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経営改革促進

2022年3月14日

DXによるUX向上・創出事例とUX設計のポイント

DX戦略で重要な「UX」とは?<後半>

DX×UXで業界の常識を覆す

「価値の高いUXを提供するためにはDXが有効」という前回の話に引き続き、今回はDX推進企業のUX施策事例と、UXを設計する上でのポイントを紹介します。

株式会社りそなホールディングスのUX施策事例

経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄」に、2020年・2021年と、2年連続で選ばれた株式会社りそなホールディングス。同社はオンライン/オフライン問わず、積極的にUX向上に取り組んでいます。

オンラインでの代表的な取り組みが、2018年にリリースしたスマホアプリ『りそなグループアプリ』です。アプリのコンセプトは「銀行を持ち歩く」。口座残高や入出金明細の確認、振込、振替といったインターネットバンキングの基本的な機能が備わっているだけでなく、AIが口座状況や取引を分析し、貯金についてのアドバイスや金融商品の提案をおこなうなど、銀行に足を運ばずともスマホ上で同レベルのサービスを体験することができます。

しかし何より注目すべきは、各種サービスの需要喚起を通じて、同社の売上アップに大きく貢献していること。2020年3月にはアプリ利用者数がATM利用者数を越え、2021年には400万ダウンロードを突破。ユーザーに新たな銀行体験を提供するとともに、デジタルを起点とした新たなビジネスモデルを確立しています。

オフラインでの取り組みもユニークです。一部店舗でセミセルフ端末を導入し、キャッシュカードさえあれば通常ATM外の取引も「伝票レス・印鑑レス」での手続きを可能に。同時にセミセルフ端末とオフィスの端末を結合して顧客の取引を一元管理することで、事務作業の大幅な効率化を実現しています。こうした施策により、窓口業務終了後の勘定集計業務が不要になり、銀行の常識であった窓口の「3時まで営業」を覆し、「5時まで営業」を実現しています。

参考:デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020|経済産業省、株式会社東京証券取引所

目的はテクノロジーではなく「ユーザー」

株式会社Nature Innovation Group『アイカサ』のUX施策事例

大手企業ばかりではありません。“傘”のシェアリングサービス『アイカサ』を運営する株式会社Nature Innovation Groupは、UXを追求しながら、「傘を持ち歩かない生活」という今までにない体験を創出しています。

ユーザーは傘が必要になったら、アプリで近くの『アイカサスポット』(駅や大学、商業施設に設置した置き傘コーナー)をチェック。傘立てにアプリをかざすだけでレンタルでき、返す場所も最寄りの『アイカサスポット』を選択することができます。

こうしたユニークなサービスは話題先行で実績が伴わないケースも多々ありますが、『アイカサ』は順調に成長しているようです。2018年のローンチ以降、IoTを活用してリアルタイムでの在庫確認を可能にしたり、熱中症対策のために日傘のレンタルを導入したりと何度もUXのアップデートを重ね、アプリ登録者数は既に20万人を突破。ビニール傘の使い捨て率0%を目指すなど、SDGsの面においても注目を集めています。

参考:日本の脱炭素化に前進、傘のシェアリングサービス「アイカサ」アプリ登録者数20万人達成。使い捨て傘ゼロを目指し全国で急成長中|株式会社Nature Innovation Group

前回記事でも述べた通り、現在のビジネスにおいてUXは決して無視できる存在ではありません。ガートナージャパンが2021年11月に発表した『日本におけるユーザー・エクスペリエンスのハイプ・サイクル:2021年』では、今後UXの向上に関わる主要なテクノロジーとして、AR (拡張現実)やVR (仮想現実)、スマート・ロボット、次世代ドローン、五感センサなどが取り上げられていますが、おそらく近い将来、これらの先端技術を活用した事例が続々と登場してくるのは間違いないでしょう。

しかし、どんなに新しいテクノロジーを使ったところで、その体験にユーザーが価値を感じるかどうかは、また別の話です。テクノロジーはあくまで手段。価値あるUXを実現するためには、テクノロジー中心ではなく、前回も述べたように「ユーザー中心」の設計が重要です。

一般的なUX設計の流れは、インタビューやデータ分析、行動観察などをおこない、ペルソナを設定し、ユーザーの商品・サービス体験の流れを可視化するカスタマージャーニーマップを作成するというもの。そして、こうした一連の仮説をもとにUXを創出・改善するためのアイデアを出していくわけですが、その際に効果的とされているのが「デザイン思考」と呼ばれる思考プロセスです。

デザイン思考とは、「正解」を導き出すためのロジカルシンキングとは異なり、ユーザー自身も気付いていない潜在的なニーズや、前例のないソリューションを生み出すのに適した思考法。下図のように、「共感」「問題定義」「創造(アイデア出し)」「プロトタイプ」「テスト」の5つのステップを繰り返す、アジャイル開発に似たアプローチです。

「共感」「問題定義」「創造(アイデア出し)」「プロトタイプ」「テスト」の5つのステップを繰り返す、アジャイル開発に似たアプローチ

(デザイン思考の具体的な進め方については、SmartStage『デザイン思考5つのステップ』の記事で詳しく解説していますので参考にしてください)

極端な言い方をすれば、企業がUX向上を実現できるか否かは、どれだけ自社のビジネスに問題意識を持っているか、また、どれだけユーザーの悩みや課題を自分事化できるかに掛かっています。実際に成功させるには中・長期的な取り組みが欠かせませんが、まずは前回紹介した『UXハニカム』を参照し、UXの視点から改めて自社のビジネスを見直してみるのが良いかもしれません。

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