デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

経営改革促進

2022年7月11日

今こそ“シン・中小企業”へ ~中堅・中小企業のDX事例~

シン・中小企業!〜中堅・中小企業で進むDX〜<後半>

ソロバンからAIへ

DXを推進するにあたって、中堅・中小企業には大企業にはない強みがあります。そんな中堅・中小企業のDX成功事例として広く知られている2社の事例を紹介します。

■有限会社ゑびやのDX事例

三重県伊勢市で創業100年を越える飲食店を営む有限会社ゑびや。一般に老舗企業と言えば、良い意味でも悪い意味でもアナログにこだわっているというイメージがありますが、同社も例に漏れず、少し前まで“会計はソロバン、経営判断は勘と経験頼り”という超アナログ経営をおこなっていたそうです。

そんな“当り前”を覆し、率先して改革に着手したのが、今後の競争力に不安を抱えていた経営者でした。当初の目標は生産性向上。そのために勘ではなくデータに基づいた経営をおこなえるよう、手元にあった1台のパソコンを使って自らデータの収集・管理に取り組み始めたのです。

並行して従業員のリスキル(学び直し)にも取り組みながら、IT・デジタルでのアプローチは本格化。AIなどの最新技術も積極的に導入し、ついに自社保有データと地元の観光業向けプラットフォームのオープンデータを融合して来客数を予測するツールを開発するまでに至ります。業績は約7年かけて客単価3.5倍、売上5倍、利益50倍を達成。ソロバンからAIへ、見事なDX成功事例と言えるでしょう。

参考:デジタルガバナンス・コード実践の手引き(要約版)|経済産業省
参考:有限会社ゑびや|中小企業庁

■株式会社木幡計器製作所のDX事例

株式会社木幡計器製作所は圧力計などの計測・制御機器を扱うメーカー。近年は比較的安定した経営を続けていたものの、業界の将来に危機感を覚えつつあったことから、早めの対策としてDXをスタートさせました。

既存の市場では先細りが懸念されるため、当初から新たなビジネスモデルを模索。そこで目を付けたのが、製品納入後の計器計測・管理業務でした。それまで計測や保全に関する業務は主に納入先のユーザーやビルメンテナンス事業者が担当するのが一般的でしたが、人材不足やコスト削減を理由に省力化されつつある傾向にあったのです。

そこで同社は、地元企業と連携しつつ、無線デバイスなどのIoT技術を活用した圧力計を開発。計器の遠隔監視し、計測結果をクラウドサーバに送信できるシステムを実現したのです。その後は、同製品をアレンジした機器を医療機関などの異業種への提供もスタート。納入すれば完結するフロー(売り切り)型のビジネスからストック(継続)型ビジネスへと、新たなマーケットを創出したのです。

参考:中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書|独立行政法人 情報処理推進機構

中堅・中小企業DXの注意点 スモールスタートだけではダメ

中途・中小企業には大企業にはない強みがあるとはいえ、当然ながら、すべての中堅・中小企業のDXが上記2社のように上手くいくとは限りません。強みとは反対に、規模の小さな企業だからこそ注意しておきたいポイントもあります。

その一つが“スモールスタート”に関する注意点です。DXは全社的な変革を目指す取り組みですが、人も資金も限られた企業が、いきなりそのようなやり方で始めるのは現実的とは言えません。さすがに有限会社ゑびやのようにパソコン1台で、というのは珍しいものの、クラウドツールで特定の業務を効率化したり、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)でパソコンによる事務作業を自動化したりしながら、いくつか小さな成功体験を重ねた後で組織全体に拡大していく、というやり方が効果的とされています。

ただし、そのスモールスタートの際に忘れてはいけないことがあります。それは、一見矛盾するようですが、中・長期的な視点で取り組むことです。スモールスタートでありがちな失敗が、「クラウドやAIを使ってなにかできないか」といった思いつきのような姿勢で始めてしまうこと。しかし、どんなに優秀なクラウドやAIでも、たちどころに業績を向上させた事例などほぼ見られません。にもかかわらず、中堅・中小企業だけでなく大手企業でも、ツールの導入が目的となってしまってPoC(実証実験)倒れに終わる事例は枚挙にいとまがないのです。

ちなみに、ここで言う中・長期的な視点とは、スケジュール的なことではなく、5年~10年後に自社がどんな会社でありたいか、顧客にどんな価値を提供できるようになっていたいか、といった目標やビジョンを指します。そしてその上で、実現に向けて、戦略的な投資と地道な試行錯誤に取り組む心構えが必要ということです。

見方を変えれば、中・長期的な取り組みが必要であるということは、他社よりも早くスタートすることがそれだけで優位性につながるとも言えるでしょう。DXで自社を新たな時代の中小企業――最近流行している映画のタイトルをもじって言えば“シン・中小企業”――へ変革できるかどうかは、今この時にかかっていると言っても過言ではないかもしれません。

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