーのショーケースという位置づけで、店舗数を増やす計画はないそうですが、他の企業のサロンでも同様のサービスが広がっていくのではないでしょうか。
顧客体験を変えているテクノロジーは、当然ARだけではありません。ARと並べて語られることの多いVR(仮想現実)もそのひとつ。よく知られているのは、スマホやパソコン上で物件を3D体験できる、不動産のVR内覧でしょう。間取り図と内覧時の相違感が失客につながりやすいことを考えれば、業者側にもメリットの大きいサービスと言えます。
コロナ禍以降の旅行業界ではVRを活用したバーチャルツアーが盛況です。業界最大手のJTBは2021年4月、アジア向けに「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」というサービスの開始を発表。VR空間上に日本の街並みを再現し、観光やコンテンツ、ショッピングを楽しんでもらうことで、コロナによって激減したインバウンド消費の回復を狙っています。
もしかすると、今まで「顧客体験」という言葉を聞いても、流行りのマーケティング用語程度にしかとらえていなかった方もいるかもしれません。しかし、自分自身が顧客や消費者の立場に立ってみたらどうでしょう。上記のような取り組みをおこなっている企業とおこなっていない企業では、どちらを選びたくなるでしょうか?
DXで顧客体験を変革している企業はまだまだ存在します。次回も続けて紹介します。