デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

経営改革促進

2021年10月4日

アパレル業界で加速する「売り方」のデジタル活用

DX・デジタル化で劣勢挽回へ——コロナ禍で奮闘するアパレル企業<前半>

閉鎖的な国内アパレル業

新型コロナウイルスの感染拡大によって大打撃を受けた業界のひとつがアパレル業界です。東京商工リサーチの調査によると、2020年末の時点で、新型コロナ関連で倒産の多い業種のトップは138件の飲食業。続く2位が、79件のアパレル関連(製造・販売)でした。

こうした状況は新聞やテレビのニュースでも度々取り上げられていますが、とりわけインパクトが大きかったのは、2020年5月に発表された、名門レナウンの事実上の経営破綻ではないでしょうか。そのショックの余韻冷めやらぬ7月にも、かつて一世を風靡した女性向けブランド、セシルマクビーが全店閉鎖を発表し、世間に大きな驚きをもたらしました。

これら有名ブランド以外でも、いつも目にしていたアパレル店舗が、いつの間にか閉店しているのを目の当たりにした方も多いでしょう。経済産業省『商業動態統計』によれば、2020年の「織物・衣服・身の回り品小売業」の販売額は、前年比マイナス16.8%と大きく減少。2021年上半期は倒産件数が減少したようですが(東京商工リサーチ調べ)、5月に愛知県と岐阜県でアパレル関連企業の連鎖倒産が起こるなど、まだまだ予断の許さない状況が続いています。

一方で、生活者の衣料品に対する意識も変化しています。在宅勤務やステイホームの普及によって生じた服装のカジュアル化や、衣料品全般への支出優先度の低下といった流れは、一時的なものではなく、コロナ収束後も続くものと言われています。

ただし、このような変化は、何もすべてコロナ以降に始まったわけではないということも指摘しておくべきでしょう。ファストファッションの隆盛をみれば明らかなように、カジュアル化自体はずっと以前から進んでいましたし、支出優先度の低下については、SNSの登場で自己表現の手段が多様化したことが一因として挙げられています。あくまでコロナ禍は、そうした流れを加速させただけと言って良いかもしれません。

ではアパレル企業は、このような状況にどう対応すべきなのでしょうか。

これまで国内のアパレル業界は、他業界と比べて閉鎖的と言われてきました。目新しいデザインや取引先を探すために国内や海外を飛び回ることはあっても、売り方やサプライチェーンの在り方については新しいアイデアを採り入れようとしない、と。

しかし、もはやそんな悠長な姿勢ではいられませんし、事実、多くのアパレル企業が新しい取り組みを始めてもいます。あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)の必要性が叫ばれている現在、中でも目立つのが「売り方のデジタル・オンラインシフト」、つまりECです。

いまさら普通のECでは期待薄

いわゆる“3密”を回避して、24時間・365時間販売できることがECのメリット。とはいえ、いまさら何の工夫もなくECサイトを開設したところで成長は期待できません。ここでは最新のデジタル技術を活用した、ユニークな事例を紹介します。

中国での市場規模が約18兆円に達し(日本貿易振興機構調べ)、注目を集める「ライブコマース」という手法を採り入れたのがビームスです。ライブコマースとは、動画のライブ配信を通して商品を紹介・販売するサービスのこと。ビームスは2020年3月、公式ECサイト内に特設ページを設置。初回配信は6000人以上が視聴し、約1時間で100万円近くを売り上げています。

ECの弱点は、顧客と直接対面できないこと。洋服の青山は、その弱点を解消すべく様々な取り組みを始めています。2020年11月にリニューアルしたECサイトでは、実際のスタッフがコーディネートやおすすめ商品などの提案おこなう有人チャットサービスを導入。文字だけのやりとりではあるものの、オンラインでも顧客一人ひとりの好みやニーズに合わせた提案を実現しました。

さらに2021年7月には、同サイト内で「AIチャットボット スナックママ『よしこ』」なるチャットサービスをスタート。“日本一のスナック街”との呼び声高い宮崎県・ニシタチのママらのヒアリング技術を収集・解析したAIを搭載し、ターゲット層である若手ビジネスパーソンの悩みに回答することで、彼らとの関係強化を図っています。

この「スナックママ『よしこ』」のような、直接的な販売ではなく、コミュニケーションや認知拡大を目的としたデジタル活用は、他社でも着実に増えています。マーク ジェイコブス、ヴァレンティノ、アナ スイといったラグジュアリーブランドが、ニンテンドースイッチのゲーム『あつまれ どうぶつの森』に、アバター(プレイヤーの分身キャラクター)用のファッションアイテムを提供したのもそのひとつでしょう。日本のルームウェアブランド、ジェラード ピケは、同ゲームとのコラボコレクションを販売しています。

こうしたアパレルビジネスのEC化・デジタル化と併せて注目すべきは、それらと並行して起こりつつある「店舗の役割」の変化です。後半の記事で紹介します。

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