企業にとってペーパーレス化が重要な理由
DXに不可欠!ペーパーレス化成功のポイント<前半>
DXに不可欠な「レス」のひとつ
近年、特にコロナ禍以降、メディアではデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)の重要性・必要性が連日のように叫ばれています。とはいえ、まだまだ多くの企業が、すぐにDXを始められる状況にないというのが現実ではないでしょうか。
この『DX-labo』でも何度も繰り返している通り、DXとはIT・デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織を変革する全社的な取り組みを指します。本格的に推進しようとすれば、技術面以外でも、ビジョンや戦略の策定、従業員教育、専門知識を有する人材の採用など、多岐にわたる準備と取り組みが欠かせません。言うまでもなく、そのためにはある程度の期間とコストも必要になります。
では、今すぐそのような本格的な取り組みをスタートできない企業はどうすれば良いのでしょうか?
もちろん最適な手法は企業によって異なりますが、まずは部分的・局所的にでもIT・デジタルを活用した施策に取り組み、DXの感触や可能性を確かめてみるというのもひとつの方法です。そしてそのような、いわば「DXの地ならし」に相応しい取り組みのひとつが、今回のテーマである「ペーパーレス化」なのです。
ペーパーレス化とは、紙の書類や資料をデータ化・デジタル化することで紙の利用を減らすこと。最近ではSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)、コロナ禍におけるリモートワーク推進の観点から注目を集めていますが、DXにおいても必須の取り組みです。例えば東京都が現在、都政DX推進に向けて取り組んでいる「5つのレス徹底推進プロジェクト」でも、「FAXレス」「はんこレス」「キャッシュレス」「タッチレス」と並んで「ペーパーレス」が掲げられています。事実上、「FAXレス」と「はんこレス」も脱・紙文化の取り組みであることを考えると、その重要性も明らかでしょう。
ペーパーレス化のメリット
とはいえ、中にはペーパーレス化によって仕事のやり方が変わってしまうことに不安を覚えている方もいるかもしれません。しかし、ペーパーレス化のメリットはそうした心配を補って余りあるほど多く、思い付くだけでも以下の6つが挙げられます。
(1)コストの削減
用紙代に加え、文具代、印刷代、郵送代、保管代など、紙利用に関する経費を削減できます。電子契約書の場合は印紙税も不要。ただしツールやシステム、デバイス導入などで初期費用は必要です。
(2)保管スペースの削減
電子文書は自社サーバーやクラウド上に保存するため、物理的なスペースを削減できます。整理や破棄に時間を取られることがありません。
(3)検索性の向上
コンピュータの検索機能を使えば必要な書類をすぐに参照できます。デスクや棚、倉庫などを探す無駄な手間が省けます。
(4)スムーズな情報共有
複数人と資料を共有する際も、コピーや配布などの作業が不要。メールやチャット、クラウドストレージなどを使って、離れた場所にいる人ともリアルタイムで共有することが可能です。
(5)情報セキュリティ・内部統制の強化
デジタルデータの場合、パスワードや閲覧制限の設定、暗号化、分散管理など、様々な方法で漏洩・改ざんのリスクを低減することができます。紙のように経年劣化することもありません。
(6)業務効率化・働き方改革の促進
コピーやファイリング、管理システムへの手入力といった工数を削減できます。あわせて社内の申請~決済プロセスもデジタル化すれば、テレワーク時に承認のために出社する必要がなくなり、決済スピード向上だけでなく柔軟な働き方も推進することが可能です。
以上のようなメリットを享受すべく、既に多くの企業が様々なペーパーレス化を進めていますが、その領域は多岐にわたります。もっとも目立つのは、政府も法改正によって電子化を後押ししている契約書、領収書、見積書、納品書、請求書などの財務・税金関係書類。他にも稟議書や会議資料(議事録含む)、タイムカード、名刺(管理)、業務マニュアル、さらにカタログやチラシといた営業資料のデジタル化に取り組んでいる企業もあります。
そしてメリット(1)でも触れたように、こうしたペーパーレス化にはITツールやシステムの活用が欠かせません。後半の記事で事例やペーパーレス化の進め方のポイントとあわせて紹介します。