デジタルトランスフォーメーションをもっと身近に

経営改革促進

2023年11月6日

インセンティブは逆効果?モチベーションに関するよくある“勘違い”

DXでも重要!「従業員モチベーション」を向上するためのポイントとは?<前半>

モチベーションと生産性の関係

今や従業員のモチベーションは“企業競争力の源泉”と言われるほど、ビジネスにおいて重要視されています。社員のモチベーション向上を経営課題として捉えている経営者やマネジメント層も多いでしょう。また、こうしたメディアではあまり取り上げられませんが、当然DXを推進する上でも従業員モチベーションは欠かせない要素です。どんなに素晴らしいIT・デジタル技術を導入しても、現場の士気が乏しければイノベーションも組織改革も望めません。

一般にビジネスにおいてモチベーションという言葉は、「勤労意欲」や「やる気」といった意味で使われていますが、学術的には「目標に向けて行動を方向づけ、活性化し、そして維持する心理的プロセス」(Pinder, 2008;Michell, 1997)などと定義されており、意欲そのものというより、“意欲を喚起し、支える力”といった意味で使われています。

企業経営との関わりでモチベーションが着目されるようになったのは約100年前。1920~30年代にアメリカでおこなわれた「ホーソン研究」という実証実験に参加したハーバード大学経営学大学院の教授らが、労働者の心理的要因が成果=労働生産性に大きく影響を与えるという論文を発表したことがきっかけと言われています。

とはいえ、その重要性は認識していても、思うように部下のモチベーションが上がらず悩んでいる方は多いでしょう。何より他人から「やる気を出せ!」と口酸っぱく言われれば言われるほど下がっていくのがモチベーションのやっかいなところ。もちろん、そのような前時代的なアプローチがいまだに通用すると思っている人は少ないと思いますが、しかし色々なやり方を試しても上手くいかないのであれば、それはモチベーションについて古い理解のままであるか、誤解をしていることが理由かもしれません。

モチベーション向上に重要な3つの欲求

モチベーションに関する勘違いで最も多いのは、「モチベーションを上げるためには、金銭的なインセンティブを設けなければならない」というものでしょう。しかし、それが必ずしも正しいと言えないことは様々な心理学者によって明らかにされています。

その代表的存在が、人事管理の分野で広く用いられている「認知的評価理論」の提唱者の一人、アメリカの心理学者エドワード・L・デシ氏。デシ氏は、モチベーションは報酬や昇進、あるいは罰・ノルマなどによって促される「外発的モチベーション」と、仕事に対する興味や関心、楽しさなど、その人の内側から行動が促される「内発的モチベーション」の2種類に分けられ、後者の「内発的モチベーションのほうが意欲は長続きしやすく、パフォーマンス向上にもつながりやすい」と述べているのです。

さらにデシ氏には、「内発的モチベーションにより促されている行動に対して金銭的な報酬を提示すると、皮肉にもモチベーションを弱めてしまう」という研究結果もあります。その理由は行動の目的が行動そのものから報酬に変わってしまうため。こうした現象は「アンダーマイニング効果」と呼ばれ、しばしば安易な業績給導入の失敗要因として取り上げられることがあります。

では、内発的モチベーションを向上させるにはどうすれば良いのでしょうか?
デシ氏の「自己決定理論」によると、人間は生存のための生理的欲求の他に下記3つの基本的な心理欲求を持っており、それらを充足させることが内発的モチベーションの向上をもたらすということです。

「自律性(自己決定感)の欲求」

自身の行動を自分で決定し、自己責任性を持ちたいという欲求

「有能性の欲求」

物事をやり遂げる自信や自己の能力を証明する機会を持ちたいという欲求

「関係性の欲求」

周囲の人と密接な関係を持ち、友好な連帯を持ちたいという欲求


2つ目の「有能性の欲求」について付言しておくと、先ほど外的な報酬が内発的モチベーションを低下させるアンダーマイニング効果について説明しましたが、あらゆる報酬が悪影響を及ぼすという訳ではなく、受け手が自身の貢献や取り組みに対する評価・謝意を実感でき、“有能感”を実感できる形の報酬であればモチベーションは強化される、とデシ氏は述べています。

では次回の後半記事では、これらの欲求充足を通して従業員モチベーションの向上に取り組んでいる企業の事例を紹介します。

share
  • AI-OCRエンジンを採用、RPA連携による完全自動化のOCRサービス「CREO-OCR」
  • BizRobo!を月額6万円から利用可能、従量課金RPAサービス「CREO-RPA」
  • サービスデスク
  • プロセス管理
  • クラウドシフト
  • 人事給与
  • ハイブリッド購買
  • 情シス
  • 社労士
  • 会計士
  • Method
  • DXセミナー

記載された商品名・製品名は各社の登録商品または商標です。