「DX銘柄」の概要と選定趣旨
DX銘柄2022
~2022年のDXグランプリ銘柄を含めて解説~<前半>
デジタルトランスフォーメーションの推進に向けて
経済産業省は、国内企業の戦略的IT利活用の促進に向けた取組の一環として、東京証券取引所と独立法人情報処理推進機構と共同で、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」を選定しています。
もともとは、2015年より中長期的な企業価値の向上や競争力の強化のために、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業を、「攻めのIT経営銘柄」として選定してきました。2020年からは変更し、デジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を、「DX銘柄」として選定しています。
全体的にDXの取り組みが進んできている
経済産業省は、毎年「DX銘柄」選定時に対象企業の調査を行い、全体的な傾向の分析レポートを作成しています。2022年の傾向を2021年と比較すると、全ての評価項目でスコア改善が見られるとしています。これは「DX銘柄」に選ばれるような優秀な企業だけではなく、DX注目企業やDX認定取得企業といわれる企業においても同様な傾向が見られます。
つまり、一部の先進企業のみならず多くの企業でDXに関する取り組みが徐々に進んでいるということです。ただし調査対象となっている企業は上場企業に限られ、中小企業を中心とした多くの非上場企業の実態は、今回の調査では明らかにはなっていません。
こうした留意点はあるものの、大企業を中心にDXが進展しつつあると考えられます。経済産業省は、これまで海外に比べて日本の企業ではDXの推進が遅れている、との指摘を繰り返してきましたが、少しずつ風向きが変わってきたと考えられます。
「DX銘柄2022」の選定プロセス
① 「デジタルトランスフォーメーション調査2022」の実施
まず、東京証券取引所の上場会社約3,800社を対象に 「デジタルトランスフォーメーション調査2022」を実施しています。そのうち、回答があった企業 401社のなかで※「DX認定」を取得している企業を選定対象としています。(2021年12月1日時点)
参考:「DX認定」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
一次評価の評価項目は以下の内容となります。
- Ⅰ.ビジョン・ビジネスモデル
- Ⅱ.戦略
- Ⅱー①.戦略実現のための組織・制度等
- Ⅱー②.戦略実現のためのデジタル技術の活用・情報システム
- Ⅲ.成果と重要な成果指標の共有
- Ⅳ.ガバナンス
② 一次評価:「選択式項目」及び財務指標によるスコアリング
アンケート調査の「選択式項目」及び3年平均のROEに基づき、スコアリングし、一定基準以上の企業を候補企業として選定します。
※ ROEの直近3年間平均は、2021年3月末起点としています。
※ スコアリング基準についてはDX銘柄評価委員会にて決定しています。
③ 二次評価及び最終選考
二次評価の評価項目は、大きく「企業価値貢献」および「DX実現能力」の観点から行われます。
まず、一次評価で選定された候補企業について、アンケート調査の「記述回答(企業価値貢献、 DX実現能力)について、DX銘柄評価委員が評価を実施します。その結果をもとに、DX銘柄評価委員会による最終審査を実施し、業種ごとに優れた企業を「DX銘柄」として選定します。
また、「DX銘柄2022」に選定されていない企業の中から、特に企業価値貢献部分において、 注目される取組を実施している企業を、DX銘柄評価委員会の審査により「DX注目企業」として選定します。 さらに、企業の競争力強化に資するDXの推進を強く後押しするため、「DX銘柄」選定企業の中から、業種の枠を超えて、デジタル時代を先導する企業を、「DXグランプリ」として選定します。
「DX銘柄2022」は計33社で、そのなかでも優れた企業が「DXグランプリ」2社で「DX注目企業」が15社となっています。
今回は、経済産業省がDXの推進に向けて選定する「DX銘柄」の趣旨や、選定基準や方法、そして企業のDXの進み具合などについてお伝えしました。次回は「DX銘柄2022」のなかでもグランプリに選定された2社の取り組み内容について具体的に解説していきます。