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経営改革促進

2021年10月11日

アパレル業界が二極化!? DXで成長する企業、変化できずに沈む企業

DX・デジタル化で劣勢挽回へ——コロナ禍で奮闘するアパレル企業<後半>

デジタルが生み出したアパレル店舗の新たな役割

アパレル店舗に新たな役割を付与した要因のひとつとして、リアル(店舗)とオンライン(EC)の販売チャネルを統合する「オムニチャネル」戦略、中でもスペイン発のブランド、ZARA(ザラ)の成功によって世界のアパレルの潮流となった「クリック&コレクト(C&C)」という手法の普及が挙げられます。

クリック&コレクトとは、ユーザーがネットで注文した商品を店舗で受け取ることのできるサービスのこと。つまり、このサービスによって、実店舗に「EC商品の受け取り場所」という新たな役割が加わったというわけです。

クリック&コレクトの主なユーザーメリットは、店舗が近ければすぐに商品が手に入ること、ECにありがちな「想像していた商品と違う」というトラブルを避けられることです。企業側も、物流倉庫ではなく店舗在庫を引き当てて店渡しするため、商品の配送コスト削減や店舗の在庫効率を向上させるメリットがあります。

国内ではアーバンリサーチが早くからクリック&コレクトを導入していましたが、コロナ禍で大々的に取り組みを始めたのが作業服大手のワークマンです。導入目的のひとつが、安価な品揃えのEC専業企業への対抗。
そのため、低価格のプライベートブランド(PB)製品が揃ったタイミングで新サイトをオープンし、最短3時間で受け取り、その場での試着やサイズ変更も可能など、ECでは不可能なサービスを用意。2021年3月期のEC売上高は、24億4000万円と発表されています。

クリック&コレクト以外の手法でも、これまでにない形で店舗を活用している事例はあります。例えば、アーバンリサーチのARを活用したバーチャル試着サービス。人と服が3D表示されるモニターが設置されており、来店客は服を選んで、手元のiPodでサイズなどを調整するというものです。ECサイトと連携しているので、気に入った服をそのまま購入することもできます。

アーバンリサーチの店舗では通常の接客販売もおこなっていますが、店舗の役割を「採寸」に特化している企業も存在します。それが、以前『業界破壊者の襲来とDX格差を目前に企業がすべきこと』という記事でも紹介した、オーダーメードスーツブランドのFABRIC TOKYO。店舗では店員による採寸と商品提案のみで、オーダーはECサイトでのみ受け付けています。

業界によってIT・デジタルの活用法は様々ですが、コロナ禍という状況下、小売り主体のアパレル業界においては、こうしたEC活用の流れは当分とどまることはないでしょう。とはいえ当然ながら、アパレル企業のデジタルシフトはECに限るわけではありません。

低コストでも可能な業務改革

特に今後デジタルシフトの加速が予想されるのが、アパレル企業に付きものの課題、物流や在庫管理、あるいは働き方改革といった「守りの領域」です。

現在よく知られているのは、およそ1,000億円を投資し、AI(人工知能)やロボティクス技術を活用して物流倉庫の完全自動化を進めているユニクロの取り組みでしょう。しかし、すべての企業が同規模の取り組みを実現できるわけではありませんし、喫緊に対応する必要もないはずです。それよりも、もっと身近な場所の業務を見直してみるのも良いかもしれません。

例えば全国の商業施設に店舗展開している某アパレル企業では、低コストで導入も容易なRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というITツールを使って、業務自動化を成功させています。

RPAは、入力や資料作成、メール送信など、定型的かつ属人的なパソコン作業を自動化できるソフトウェア型ロボットです。同社の課題は増え続ける人件費。店舗スタッフを少なくしては顧客エンゲージメントの低下を招くため、本社事務スタッフの残業時間削減を目的に導入しました。そして給与計算や会計システムへの入力、Excelへの売上・販売レポートの作成を自動化した結果、合計で年間2,000時間の業務時間削減を実現しています。

前回記事の冒頭で、2020年5月に起きたレナウンの経営破綻を取り上げました。同件については、タイミング的に「コロナ倒産」と扱われることもありますが、実はそれ以前から業績が相当悪化していたことも知られています。

要因としてはバブル期の過大投資や中国親会社との対立が大きいようですが、他方で「旧来の販売戦略への固執」「新技術導入の遅れによる効率面での劣勢」などが、深刻なブランド力・競争力の低下を招いたとも言われています。つまり、変化が必要な時代に変わることができなかったということです。同時期に全店閉鎖を発表した、セシルマクビーを運営する株式会社ジャパンイマジネーション会長兼社長の木村達央氏も、「時代の急激な変化に対応できなかった」といったようなことをインタビューで語っています。

同じく前回記事で、「国内のアパレル業界は閉鎖的で他業界の優れた点を学ぼうとしない」と述べましたが、海外のアパレル企業は決してそうではありません。先程クリック&コレクトの説明でも名前を挙げたZARAが、トヨタの生産システムを再構築し、多品種少量生産やサプライチェーン全体の効率化を実現させたのは有名な話です。

そして国内でも、今回紹介したように新しい取り組みを始める企業が次々に登場しています。コロナ禍で上場以来初の赤字に転落したユナイテッドアローズも、2021年4月に社内にDX推進センターを設立し、「デジタル技術を駆使した新たな顧客価値の提供とビジネスモデルの確立を目指す」と宣言しています。

DXとはデジタルの力でビジネスや組織を変革すること。今後アパレル業界は、時代の波に合わせて変化し続ける企業と、閉鎖的なまま変われずに時代の波に呑まれて沈んでいく企業の二極化が進んでいくのかもしれません。この『DX-labo』には他業界の様々なDX事例が紹介されていますので、現状を変えたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

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