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経営改革促進

2021年4月12日

購買・調達部門のDX実現に必要な基盤とは?

DXで変わる購買・調達部門 ——コストセンターからプロフィットセンターへ——<後半>

3つの業務フローを見える化することが重要

企業問わず、購買・調達部門の課題として多く挙げられるのが、業務のブラックボックス化です。とりわけ深刻なのが、要求部門から調達部門への依頼内容、購買・調達部門からサプライヤーへの発注内容、組織・企業間のやりとり状況が第三者から見えない状況。

これら3点を「見える化」し、購買・調達業務を一気に効率化させるのが、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)ツールをベースにした購買・調達プロセス管理が可能なITツールです。BPMツールは業務プロセス改善のためのソフトウェアのことで、ワークフローをデジタル上に集約・標準化して、個別業務およびプロセス全体の最適化を実現することができます。
他のITツールにはないメリットは次の3つです。

〈1〉業務プロセス全体をカバーできる

見積りなど単一業務に特化したクラウドシステムとは違い、「購買申請登録」「サプライヤー選定・見積依頼」「審査・契約」「発注」「納入・検収」「支払い」さらに「在庫管理」と、購買・調達に関わる業務全体をカバーできます。自社関連部門、サプライヤーとの見積情報やステータスの共有も可能。サイロ化した組織に横串を通してブラックボックス化を防ぎます。

〈2〉自動化で業務時間を削減できる

リマインドやアラートなどの自動化もITツール利用の利点のひとつです。遅れている案件の担当者への通知ならびに取引先へのフォロー、回答期限を過ぎた取引先や社内決済担当者への催促通知などを、自動で送信することができます。属人的に管理していた作業が自動化され、業務時間が大幅に削減されます。

〈3〉柔軟性が高い

柔軟性が高く、既存の業務プロセスや商習慣を変更することなく導入可能です。カスタマイズも容易なのがBPMツールの強みなので、業務プロセス変更の際も迅速に対応。運用・開発の専門知識も不要です。

続いて、BPMツールをベースにした購買・調達プロセス管理を実践して、業務効率化とコスト削減を実現した事例を見てみましょう。

舶用機器の製造・販売やメンテナンスを手掛ける大手企業。親会社に依存したビジネスモデルから脱皮すべく、外販拡大へと舵を切った際に導入したのがBPMツールをベースにした購買・調達システムでした。

導入目的は業務効率化の他、調達実績をデジタルデータ化して記録・集計・分析できるようにすること、取引先との進捗管理を実現すること、そして集中購買によって調達コストを最適化すること。BPMベースのシステムに決めた理由は、「目的実現のためには調達プロセス全体のシステム化が不可欠だったから」と担当者は語っています。

導入後は紙ベースのやりとりから解放され、2~3時間かかっていた作業が20~30分に短縮。進捗状況を共有することで対応漏れもなくなりました。何より大きな効果は、発注実績が「見える化」できるようになったこと。「依頼しやすいから」「短納期だから」といった理由ではなく、過去の類似プロジェクトの分析などを通して、実績に基づいた最適なサプライヤー選定と価格交渉が実現できるようになったそうです。

購買・調達部門に秘められた可能性

BPMツールをベースにした購買・調達システムは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI-OCRとの連携することで、さらなる相乗効果が期待できます。RPA とはデータ入力やメール送信、検索などの定型的なパソコン作業をロボットで自動化できるITツール。AI-OCRは、紙の見積書やFAXなどに書かれた文字をデジタルデータ化できる光学的文字認識ソフトウェアです。

ある大手情報・通信企業の購買部門では2017年にRPAを導入し、事務的作業において年間60,000時間以上の時短と30%のコスト削減を達成。その後AI-OCRを連携させ、請求書対応など、年間60,000件にも及んでいた紙に関する作業の半数以上を自動化させたということです。

もちろん将来的には、サプライヤー選択や見積査定の意思決定においてAIの活用も進んでいくでしょう。しかしそれを実現させるためには、デジタルによる業務の標準化・システム化が必須です。BPMツールをベースにした購買・調達システムの導入は、そのための基盤づくりと言って良いかもしれません。

また、「見える化」については、内部統制の観点からも重要です。数年前、サプライヤーとの癒着が明るみになった大手企業の調達部門社員が懲戒処分を受けたニュースもありましたが、ブラックボックス化した環境は担当者同士の馴れ合いを助長しかねないからです。企業に対してますますコンプライアンスが求められている現在、不正の温床ともなりかねないリスクを放置するわけにはいきません。

「コストセンター」「間接部門」などと呼ばれている購買・調達部門ですが、一方で変革を期待する声も高まっています。何と言っても企業のモノづくりを支える組織。購買・調達力が底上げされれば、おのずと製品の質は向上しますし、イノベーティブなプロダクトが生まれる可能性も高まります。そうなれば、現在、国際競争力の低下が叫ばれている日本のモノづくりだって劣勢を挽回できるでしょう。

そう、購買・調達部門は「コストセンター」どころか「プロフィットセンター」として、企業や国の競争力の源泉となりうる可能性を秘めた部署なのです。DXの推進こそが、その可能性を広げるための第一歩となるべき取り組みであるはずです。

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