クロステックのさまざまな分野と事例
クロステック(X-Techとは)
~クロステックのさまざまな分野への広がり~<後半>
前回は、クロステックの概略、DXとの関係、クロステックで使われるテクノロジーなどについて解説しました。今回は、クロステックのさまざまな分野と事例について紹介します。
クロステックのさまざまな分野
フィンテック(FinTech)
「フィンテック」は、「Finance(金融)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。モバイル決済が代表例ですが、オンラインで口座の参照や振り込みが行われる会計サービス、ビッグデータ分析やAIを使って信用を評価するサービスなども誕生しています。
- 【主な事例】
- ・BitCoin(仮想通貨)
- ・LINE PayやPayPay(電子決済サービス)
- ・投資や資産運用のロボアドバイザー
ヘルステック(MedTech)
「ヘルステック」は、「Helthcare(医療)」と「Technology」の造語です。電子カルテやインターネットによる受診予約などが代表例で、既にペーパーレス化や人件費削減につながっています。最新の事例としてはCTスキャンやレントゲン画像などからAIを使って病理を見つけ出す実証実験などもあり、今後が大きく期待されています。
- 【主な事例】
- ・電子カルテ
- ・診察のオンライン予約
- ・薬歴保存システム
アグリテック(AgriTech)
「アグリテック」は、「Agriculture(農業)」と「Technology」を掛け合わせた造語です。高齢化が進み人手不足が叫ばれている農業分野では、AIやIoTなどのIT技術を導入することで作業の効率化を図ろうとしています。
- 【主な事例】
- ・ドローンによる農薬の散布に劇的な効率向上
- ・気温や温度などのデータの見える化による技術の継承
- ・農業機械の自動運転
エドテック(EdTech)
「エドテック」は、「Education(教育)」と「Technology」を掛け合わせた造語で、教育を支援する仕組やサービスを指します。タブレット端末を使ったオンライン授業やペーパーレス授業などが代表例です。また、AIを使った授業・学習支援システムなども当てはまります。
- 【主な事例】
- ・eラーニング/オンライン授業
- ・AI活用による授業支援・評価システム
- ・VRを活用した教材/カリキュラム
スポーツテック(SportsTech)
スポーツテック(SportsTech)は、運動を意味する「Sports」に「Technology」を組み合わせたものです。一言にスポーツといっても、数多くの競技があり、それぞれの競技の特徴に合わせて幅広く活用されはじめているのがSportsTechです。
- 【主な事例】
- ・ラグビー/サッカーなどのフォーメーション分析
- ・野球/ゴルフなどのスイングやボール回転/スピード分析
フードテック(FoodTech)
フードテック(FoodTech)は食を意味する「Food」と「Technology」の組み合わせです。フードテックでは以下のような課題と取り組み例が挙げられます。必ずしもデジタルテクノロジーだけで解決できるものではないですが、さまざまな技術が必要とされる分野です。
- 【主な事例】
- ・賞味/消費期限のデジタル管理による食品ロスの軽減による飢餓問題の解決
- ・センサーやロボティクスなどを使った無人農場による将来的な食料不足解消
クロステックの具体的な事例
フィンテック(ステーブルコインの発行準備:MUFG)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、ブロックチェーン技術を使った仮想通貨の一種であるステーブルコインを2024年に発行すべくさまざまな企業とともに準備を始めています。
ステーブルコインとは、価値がほぼ一定で変動しない仮想通貨のことです。これは通常、法定通貨(例: 円やドル、ユーロ)などと連動しています。主な目的は、仮想通貨市場での価格の揺れから保護され、より安定して使える通貨を提供することです。
ビットコインなどの一般的な仮想通貨と同様に、ステーブルコインもブロックチェーン技術を使うため、基本的には、中央集権型の巨大なシステムを必要とせずに、ブロックチェーンの特徴である分散型の台帳といわれる仕組みを使って、改ざんなどを防ぎ取引履歴を管理することができます。そのため、フィンテックによる仮想通貨が一般的に流通し始めると銀行自体の存在意義も変わる可能性もあります。
この事例のように、クロステックは新しいデジタル技術をある分野に投入することにより、将来的にはその分野そのものの枠組さへ変えてしまうような大きなインパクトをもたらす可能性を秘めています。
まとめ
クロステックという言葉は、少し前からクロステックセミナーなどさまざまな場面で聞くようにはなっていました。しかし、昨今DXの推進がいわれるなか、デジタル技術が各分野へもたらすビジネスへのインパクトは大きくなっているともいえます。さらに、分野をまたぐ社会課題の解決などには向いているともいえるでしょう。